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単館系映画トップ10 (1) [海外メディア記事]

  前回の「ホラー映画トップ10」に続いて、イギリス『ガーディアン』紙およびその日曜版の『オブザーバー』紙の映画批評家が選んだ「単館系映画トップ10(Top 10 arthouse movies)」を紹介する。

  トップ10は以下の通り。

10位: 奇跡の丘(The Gospel According to Saint Matthew):ピエル・パオロ・パゾリーニ監督
9位: 白いリボン( The White Ribbon):ミヒャエル・ハネケ監督
8位: ファニーとアレクサンデル(Fanny and Alexander ):イングマール・ベルイマン監督
7位: 天国の日々(Days of Heaven): テレンス・マリック監督
6位: 時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange):スタンリー・キューブリック監督
5位: 市民ケーン(Citizen Kane):オーソン・ウェルズ監督
4位: 東京物語(Tokyo Story):小津安二郎監督
3位: アタラント号(L'Atalante): ジャン・ヴィゴ監督 
2位: マルホランド・ドライブ(Mulholland Drive):デヴィッド・リンチ監督
1位: アンドレイ・ルブリョフ(Andrei Rublev):アンドレイ・タルコフスキー監督




 “arthouse”とは「単館(ミニシアター)」のことで、“arthouse movie”とは「単館で上映される芸術系映画や外国映画」のことのようだ。とても広い括(くく)り方で、『奇跡の丘』は芸術系だとしても『東京物語』や『時計じかけのオレンジ』は元来は商業映画だったし、『時計じかけのオレンジ』や『マルホランド・ドライブ』はエンターテイメントのカテゴリーに属すると思うのだが、まあよしとするか。

 『ファニーとアレクサンデル』の評はとてもよく理解できる。私はこの作品を観たとき、もっと極端なことを感じた。つまり、ベルイマンという人は、実は、楽観的な人なのではないかと感じたのだ。サルトルが、死ぬ前のインタビューで、「自分はさんざん不安について語ったけど、不安を感じたことは一度もなかった」という趣旨のことを語ったのと似ているのではないかと。


 全体が長いので二回に分けて紹介する。なお、7位と3位は未見なので解説の訳出は割愛させてもらう。


 
 
Top 10 arthouse movies


Posted on Monday 21 October 2013 16.28 BST
theguardian.com

http://www.theguardian.com/film/filmblog/2013/oct/21/top-10-arthouse-movies







単館系映画トップ10





10位 :  奇跡の丘

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 同性愛者でマルクス主義者のカトリック教徒:そんな人間が、あらゆる宗教映画の中でも最も偉大な映画――しかも、新約聖書に基づき、残酷さを売りにすることもなく、聖書そのままの信心深い展開に陥ることもなかった数少ない映画の一つ――を作れるとは人はとても思わなかっただろう。パゾリーニはすでに、聖書の映画製作を題材にした35分のコメディ―映画『リコッタ』で、宗教関係者の怒りを買い、実に、その結果として4ヶ月の実刑判決を受けていた。しかし、『奇跡の丘』はまったく違っていた。真摯で精神的で、キリスト教の福音の核心に澄んだまなざしで迫ろうとしていた。パゾリーニは信者ではなかったが、彼の映画は「教皇ヨハネ二十三世との貴重で、幸福で、親密な思い出」に捧げられた。

 これはパゾリーニとしては長編の三作目となり、この作品で彼は、後の彼の作品を特徴づけることになる人間学的な実験を開始したのだ。一時間のドキュメンタリー作品の『パレスチナでロケ地を探す(Location Hunting in Palestine)』は、映画の撮影場所を探すパゾリーニの姿を映している。興味深いことに、彼は古代の聖書の精神を失ったという理由で現代のイスラエルと近隣のアラブ地域を拒絶した。彼は結局、やりたいことはこれだろうなとずっと思われていたことを行なった。つまり、南イタリアのマテーラという朽ちかけた街で撮影したのである。


 パゾリーニの『奇跡の丘』は、セシル・B.デミル一派以降われわれが慣れ親しんできた(聖書の)愚鈍な解釈からはかけ離れたものだ。すべてが単純そのものだ。原始的な背景、人物配置がまばらな場面の数々、最小限の対話(そのほとんどすべてが聖書本文から取られた)。パゾリーニの目的は、イエスの物語から古代のエッセンスを抽出することだった。彼はこれを、厳密に再創造することによってではなく、顔をクローズアップで映し、ルネサンスや中世のイコンを呼び起こし、サウンドトラックにバッハやモーツァルトや黒人霊歌やアフリカの儀式音楽をミックスすることによって、成し遂げた。かつて映画が美しく野蛮な真実を語ったことがあったとするならば、この映画こそまさにそれなのである。

