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反資本主義の台頭 [海外メディア記事]

 最近自分の本の執筆に忙しく、海外ニュースの記事の紹介に回す時間がとれないのだが、久しぶりに暇な時間ができて、なおかつ『ニュヨーク・タイムズ』に興味をそそる記事があったので、ここに紹介する。私が読んだときの“Most Emailed”のランクでは第5位だった。


 ネット上では音楽やソフトなど多くのものがタダで手に入るというところから話は始まって、製造業も教育でもコストほぼゼロで物が作れたり授業に参加できるということが可能にあり、電力すらも「モノのインターネット」の普及でコストの低減が見込まれている。「モノのインターネット」が主役となる時代のトレンドに合うのは、従来型の営利的経済活動ではなく、非営利で、誰もがアクセスできる協同型のオープン・システムだ。特定の人の所有に帰着する市場システムではなく、誰もが参加・共有できるようなシステム、それが来るべき未来において繁栄するシステムだ、というのが筆者の主張のようだ。たしかに、「モノのインターネット」は特定の企業や国家が制御できるものではないのだから、そうかもしれないな思わせるものはある。



 文章中、対応する日本語が見出せない名詞が一つあった。それは「コモンズ(commons)」という名詞なのだが、記事には、social commons,global commonsという形で登場する。倫理学の方面だと「共有地」という意味で使われることが多いのだが、土地、資源、データなど幅広いものを含んでいるようだ。global commonsについては、Wikiを見つけたので(http://en.wikipedia.org/wiki/Global_commons)、そこにおける定義を掲げておこう。


Global commons is a term typically used to describe international, supranational, and global resource domains in which common-pool resources are found. Global commons include the earth's shared natural resources, such as the deep oceans, the atmosphere, outer space and the Northern and Southern polar regions, the Antarctic in particular. Cyberspace may also meet the definition of a global commons.(グローバル・コモンズとは、共同の資源がある国際的で国境を越えたグローバルな資源領域を記述するためにふつう用いられる術語である。グローバル・コモンズには、深海、大気、宇宙、南北の極地、とくに南極大陸などの地球の共有された自然資源も含まれる。サイバースペースもグローバル・コモンズの定義に合致するだろう)








The Rise of Anti-Capitalism

By JEREMY RIFKIN  MARCH 15, 2014


http://www.nytimes.com/2014/03/16/opinion/sunday/the-rise-of-anti-capitalism.html?action=click&contentCollection=Business%20Day&module=MostEmailed&version=Full®ion=Marginalia&src=me&pgtype=article







反資本主義の台頭
ジェレミー・リフキン




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Ji Lee オリジナルの絵画はウジェーヌ·ドラクロワ




私たちは、資本主義の中心にパラドックスがあることを目撃し始めている。そのパラドクスは資本主義を偉大なものに駆り立てたが、いまや資本主義の未来を脅かしつつあるパラドクスなのである。つまり、競争市場の固有のダイナミズムのおかげで、費用が非常に低下してしまい、その結果、多くの商品やサービスがほぼ無料になり、もはや市場の力によって制御できなくなりつつあるというパラドクスである。経済学者は限界費用の低下をつねに歓迎してきたが、その費用をゼロにしてしまうほどの技術革新の可能性など思いつきもしなかった。


 パラドクスの最初の気配が現われたのは、1999年、音楽サービスのナップスターが、何百万もの人々が、プロデューサーやアーチストに代価を払うことなく音楽を共有できるネットワークを開発し、音楽業界に混乱を引き起こしたときだった。似たような現象が次々と起こり、新聞業界や出版業界に重大な混乱を与えた。消費者は、情報や娯楽を、タダ同然のビデオや音声やテキストを通して共有し始め、伝統的なマーケットをまったく素通りするようになった。



 限界費用の大幅な低下は、これらの業界に衝撃を与え、エネルギー産業・製造業・教育産業の再編のきっかけになりつつある。太陽光発電や風力技術の固定費はやや高額ではあるが、それを割り引けばエネルギーを捕捉する費用は低い。この現象は製造業にまでも浸透している。何千という愛好家が、3-dプリンタやオープン・ソースのソフトウェアや再生プラスチックを材料として利用することで、ほとんど限界費用ゼロで、独自の製品を制作している。おまけに、600万人以上の学生が、ほとんど限界費用ゼロで内容が公開されている無料の大規模オープン・オンライン・コースに在籍している。

 業界ウォッチャーは、限界費用ゼロ経済の現実が忍び寄っていることを認めているが、無料の製品やサービスを使っているうちに、充分多くの消費者は、ハイエンドの商品や専門的なサービスを購入したくなるものだから、資本主義市場が成長し続けるほどの利幅をあげられるはずだと言い張っている。しかし、追加のプレミアム商品やサービスのためにお金を払う人の数などたかが知れているのだ。

 今や、この現象は経済全体に影響を与えつつある。恐るべき新技術のインフラ――「モノのインターネット(Internet of Things)」――が出現しつつあるのだが、それは、ここ20年の間に経済活動の多くをほぼ限界費用ゼロへと押し下げる可能性を秘めている。この新技術のプラットフォームは、すべての物とすべての人を結びつけ始めている。今日、110億以上のセンサーが、天然資源や生産ラインや電力網や物流網やリサイクル・フローに取りつけられ、家庭やオフィスや店舗や車に装備され、ビッグ・データを「モノのインターネット」に供給している。2020年には、少なくとも500億のセンサーが「モノのインターネット」に接続すると予測されている。


