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貧困とテロリズム [海外メディア記事]

 2015年の最初の一ヶ月はシャルリ・エブドとイスラム国の話題ですぎていったように感じられるが、これはまだほんの序章にすぎなかったとならなければいいのだが・・・  


 『タイム』誌のテロと貧困の関係について触れた記事に目が止まったので紹介しておこう。学者のこれまでの研究では、テロと貧困の関係に否定的なものが優勢なのだとか。初めて知りました。まあ、日本でもイスラム国に行こうとして待ったがかかった人がいたが、あれは国立大学の学生だった。アメリカ人でイスラムに共鳴する若者の中にも、裕福で高学歴の人が結構いるのだという。しかし、その一方で、最底辺のソマリア系のアメリカ人もいるのだから、とても一筋縄で捉えることは難しい。


 この記事を書いたDavid Stermanは、貧困とテロは無関係と説く論客が最近増えていることに危惧の念を覚えて、この一文を書いたようだ。もっとも、その関係を実証する研究はまだない。貧困とテロの関係は、直感的に明らかに見えるが、実証するとなると難しいようだ。その研究が早くなされるようにという呼びかけが、この文章の趣旨である。しかし、こんな基本的なこともまだ解明されていないのか、それが判ったことが唯一の収穫だった。




Don’t Dismiss Poverty’s Role in Terrorism Yet
David Sterman Feb. 4, 2015
http://time.com/3694305/poverty-terrorism/




 貧困がテロリズムに果たしている役割を退けてはならない

 様々な研究が入り乱れているが、私たちの分析は性急であってはならない



 1月初めパリの「シャルリ・エブド」に対して行われたテロ攻撃とともに、過激思想になぜ若者が走るのかについてよく言われる動機を再び疑問視する識者の声が上がるようになった。メディアの論者たちは、貧困がテロリズムに果たしている役割をきっぱりと退けるのである。「ハードボール」で、クリス・マシューズ(Chris Matthews)は次のように述べた(http://www.today.com/id/56768558/ns/msnbc-hardball_with_chris_matthews/t/hardball-chris-matthews-wednesday-january-th/#.VMevM_7F92A)。「世界には、将来への見込みが何もない貧しい人々が何億といるが、彼らは人を殺そうとはしない。インドは貧しい人々でいっぱいだが、彼らは人を殺そうとはしない。アフリカも同じだ。(それに対して「シャルリ・エブド」を襲った)あの連中は殺人者だ」。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の社説も次のように述べた(http://www.wsj.com/articles/islamist-terror-in-paris-1420675706)。「水曜日の攻撃は、暴力的なイスラムは中東の貧困や西側の政策に対する反応ではないことを改めて示している。それは、言論の自由と宗教の多元主義を含む西側の文明と原理に対するイデオロギー的な挑戦なのである」。



 コメンテーターたちが、テロの原因として貧困を退けるのは正しいのだろうか? 政治家たちはどうかといえば、彼らの一貫した傾向は、テロ行為の第一の動機として貧困をあげることだ。例えば、2014年に行われたバチカンの国務長官との会談後の発言で、ジョン・ケリーは次のような見解を表明した。「私たちは、貧困というこの問題にどう対処したらいいかということに大きな関心を共有している。貧困は、多くの場合、テロの根本原因であり、地球上で何百万もの人々が家を追われる根本原因となっている」。

 
 しかし、学者たちは、それとは反対の結論にしばしば到達した。1986年から2002年にかけて96カ国で行われたテロについての2006年の研究調査は、経済的尺度とテロとの間にいかなるつながりも見い出すことはなかった。2002年には、プリンストン大学の経済学と公共政策の教授であるアラン・クルーガー(Alan Krueger)と、チャールズ大学の中東・アフリカ研究所の准教授であるイトカ・マレコヴァ(Jitka Malecková)は、『ニュー・リパブリック』誌上で、テロで貧困が果たす役割を否定する主張を展開した。彼らは、ヒズボラとハマスから収集した証拠を含む幅広い証拠を提示して、テロリストに加わる割合は、上流階級や高学歴の人間の方がわずかに高いことを示したが、その理由は、テロ・グループが、多数いる潜在的な志願者の中から、上流階級の出身者や高学歴の人間のほうを選り好むからなのである」。



 このように学術的証拠が豊富にあるということは、貧困がテロの原因であると主張する人にとっては確かに水を浴びせるかけるような効果をもつだろう。しかし、貧困を即座に退けてしまう前に、識者は節度を示すべきであるし、学者はデータをアップデートし再分析し続けるべきである。


 評論家にせよ学者にせよ、貧困とテロについてあわてて判断を下すのを避けるべきであるのはなぜか? 一つには、貧困とある種のテロリズムとの間に関係――必ずしも因果的関係というわけではないが――があることを示す学術的な文献があるからである。2011年のある研究――クルーガーとマレコヴァはこの研究に異議を唱えているが――は、ドイツにおいて失業と右翼の過激派が引き起こした犯罪の間に正の相関関係があることを示した。1977年のテロリズムについてのある研究は、一般的に言ってテロリストは中流階級か上流階級の人間であるという結論を支持したが、暫定アイルランド共和国軍は社会階級という点でも学歴の点でも例外だったことに注意していた。バスクのテロリスト集団のETAは別の興味深い例を提供している。ゴールディ・シャバドとフランシスコ・ラモは「文脈の中のテロリズム(Terrorism in Context)」という論文集で、ETAのメンバー構成は、時が経つにつれて、上流階級の人間は減少し、労働者階級の人間が増えていったと指摘している。



