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自殺が春と初夏に多い理由 [海外メディア記事]

 自殺は春と初夏に多いのだという。私にとっては初耳だったが、かなり昔から知られていた事実なのだそうだ。その古くからある難問に取り組んでいる研究者に焦点を当てた『ニューヨーク・タイムズ』の記事を紹介する。


 後半はかなり専門的な話になるが、途中で紹介されている「約束破りの効果(broken promise effect)」だけでもかなり説得的だ。つまり、春は希望の季節だ。苦しんでいる人は春に救いを託すが、春になっても救いはやって来ない。それに対する深い失望が、その人の心を押しつぶしてしまうという説明である。

 春は希望の季節だが、多くの人にとって幻滅の季節だ。そのギャップが自殺の急増として現れる。春はもう過ぎてしまったが、幻滅に耐えることのできた人がようやく夏を迎えられる、と考えることができるならば、春と夏は、案外、もの悲しい季節と言えるのかもしれない。




Clues in the Cycle of Suicide

By DAVID DOBBS

MIND JUNE 24, 2013, 5:08 PM

http://well.blogs.nytimes.com/2013/06/24/clues-in-the-cycle-of-suicide/?partner=rss&emc=rss





自殺のサイクルにおける手がかり


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平均して、毎週約700人のアメリカ人が自殺している――しかし、5月と6月の晴れた週では、自殺者数は800人近くになることがあるし、800人を超えることもしばしばある。つまり、毎年、チューリップやライラックとともに自殺者数がピークを迎えるわけだ――これは、年間の平均値を約15%以上超える増加数で、精神医学の最も一貫した疫学的パターンの一つとなっている。ケイ・レッドフィールド・ジェイミソン(Kay Redfield Jamison )が名著“Night Falls Fast(『日はすぐ暮れる』)”で述べているように、春と初夏の季節が「冬よりも自殺者に向いた可能性を秘めている」のは理屈に反しているように見える。しかし、実際はそうなのだ。



 春に自殺者が増えるという不気味な事実は、自殺は冬にピークを迎えるという従来の信念をくつがえす。また、研究者もその事実に困惑するが――、彼らは魅了されてもいるのだ。研究者が気分や行動の生物学的研究の中に多くの手がかりを発見するにつれて、なぜ自殺者数が太陽の軌道とともに上昇するのかについての新たな手がかりを研究者は発見しつつある。この謎を解くことが、そもそもなぜ人は自殺するのかをよりよく理解する――そして年間の自殺者数を減らす――手助けとなることを研究者たちは望んでいるのである。


 こうした努力は、ジョンズ・ホプキンス大学の精神科医のアダム・カプリン(Adam Kaplin)博士が「自殺の流行」――2007年に始まった景気後退以降、特に中年の間で、自殺者の絶対者数と人口10万人当たりの自殺率のいずれにおいても自殺が急増している――と呼んだ事態のために、なおさら緊急を要することである。2010年、合衆国では38,000以上の人が自殺した――5年前の32,600人からは16.5%も急増しており、史上最高の数字である。自殺者は何によって動かされているのかを発見することに対する関心は、時とともに高まるばかりであるようだ。


 
 春に急増する自殺件数は、実際、年間に何度かあるうちで最大の変動である。ある研究によると、2月(南半球は10月)に年間の最低に下落する後で、自殺率は春になって急増し、夏にゆっくり下落し、秋になるとわずかな上昇を示し、冬になると急に下降する。春のピークは、一般的に言えば、年間平均値よりも10%から25%も高くなり、2月の最低値よりも20%から50%も上回っている。


 春に自殺が増加することは、19世紀のヨーロッパで最初に注目された。多くの研究――中には何百年もさかのぼってデータを検討する研究もあった――がそれを実証した。しかし、それを説明するのは、主に自殺がきわめて複雑であるために、困難だった。


 
 「たった一つの理由で自殺することはありませんからね」。そう述べるのはエモリー大学の研究者で心理学者のナディーン・カズロウ(Nadine Kaslow)。彼女によれば、むしろ、通常、人が自殺するのは、個人的要因や社会制度的要因や環境的要因がからみ合うことで、絶望が活発化する新たな場所に追いやられるからなのだという。


 この考え方では、春は、なぜか、すでに耐え難くなっている重荷をさらに耐え難いものにするのだ。しかし、どのようにしてか?