 人々は、現在、情報機器に関してそうしているように、ネットワークに接続してビッグデータや分析やアルゴリズムを使用して効率を高め、幅広い商品やサービスを生産・共有する限界費用をほぼゼロにまで低減させることができるようになっている。たとえば、米国にある3700万棟ものビルには「モノのインターネット」に接続されたメーターやセンサーが装備されていて、それらは送電網にある電力の使用状況や変化する価格についての情報を提供している。これが進むと最終的には、太陽光や風力発電の装置からエコ電力を生み出したり備蓄している家庭や企業が、電力料金が跳ね上がったときに伝線網を通して送電し、自分の設備を自分自身のエコ電力で発電し、余剰電力を限界費用ほぼゼロで隣人たちと共有できるようにソフトをプログラムすることもできるようになるのである。



 シスコ社の予測によれば、2022年までに「モノのインターネット」によってもたらされる民間セクターの生産性の増額分は1兆4000億ドルを超えるという。ゼネラル・エレクトリック社の研究は、「モノのインターネット」による生産性の進展は、2025年までに世界経済の半分に影響を与えるだろうと推定している。


 解決されていない問題は、何百万人もの人々が商品やサービスをほぼ無料で共有することができるようになるとき、未来のこの経済がどのように機能するか、という点にある。答えは市民社会にある。私たちが一つのコミュニティとして制作し共有する生活物資に関心を向ける非営利組織からなる市民社会にあるのだ。ドルに換算しても、非営利団体の世界は強力な勢力になっているのだ。非営利団体の収益は、2000年から2010年にかけて41パーセント――インフレ分を調整して――という順調な速度で成長しているが、この数字は、同期間に16.4%増加した国内総生産の成長率の二倍を上回った。2012年に、米国における非営利セクターはGDPの5.5%を占めた。


 今日、かつてないほど社会的コモンズが大切になっているのは、誰もがアクセスし参加できる協働のシステム(collaboration, universal access and inclusion,)を極大化する「モノのインターネット」を私たちが構築しつつあるからなのだ。誰もが協働しアクセスし参加できるというすべてが、社会的資本を創造し共有経済を先導するために決定的に重要なのである。「モノのインターネット」は時代の流れを変えるプラットフォームであり、これから発展していく協働的なコモンズが資本主義市場のかたわらで繁栄することを可能にするのである。



 資本主義的というよりも協同的なこのアプローチが関わるのは、私的な所有権というよりは、共有されたアクセスなのである。たとえば、現在、全世界で170万の人々がカー・シェアリング・サービスの会員になっている。最近の調査によると、カー・シェアリングの参加者が所有する自動車の数は、入会後の会員が所有権よりもアクセスの方を好むにつれて、半減していることが判っている。何百万人もの人々がソーシャル・メディア・サイト、再配布のネットワーク、レンタル店や組合を利用して、車だけでなく、家や洋服や道具やオモチャ等のアイテムを低額またはほぼゼロの限界費用で共有している。共有経済は、2013年には、35億ドルの売上高になると予想されている。

 労働者のいらない工場やオフィス、ヴァーチャルな小売店や自動化された物流・輸送のネットワークがますます普及している労働市場でほど、限界費用ゼロ現象がインパクトを及ぼしつつあるところはない。非営利的で社会インフラを強化する傾向がある分野――教育、保健医療、貧困者援助、環境修復活動、育児支援、高齢者介護、芸術やレクリエーションの振興――で、協働的なコモンズに新たな雇用機会が生じるのは驚くべきことではない。米国では、非営利団体の数は2001年から2011年の間で、130万から160万へと約25%増加したのに対して、営利企業はわずか0.5%しか増加しなかった。米国、カナダ、英国では、非営利セクターの雇用者数は、現在、全労働力の10パーセントを超えているのである。

 こうした印象的な成長にもかかわらず、多くのエコノミストは、非営利セクターが独立した経済勢力とはいえず。政府が発給する資格と民間の慈善団体に頼る寄生的な存在であると主張している。全く逆なのだ。最近の研究が明らかにしたところによると、34カ国の非営利団体セクターの収益の約50%が報酬に由来するもので、政府の補助金は収入の36%、民間の慈善団体は14%となっている。


 資本主義のシステムについて言えば、それは、もっと合理化された役割の中で、主にネットワーク・サービスとソリューションの統合役として、遠い将来も残りつづけるだろうし、やがて来る時代では強力なニッチ・プレーヤーとして繁栄することになるだろう。しかし、われわれは部分的には市場を超えた世界に突入しつつあるのだ。その世界でわれわれは、ますます相互依存的で、協働的になっていくグローバル・コモンズで一緒に生きる方法を学びつつあるのである。







ジェレミー・リフキンは『限界費用ゼロの社会(The Zero Marginal Cost Society)』の著者である。



」(おわり)


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石井吉徳

JEREMY RIFKINはその名著、「エントロピーの法則-21世紀文明観」、著名な地球物理学者であった竹内均の訳で知られていたが、その後、本質から横道にそれたと思っていた。ようやく原点に回帰したようです。本の元タイトルは「Entropy A New World View」。
by 石井吉徳 (2014-04-10 07:57) 

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