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あなたの携帯電話vsあなたのハート [海外メディア記事]

 ゲーム機から目を離そうとしない子供の姿や、携帯の画面に没頭する大人たちの姿はありふれた日常の一コマになってしまったが、そうした習慣がいかに心身の健康を損なうかということを示した研究を紹介する記事を『ニューヨーク・タイムズ』より。

 かつて「ゲーム脳」なるものを提唱した日本の研究者がいたが、あの説は脳科学の知識が伴っていなかったので学問的にはほとんど無意味だったようだが、しかし、脳の可塑性の研究が進み、ソーシャル・ゲノミクス(social genomics)という分野が登場するにつれて、偏った習慣が心身の健康を損なうことが実証的に示されつつあるようだ。

 
 文中のキーワードになっている「迷走神経トーン(vagal tone)」とは、息を吸う時の心拍数と吐く時の心拍数の差で測り、迷走神経が良好な人は息を吸うとき心拍が速くなり、吐く時は逆に遅くなるので、この差(=迷走神経トーン)が大きい人ほど迷走神経は良好ということらしい。今回の研究は、社会的なつながりの経験をより多くもつことがこの迷走神経トーンを高め、携帯への没頭がその逆の作用をすることを示したものらしい(たぶん)。


 筆者のバーバラ・L.フレドリクソン(Barbara L. Fredrickson)は、ノース・カロライナ大学の心理学の教授らしい。



Your Phone vs. Your Heart

By BARBARA L. FREDRICKSON Published: March 23, 2013


http://www.nytimes.com/2013/03/24/opinion/sunday/your-phone-vs-your-heart.html?src=me







 あなたの携帯電話 vs あなたのハート



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 アメリカの公共の空間にいて、あなたの周りの半分の人々がデジタル画面上に身をかがめて、親指で誰かにメールを打っている光景を目にしなかった最後の時がいつだったかを、あなたは思い出せますか?


 
 電子機器が瞬時に可能にしてくれるアクセスがどれほど便利であるかは、ほとんどの人が十分知っています。しかし、そのコストについてはそれほど語られてきませんでした。私と共同研究者が完成させたばかりで、『サイコロジカル・サイエンス(Psychological Science)』誌の次号で発表される研究は、他の人々とつながりを持とうとする生物学的能力に対してかなりの損害がありうることを示しました。


 深く根づいた習慣は私たちを変えます。同時に燃焼する細胞間には、同時に働く配線が出来あがる(Cells that fire together, wire together )」とは神経学者がよく使う言い回しですが、それは、もろもろの経験が私たちの神経経路に痕跡を残すという神経可塑性(neuroplasticity)と呼ばれる現象を反映しているのです。どんな習慣も、その習慣に対する傾向を強化するような仕方で、脳の構造そのものを形づくっていくものなのです。


 可塑性、つまり経験によって形成されるという傾向は、脳に限られたことではありません。座りがちな生活を送る人の筋肉は徐々に衰えていき、肉体の力を減退させることは皆さんも御存知でしょう。しかし、社会的つながりの習慣も肉体的痕跡を残すということは、御存知ではないかもしれません。


 普通、皆さんは他の人とどれくらい多くの時間を過ごしていますか? そして、他の人々と一緒にいるとき、あなたはどれほど他の人とつながっていて、心を通わせていると感じていますか? こうした単純な問いに対してどう答えるかで、人とつながる生物学的能力がどれほどあるかが明らかになるかもしれないのです。


 私の研究チームと私は、日常生活の中でもっと暖かい対人的つながりを培うための学習スキルがどんな効果をもつかについて長期におよぶフィールド実験を行いました。無作為に選ばれた半分の実験参加者には、6週間におよぶワークショップに参加してもらったのですが、それは「メッタ(metta)」、あるいは「慈悲の瞑想(lovingkindness)」として知られ、自分自身および他者に対してよりいっそう多くの暖かさと優しさを養うことを教える古代からある精神修養についてのワークショップでした。