アンドリュー・パルバー(Andrew Pulver)






9位: 白いリボン

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 ミヒャエル・ハネケの2009年のパルムドール受賞作品の一体どこが、この作品をこれほど完璧なまでに人を不安にさせるのか?  あらすじだけではない。一連の犯罪――特定の人に帰することのできる犯罪もあるが、ほとんどが犯人は判らない――が第一次世界大戦前夜の北ドイツの小さな村の表面に亀裂を走らせるのだが、そうしたあらすじだけが人を不安にするわけではない。しつけの厳しい医師が、自分の子供たちに責任感と罪の意識を植えつけようとするが失敗に終わる。ある女性が愛人に捨てられ罵詈雑言に晒されるが、その場面に比べると、イングマール・ベルイマンの『冬の光』(その暖かなモノクロ画面をこの映画は再現している)でマックス・フォン・シドーが恋人を捨てるシーンなどは可愛らしく見えてくるほどだ。


 
 これは明らかに――それにこれは、全体的に、おどろくほど霧のように見通しのきかない映画である――ファシズムの寓話であり、約30年後に権力を握る人々の心理を説明する試みなのである。これは、解決のない謎でもあり、中央にぽっかり穴の開いた推理物である――だから、これは二度目に見たときの方がもっと満足できる映画の一つである。そのとき観る人は、解決が控えられていることに心の準備が出来ているからである。


 だが、こうしたすべてはハネケにとってはお約束ともいえる事柄であり――『隠され記憶』や『ファニー・ゲーム』から大きく飛躍した点ではない。『白いリボン』をより繊細な――そしてもっと不吉な――映画にしているのは、暖かさとユーモアが時おり見られる点にある。ペットのカゴの鳥の死によって心を痛める医師の幼い息子のシーンや、とりわけ、ナレーターである家庭教師と新入りの使用人の娘の間のどこから見ても甘いロマンスのシーンだ。彼らがピクニックに行き、彼女が、遠くに行ってはダメと涙ながらに懇願するシーンは忘れ難い。それは、かつてなされた忌まわしい犯罪という底流のためというよりも、婚約者である家庭教師が困惑しながら黙認したためだ。周囲の人間がすべて石炭のような心しかもっていないとき、優しさはかえっていっそう物事をダメにすることがあるのだ。


 ハネケの映画はいつも、いったんクレジットが流れ出すと、止まらないほど長く感じられる。確かにこの映画もそうだ。

 キャサリン・ショード(Catherine Shoard)






8位: ファニーとアレクサンデル

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 イングマール・ベルイマンが彼なりの仕方で映画に別れを告げたこの作品は、ときに下品になったり殺伐としたり奇怪な展開になったりする、豪勢な家族の物語りだった。厳格で、気難しく、破滅を描かせたら名人といったこの映画監督の世評に恐れをなす初心者にとって、この映画は初めて観る作品としては充分であるだろう。しかし、これは、最終到達点としても理想的な作品であるだろう。この映画で、ベルイマンは、彼に取りついていた悪魔を抑えつけ、一種の休戦を勝ちとったからだ。

 
 あらすじは、一言で言えば、次の通りだ。裕福な家の二人の兄弟、ファニー(ペルニラ・アルヴィーン)とアレクサンデル(ベルティル・ギューヴェ)は、愛情が機能不全の家庭の中で育つ。父親の死に続いて、母親は司教(ヤン・ マルムシェー(Jan Malmsjo)の素晴らしい演技)と結婚し、アレクサンデルと氷のような新しい継父との間にエディプス・コンプレックス的な闘争が勃発する。問題は、圧倒的な最終セクションで、アレクサンデルが「邪悪な考えが消える手っ取り早い方法」を教えられる古い骨董屋の店内で解決される。


 その途中でわれわれは両性具有の狂人や、肥大化した寝たきりの叔母や、自分自身のオナラに火をつける好色な叔父に出くわす。『ファニーとアレクサンデル』ほど忘れられない脇役が沢山でてくる映画はほとんどないのである。


 筋金入りのベルイマン・ファンは、この映画をベルイマンのもっとも判りやすい映画として引き合いに出すが、それはまるでこの映画が少し出来の悪い映画であるかのようだ。確かに、この映画は、ベルイマンの苦悩が裸形で現われる傑作の何本かに比べれば光や暖かさを多く含んでいる。しかし、光が多いことは必ずしももっと軽いことを意味しているわけではないし、あるセクションには、『叫びとささやき』や『鏡の中にある如く』に見出されるどのシーンにも匹敵するほど痛切で奥深いものがある。実際、映画があの驚くべき(シーツが燃え、魔法が働く)クライマックスに向かう頃になると、『ファニーとアレクサンデル』こそベルイマンの最も成熟した、視界が開け完全に意図が実現した作品だと人は言い張りたい気持ちにさえなるのである。