 これらの例は、方法やアプローチに基本的な構造的問題があることを示している。特定の集団や個人に焦点を当てるよりも、複数の国をまたいで数十年にわたって考察できる単一のカテゴリとしてテロリズムを扱うことによって、我々は、あらゆるケースではないにせよいくつかのケースには存在するパターンを見逃してしまうのである。


 実際、テロリズムにいたるルートは多様で、その中には貧困を含むルートもあり、貧困を含まないルートもあることはきわめて確かである。こうしたデータが集められると、貧困に関連したルートは見えにくくなってしまうのだが、だからといって、そうしたルートが存在しないということにはならない。学者はしばしば注意を払ってこうした制限があることを認めるのだが、評論家はそうしたことに注意を払わず、貧困はテロを引き起こしたりしないのだと声高に主張するのである。


 テロと貧困の関係を評価するために使用される方法についての考え方を変えることで、精神疾患などのような、テロを説明する新しい次元が明らかになるかもしれない。最近の研究では、テロリスト集団に関与するテロリストが精神障害者である可能性は特に高いわけではないが、単独で行動するテロリストが、精神障害者である可能性は一般人よりもはるかに高いことが判っている。ある研究では、特定可能な精神疾患の問題を抱えている人の割合が、一般人ではわずか1.5%であるのに対して、調査対象となった98人の単独行動のテロリストでは40%だったことが判明している。

 
 
 あるサイズの服がすべての人にフィットすることは決してない。 テロを説明する要因として、単一のカテゴリの因果的な説明を求め、貧困や精神疾患のような関連する要素を退けることは、過激派の行動に光を当てる別のパターンを不明瞭にすることにもなりかねない。テロに関与したアメリカ人の中には富裕な階層の出身者もいる。アラビア半島のアルカイダで指導的役割を果たしたアメリカ人の聖職者であるアンワル・アウラキ(Anwar Awlaki)は、イエメンの有力な政治家の息子だったし、ムハンマドを描いたとしてTV番組「サウス・パーク」のクリエイターを脅迫して懲役25年の刑を宣告されたザカリー・チェサー(Zachary Chesser)は、バージニア州郊外の裕福な家庭に生まれた。他方、アメリカのソマリア人――2008年の国勢調査局の調査によると、その82%は貧困ライン近辺かそれ以下の生活をしている――は、海外のジハード集団とともに戦うために海を渡った最大のグループの母体となった。『ニューヨーク・タイムズ』は、 アル・シャバーブのために戦うために海を渡ったミネソタ州の集団――そのほとんどがソマリア系の住民だった――のことを「アルカイダと連携して過激派の運動に参加している疑いのあるアメリカ市民の最大の集団」と評した。その記事が出て以降、ミネソタのコミュニティは、シリアで戦うために渡航する人々を新たに輩出するという問題の扱いに苦慮している。


 現地のコミュニティのメンバーは、不況のせいでミネソタ州のソマリア人コミュニティには聖戦への勧誘がひっきりなしに行われている、と主張する。ソマリアの女性を支援する非営利団体の創設者であるファルトゥン・ウェリは、「子供たちは聖戦に参加するように勧誘されています。それは事実です。それに対してどうするつもりかですって? ソマリア人の子供たちを弱者にしてしまうような根本原因について語らなければなりません。… 私たちのコミュニティーが貧困を終わらせられるような機会がなければならないのです」。


 これはつまり、テロにおいて貧困が果たす潜在的な役割を見るときに、もっとよく調べ分析する必要があるということなのである。テロリスト集団は志願兵の大きなプールから好みの工作員を選択することができるから、テロリストはしばしば中流階級出身で高学歴だという論証は文脈次第だということを考慮することも重要だ。ある種の集団、とりわけすでにかなり発展を遂げた集団は名前が知れ渡っているので好みでない人間をふるい落とすこともできるが、もっと新しい、あまり有名でない組織は、そうすることはできない。志願兵をふるいにかけることに関心を示さない集団もあるだろう。…


 実際、今日ISISは外国からの戦闘員を使用しているわけだが、その主な特徴の一つは、自分たちの組織に受け入れる人間がどのような人間であるかについて、ISISは特に選り好みをしていないということである。政治暴力研究国際センター(International Centre for the Study of Political Violence)の所長ピーター・ニューマンが言うように、「ISISは、他の多くの集団ほど選り好みはしません。もしあなたが西側の人間でアラビア語を話せず、とくに良い戦闘員でもなく特別の技能をもっていないとしても、ISISはあなたを受け入れるでしょう」。

 アラビア半島のアルカイダのような集団ですら、組織と密接な関係をもつ工作​​員を投入することが困難なところで攻撃を引き起こすために、爆破のやり方をオンラインで広めるためにオープン・ソースの手法を採用した。しかし、そんなオープン・ソースでリーダーを必要としない戦略を採用することで、彼らは戦闘員をふるいにかける能力をすべて放棄してしまったのである。


 このように述べたからといって、テロにおいて貧困が役割を果たしていると断言できることが明らかになった、というわけではない。しかし、そろそろこのテーマについて新たな研究をすべき時が来たようである。貧困が文脈が変わればどれほど違った結果をもたらすかを明らかにする方法を使ってもっと具体的な脅威の要因を考察しようと動き出すべき時が来たようである。これまでの研究によって、いま私たちが直面している事例にある動因は説明されるのだていると想定するとしたら、脅威が妨げられることなく増大していくことを許す盲点が生みだされることになるかもしれないのである。

 」(おわり)







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