So-net無料ブログ作成
検索選択
ブログパーツ

ハンナ・アーレント(その2) [探求]

 スタンフォード大学・哲学百科事典の「ハンナ・アーレント」(執筆者はMaurizio Passerin d'Entreves)の第二回目。「2.序論(Introduction)」では、全体の構成が簡潔に語られている。


Hannah Arendt: By Maurizio Passerin d'Entreves.
   
http://plato.stanford.edu/entries/arendt/






「   ハンナ・アーレント(その2)  2. 序論



 ハンナ・アーレントは、20世紀で影響力のあった政治思想家の一人である。彼女の思考の力強さや独創性は、『全体主義の起源』、『人間の条件』、『革命について』、『精神の生活』などの著作で明瞭である。これらの著作や多くのエッセイで、彼女は、同時代のもっとも決定的な政治的出来事に取り組み、その意義や歴史的な意味合いを把握しようと努め、そうした出来事が道徳的・政治的判断のカテゴリーにどのような影響を及ぼしたかを示した。彼女の見解では、求められていることは、20世紀が生み出した恐怖の双子、ナチズムとスターリニズムと折り合いをつけることを可能にする新しい枠組みだった。アーレントは、全体主義の本の中で、このような枠組みを提供し、それに続いて、人間の条件を解明し政治的生の本性に対する新たな観点を提供する一連の新たな哲学的カテゴリーを展開していった。


 アーレントの作品のなかには、今となっては、政治思想の西洋の伝統の古典に属していると見なされるものもあるが、アーレントはつねに分類することが困難な哲学者であり続ける。アーレントの政治哲学は、保守主義、自由主義、社会主義といった伝統的カテゴリーによって特徴づけることはできない。また、アーレントの思考は、たとえば、A.マッキンタイア、M.サンデル、C.テイラー、M.ウォルツァーなどの著作に見られるような、最近甦った共同体を重視する政治思想に同化して理解することもできない。自由主義のキーとなる原則のいくつかに対立する政治観を提示したという理由で、アーレントの名前が、自由主義の伝統に批判的な多くの論者によって援用されてきた。アーレントの思想には、そのような主張を正当化してくれるような要素が多くあることは確かであり、とくに、間接民主主義の批判、市民参加や政治的討議の強調、道徳と政治の分離、革命的伝統に対する賞賛などがそうした要素である。しかし、アーレントを反-自由主義の思想家として見なすのは間違いだろう。アーレントは、実際、立憲主義と法の支配を厳格に擁護したし、基本的人権を支持したし(アーレントは、その基本的人権に、生命、自由及び表現の自由の権利だけでなく、行動や意見形成の権利も含めていた)、伝統的な絆や慣習に基づくあらゆる政治的共同体を批判したし、宗教的、民族的、人種的アイデンティティーに基づくあらゆる政治的共同体を批判した。


  アーレントの政治思想は、この意味で、自由主義の伝統とは同一視できないし、自由主義の多くの批判者が提唱する主張にも同一視できない。アーレントは、政治を、個人の選好を充足する手段とは考えなかったし、また、善について共有された考え方のもとに諸個人を統合する方法としても考えていなかった。そのかわりに、アーレントの政治の考え方は、活動的な市民という観念に基づいていた、つまり、市民の政治参加と、政治的共同体に関わる全ての事柄について市民がそろって討議することの価値と重要性に基づいていた。アーレントの思想を同一視できる思考の伝統があるとするならば、それはアリストテレスに由来し、マキャベリ、モンテスキュー、ジェファーソン、トクヴィルの著作で具現化された市民的共和主義の古典的な伝統である。この伝統によると、政治とは、市民が、市民全員に関わる事柄について討議・決定するために公共の空間に一堂に会するときはいつでも、本来的に表現されるものである。政治活動が高く評価されるのは、それが同意あるいは善についての共有された考え方にに導いてくれるからなのではなく、それにより市民一人一人が自分の主体としての権力を行使し、判断の能力を展開し、協調的な行動によって、ある程度の政治的実効性を達成できるから、なのである。


 私は、アーレントの政治哲学を、次に掲げる四つの大きなテーマ、つまり、(1)アーレントの現代性の考え方、(2)アーレントの行為の理論、(3)アーレントの判断の理論、(4)アーレントの市民性の考え方、という四つの大きなテーマに沿って再構築することにしよう。





」(つづく)。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント