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風立ちぬ ――ヴェネツィア2013 : 『ガーディアン』紙のファースト・レヴュー [海外メディア記事]

 ヴェネツィア映画祭での『風立ちぬ 』の試写会が一日に行われたが、イギリス『ガーディアン』紙に載った批評を紹介する。

 この批評家(Xan Brooks)の評価は、星三つ(五つが満点)。美しさに見とれるが、そこに溺れるわけにはいかないというヨーロッパの批評家には一般的だと思われる見方である。堀越が周囲の状況に無関心なのは仕方がないが、宮崎自身が同じくらい無関心であるのはいかがなものか? もっと批判的なまなざしを向けるものがあったのではないか? この批評家はそういう点に歯痒さを感じたようだ。他紙の批評も見てみたが、評価の星は3.5や4だった。まぁ、そこそこの出来という評価であるようだ。



 
The Wind Rises – Venice 2013: first look review

By Xan Brooks
the guardian.com, Sunday 1 September 2013 13.25 BST

http://www.theguardian.com/film/2013/sep/01/venice-film-festival-review-wind-rises



  風立ちぬ ――ヴェネツィア2013 : 『ガーディアン』紙のファースト・レヴュー


 日本のアニメの巨匠の宮崎駿の最新作は驚くほどの出来に見えるが、そのテーマ――天才的な戦闘機設計者の堀越二郎――に含まれる政治状況に充分向き合ってはいない



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 おぞましい政治の影がしのびよる...宮崎駿のアニメーション『風立ちぬ』




 手描きアニメーションの巨匠である宮崎駿が、『風立ちぬ』とともに上昇気流に乗ってヴェネツィアにやって来た。『風立ちぬ』は、日本人の航空機設計者の堀越二郎に捧げられた素晴らしいが、最終的には物足りない作品だった。ここにあるのは、輪郭ははっきりしているが中心はぼんやりしている映画だ。私は好きになろうと思ったし、好きになろうと努めたが、熱気は冷めていった。結局、美しさをそれだけ切り取っていつまでも眺めていることはできないのだ。時として、外側の世界をじっと冷静に眺め、それから二つの世界を結びつける必要があるのだ。

 

 『風立ちぬ』は破滅的な目的に仕える穏やかな男性の物語りを語る。これは純粋な技術者魂と純粋ではない目的を描いた映画である。堀越二郎は、ドイツの再軍備に立ち合い、その後、日本軍のためにあの輝かしい三菱のゼロ戦戦闘機を生み出した近眼だが視野が広い天才である。「どこと闘うことになるんだ?」。彼は、まるで天気予報について尋ねるように、ぼんやりしたことを云う。二郎は、戦争を促進したり戦争を防ぐことに特に何の関心ももっていないように見える。彼には、病気のフィアンセの健康の方が気がかりだ。彼の焦点は、飛行機を設計するというすばらしい大仕事の方にある。「空を飛びたいという夢は呪われた夢だ」と、夢に出てくるカプローニは彼に告げる。「しかし、どちらを選ぶかね――ピラミッドのある世界とない世界のどちらを?」と。

 
 
 映画では言及されていないが、二郎のゼロ戦は、後に、奴隷労働の収容所で建造され、神風特攻隊のために利用された。二郎は、飛行機が完成するときに自分の責任は終わると感じる無邪気で無関心な男性として描かれている。こうしたことはどれもこれも結構なことだろう――こうした無関心は、技術とその結果のドラマが成り立つための大きな跳躍板であるだろう――、ただし宮崎自身も同じくらい無関心であるという事実がなければである(訳者註――しかし、そういう事実があるので、結構だとは言えない、ということ)。監督がこの主人公を称えているのは明白なので、彼は主人公のビジョンを疑問視したり、彼に釈明を求めることはあえてしないのである。


 当然ながら、アニメーションは観る喜びを与えてくれる。この映画の鮮明な色彩とキビキビしたセリフは、戦前の日本の美しい肖像画――煙を吐いて進む蒸気機関車、身を寄せ合って暮らす近隣の人々、寝かしつけるような音の夜の市街電車――を呼び起こしてくれる。いくつかの場面(特に、東京の炎上につながる終末のような地震の場面)には、この監督が『千と千尋の神隠し』や『となりのトトロ』で生み出したどんな場面にも匹敵するものがある。しかし、映画自体はあまりにも上品ぶっている。あまりに礼儀正しく、もっと心に刺さるものがほしい。それは、謎めいた堀越を地上から解き放ち、雲へ舞い上がらせ、永遠に手の届かない所に連れて行ってしまうのである。




」(おわり)
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