 私たちは、瞑想者がより前向きになり、社会的なつながりをもとうとする気持ちになっただけではないことを発見しました。瞑想者たちは、迷走神経トーン(vagal tone)と呼ばれる心臓血管系の核となる部分をも変えたのでした。科学者は、迷走神経トーンは、大人の身長と同じように、ほとんど変動はないものと考えていました。私たちのデータは、この部分もまた可塑的であり、社会的な習慣によって変えられるものであることを示したのです。



 なぜこれが重要かを理解するために、ここで、解剖学のレッスンをちょっとしましょう。脳は迷走神経によって心臓に結びついています。心拍数のちょっとした変化は、この脳と心臓の結びつきの強さを明らかにするものですが、そういうものとして、心拍数の変動は、あなたの迷走神経トーンがどれほどかを示す指標を提供してくれるのです。


 大まかに言えば、迷走神経トーンは高ければ高いほど良いのです。それが高ければ高いほど、心臓血管系やグルコースや免疫反応のようなあなたの健康を保つ体内システムを、あなたの体はより良く調節することができる、ということを意味しているのです。


 こうした健康への影響だけでなく、行動主義的な神経科学者のスティーブン・ポージス(Stephen Porges)は、迷走神経トーンが、顔の表情や人間の声の周波数に同調する能力のようなものにとっても重要であることを示しました。人々の迷走神経トーンを増大させることによって、私たちは、結びつきや友情や共感の能力を増大させているのです。


 要するに、他の人に対して共感的になればなるほど、健康的であるし、その逆も真である、ということなのです。共感と健康がこのように相互に影響を及ぼし合っているから、積極的な社会的接触の欠如は衰弱をもたらすことになるのです。あなたのハートがもっている友情の能力も、「使わなければ失ってしまう(use it or lose it)」という生物学的な法則に従っています。向き合ってつながりを持つという能力を定期的に行使しなければ、生物として基本的なそうした能力のいくつかを最終的には欠いてしまうことになるのです。


 人間の体は――私たちの人間のポテンシャルもそうですが――、私たちのほとんどが思っているよりもはるかに可塑的で変化しやすいものなのです。ヒト・ゲノムのシーケンシングによって可能となったソーシャル・ゲノミクス(social genomics)という新しい分野は、私たちや私たちの子供の遺伝子が細胞レベルで発現する仕方も可塑的であり、習慣的な経験や行動に反応するものであることを教えています。


 ソーシャル・ゲノミクスの研究が示していることによると、たとえば社会的なつながりや孤独などの個人的な歴史によって、私たちの遺伝子が免疫システムの細胞内で発現する仕方も変わってしまうのです。これから親になる人は、遺伝子検査について心配するよりも、自分自身の行動――授乳しながらメールを打ったり、子どもよりも携帯電話の方にもっと気を使うような別の行動――が、自分や自分の子どもの遺伝子の発現にどれほど生を狭めてしまうような足跡を残すかについて心配する必要があるのかもしれません。


 

 あなたが誰かと顔を見合わせて笑顔や笑いを共有するとき、はっきりとした同調性があなたとその誰かの間に現われますが、それは、あなたの身振りや生化学的メカニズムや、あなた方相互のニューロンの燃焼でさえも、相互に反映し合うようになるからなのです。好ましい感情の波が同時に二つの脳と体に流れ込むこうしたちょっとした瞬間が、共感する能力のみならず、自分の健康を向上する能力を築きあげているのです。


 あなたがこの能力を定期的に行使しないと、それはしぼんでしまいます。幸運なことに、他の人々とつながることは、人のためにもなり快く感じられるものですし、そうする機会はたくさんあります。


 だから、友人や子どもが携帯電話の画面を見ながら一日の大半を過ごしているのを見かけたらならば、手を差し伸べて、現実の社会的な出会いのある世界へ連れ戻すようにしてください。そうすれば、あなたは、その人の健康と共感の能力を高めるだけでなく、あなた自身の健康と共感の能力をも高めることになるのです。友人ならば、自分の友人が人間としての能力を失うのを見過ごしたりはしないのです。






」(おわり)















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