 ジェイミソン博士もカズロウ博士も好む昔からある答えの候補は「約束破りの効果(broken promise effect)」である――つまり、苦しんでいる人が望んだ救いを春がもたらしてくれないことへの失望によって、心がときとして押しつぶされてしまうという説明である。


 おまけに、精神科医が昔から気づいていたことだが、双極性障害やうつ病の患者にとって、春は自殺の危険を大きくする躁病的な興奮をもたらすことがある――こうした興奮は、自殺未遂者や躁病または統合失調症の発現者が入院する率が春と夏に増加することに昔から示されていた。




 このことは、睡眠に必要なホルモンであるメラトニンが春になると低下することと関連があるかもしれないと研究者たちは長い間推測してきた。メラトニンの低下は、春になると日が長くなるために私たちを活気づけてくれるが、時として危険な興奮を生み出すことにもつながる、というわけである。だが、この関連は、他の関連と同じく、確証されてはいない。



 過去10年間で、別の候補に焦点を移す研究者もいた。それは、自殺と炎症の間にある明らかに密接な関係である。


 カプリン博士は、自己免疫性の炎症性疾患である多発性硬化症の患者におけるウツ状態を研究している。彼によれば、多発性硬化症では、ウツ状態と炎症は互いを助長し合っているという。どんな深刻な病気に対しても心理的影響を及ぼす上に、その後でも、多発性硬化症はウツ状態のリスクを高めるし、ウツ状態は多発性硬化症の中心的な病状にとって中心的な炎症を増大させるのであるから。



 この関係を動かしているのは、サイトカインと呼ばれる免疫システムの化学伝達物質ではないかと、カプリン博士はにらんでいる。サイトカインには炎症を抑制するものもあれば、炎症を増大するものもある。


 炎症を引き起こすサイトカインは感染症との戦いで重要な役割を果たすが、それは問題を引き起こすこともある。たとえば、C型肝炎をもつ人に、感染症を抑えるサイトカイン・インターフェロンを投与すると、40%の人がウツ状態になり、50人に1人は自殺を試みる。別の研究によると、炎症を引き起こすサイトカインの活動は神経伝達物質のセロトニンのレベルを低下させ、新たな脳細胞の成長を停止させた――これらはウツ状態であることを証明する二つの特徴なのである。


 

 炎症がウツのリスクを高めているとして、それが、春に自殺が急増することにどうしてつながるのか? 


 カプリン博士や別の研究者たちはいくつかの可能性を指摘する――「どれも憶測の域にとどまっていて」、依拠すべき発見ではなく、従うべき手がかりですが、とカプリン博士は言う。どんなケースでも、考えられるリスクは直接的な作用因からではなく、炎症への感度が増すことに由来し、それが最後の一押し、最後の刺激になるのかもしれない、というのである。


 一つの可能性として、多くの人は、冬の終りに風邪やインフルエンザのような季節的な感染症と戦った末に炎症に敏感になって春を迎える、というものである。


 別の可能性としては、樹木の花粉に関わっている。メリーランド大学の精神科医であるテオドル・T.ポストラッチ博士(Dr. Teodor T.Postolache)は、大量の花粉がサイトカインによる炎症反応を引き起こしているかもしれないと考えている。彼が行った研究は、大量の春の樹木の花粉を高い季節的な自殺率に関連づけた。別の研究は34名の自殺者の脳を調べ、サイトカインによって引き起こされた炎症と矛盾しない遺伝子の発現パターンを発見した。


 しかし、別の可能性はビタミンDに関わっている。冬に日照不足によって引き起こされるビタミンDの低下が炎症を引き起こすと考えられているのだ。最近のある研究は、暫定的に、自殺との関連を示唆した(http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0051543)。かくしてカプリン博士は、すでに自殺のリスクにある人が、ビタミンDの欠乏によって敏感になった炎症システムをもったまま春を迎えると、自殺のリスクを高めるのではないかと考えている。



 「この難問に対する答えは、「上で述べた可能性」のうちのどれかでしょう」と彼は言った。


 
 こうした炎症の要因が関係しているとしても、それは、春の暗黒の花を咲かせる多くの要因――気分障害、離婚、失業、悲しみ、トラウマ――の一部にすぎないだろう。しかし、研究者が多くの要因を特定できればできるほど、私たちは、春に自殺が急増する理由のみならず、自殺というより大きな謎をより良く理解できるようになるのである。




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(自殺率は、冬に下落し春と初夏にピークに達する傾向があるが、この傾向はヨーロッパで初めて注目された。  スイスでのある自殺研究は、春のピークがここ100年間で平坦になりつつあることを見出したが、これは春のピークが西側諸国では消滅するかもしれないことを示唆している)




 しかし、いつかは季節的な要因を特定できるとしても、研究者たちは急ぐ必要があるだろう。自殺の季節性においてもっとも興味深い発見の一つは、昔からあるこのパターンが消えつつあるらしいことなのだ――それはたぶん、私たちが室内で過ごす時間が増えているからなのだ。


 たとえば、1880年から2000年の間にスイスできちんと記録された月ごとの自殺者の研究は(http://jech.bmj.com/content/59/11/967.full?sid=57449f01-8585-4566-8d5f-27308393a275)、春/夏の曲線が30年の期間ごとにますます平坦になっていく様子を示している。私たちが自殺を理解しようと悪戦苦闘しているときに失われるあまりに多くの人命と同様に、春の自殺者の増加というこの問題も、私たちがそれについて十分に把握できるようになる前に、消滅しているかもしれないのだ。







」(おわり)

















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