 私に次のように思えるのだ。この監督は神のいない世界という観念(それがいかに解放的であるか、それがいかに恐るべきものでもあるか)に取り組みながらそのキャリアの大半を費やしたが、結局彼が行きついたのは、われわれは皆神だという結論であり、善かれ悪しかれ、人間は自分自身の姿に似せて神を作ったのだという結論だった、と私には思えるのだ。意義深いことに、こうした最後の瞬間に現われる神は、信用できない人形使いの名人によって操られる安っぽい人形だ。この人形使いの別の姿は、父親の死の痛手から立ち直っておらず悪い考えを天空に送る想像力にあふれた子供である。そして、その想像力にあふれた子供とは、突きつめれば、監督その人である。生涯をかけて白黒の画面で全世界の人々を魅了しながら、われわれが目にしているこの魅惑的で、恐ろしくもあり真実でもあるこの世界にうまく対処できなかったベルイマンその人なのである。

ザン・ブルクッス(Xan Brooks)






7位: 天国の日々

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6位: 時計じかけのオレンジ

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 はるか前の1971年に作られたものであるにもかかわらず、『時計じかけのオレンジ』にはまだどこかどうしようもなく未来的なものがある。おそらくそれは、けばけばしく忘れがたいデザインのせいかもしれないし、その登場人物の独特な若者言葉(ナッドサット (Nadsat) )のせいかもしれないし、トランスセクシャルの作曲家ウォルター(後にウェンディ)・カルロス(Walter (later Wendy) Carlos)の電子化された古典音楽のせいかもしれないし――あるいは単に70年代初頭がそれ以降のどんな時期よりも――極端に様式化されたデザインやファッションにおいて――もっとクレージーだっただけなのかもしれない。いずれにせよ、『時計じかけのオレンジ』の人気が持続しているのは、善と悪に直面したときの自由意志の本性についての哲学的思考のおかげというよりは、単にスタイルが勝利したからなのだ。コロヴァ・ミルク・バーでのオープニング・シーケンスから、そのマンガ的な暴力と不快な報復、そしてアレックスが、ルイ14世風の宮廷の衣装に身を包んだ見物人を前に乱暴なセックスをしながら「俺はすっかり直ったぜ」と誇らしげに語る最後の奇妙なショット(この役柄はマルコム・マクダウェルに40年間つきまとった)に至るまで、勝利したのはスタイルだったのだ。


 キューブリックは、衣装(アレックスのつけまつげは言うまでもなく、股下を強調したアウターの局部サポーターや山高帽や、白人のギャング団ドルーグの装備一式)や、家具や装飾品やアート(アレックスが凶器として使用する巨大な石膏のペニス)などのすべてのディテールを考え出した――彼は、『博士の異常な愛情』の爆撃機の計器盤や、『2001年宇宙の旅』の宇宙船や、『バリー・リンドン』の画家的な画面構成に払ったのと同じくらいの注意をそれらに払った。



 彼が創造したこの宇宙の中で、彼はキャストを他のキューブリックの作品群のどれよりもグロテスクに仕立てたし、キューブリックが、最初は顔のクローズアップで始め周囲を見せるために急にカメラを引く戦術を展開を初めて採用したのも、この作品においてだった(『シャイニング』の頃になると、カメラの動きのほとんどは、後方にそっと引くのではなく、狂ったように前に進むようになった)。


 この映画の中で暴力についてどうしてこれほど騒ぎ立てるのかと、最近のわれわれが思うとしてもそれは不思議ではない。この作品は、今では大人しいものに見えるからだ(たぶん、当時でもそうだったのかもしれない、たとえば『わらの犬』と比べれば、そう見えただろう)。この映画を観た人が模倣犯的反応をしたこと――ある種の暴力的な犯罪がこの映画に触発されてなされたと噂された――がキューブリックにとって充分堪(こた)えたのは明らかで、彼は帰化したアメリカでこの映画を自分が生きている間鑑賞できないようにした。この作品は当時のイギリス映画としては決定的に重要だったし、キューブリック自身がもっと広く理解される上でキーとなる作品であるだけに、この措置は残念なことだった。


ジョン・パターソン(John Patterson)







」(つづく)










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