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道徳の起源 ―― エドワード・O.ウィルソンとのインタビュー (1) [海外メディア記事]

 社会生物学者のエドワード・O.ウィルソンのインタビューがドイツ『シュピーゲル』誌に載っていたので紹介する。何かと話題の多い人だが、いまだに執筆をつづけているとは立派と言うほかない。オリジナルは2頁にわたっているので、ニ回に分けて紹介する。


 エドワード・O.ウィルソンについてはWikiの説明が簡潔でためになる(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%89%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%82%BA%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%B3)。
 


Interview with Edward O. Wilson: The Origin of Morals

By Philip Bethge and Johann Grolle February 26, 2013

http://www.spiegel.de/international/spiegel/spiegel-interview-with-edward-wilson-on-the-formation-of-morals-a-884767.html







 道徳の起源 ―― エドワード・O.ウィルソンとのインタビュー


 アメリカの社会生物学者エドワード・O.ウィルソンは美徳と罪の起源を説明する物議をかもしだす新たなアプローチのために闘っている。インタビューで、この世界的に有名なアリの研究者は、内面の葛藤が人間の本性に特徴的な形質であるとなぜ考えているかを説明する。


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 エドワード・O.ウィルソンは好んで喧嘩を吹っかけようとする人間には見えない。彼は、背筋をぴんと伸ばし頭を片側に少し傾けながらハーバード大学の校舎のあちこちを歩き回っている。彼の右目は、子供の頃から彼に面倒をかけてきたのだが、半分は閉じている。もう一方の目は地面に注がれたままだ。アリの研究者として、ウィルソンは地球の表面に住んでいる生き物からキャリアを作り上げてきたのだ。



 だがウィルソンはそれ以上の人だ。存命の生物学者の内で世界で最も重要だと見なす人もいるし、チャールズ・ダーウィンのレベルにあると見なす人もいる。

 数百種ものアリを発見し記述したことに加えて、昆虫の中で桁違いに成功したこの集団についてウィルソンが書いた本は、ピューリッツァー賞を受賞した唯一のノンフィクションの生物学の書である。もう一つの業績は、アリが化学物質を介して行なうコミュニケーション――その語彙はフェロモンで構成される――を解読したことだ。アリの島嶼部でのコロニー形成についての彼の研究は、生態学で最も実りのある分野が確立される手助けをした。そして、生物多様性の喪失に対する戦いで、ウィルソンはその運動の最も雄弁な代弁者の一人となった。



 「優れた敵に恵まれた」



 しかし、ウィルソンの名声はもっぱら彼の科学的業績から生まれたものではない。彼の敵たちもまた、彼の名声の確立に貢献したのだ。「私は優れた敵に恵まれました」と彼は言う。実際、ウィルソンが学問的に衝突した多くの学者は傑出した人ばかりだ。DNAの二重らせんの発見者の一人であるジェームズ・ワトソンはその一人であり、生物学者のスティーヴン・ジェイ・グールドもそうだ。


 ウィルソンは83歳だが、いまだに新しい敵を作るのに余念がない。騒動を起こす最新作は、米国では昨年4月にドイツ語版では今月に出版された『地球の社会的征服(The Social Conquest of Earth)』だ。この中で、ウィルソンは進化の観点から人類の勝利に満ちた進化を記述しようと試みている。

 
 ウィルソンは著作のインスピレーションを得るためにアリに目を向けることは珍しいことではないが――それはこの新著でも変わらない。たとえば、化石のメタセコイアの琥珀の破片の中に閉じ込められた9000万年前の働きアリ2匹を見つけたときのことを「私の人生の中で最もエキサイティングな瞬間の一つ」として回想するときがそうだ。それは、「科学的重要性という点では鳥と恐竜の間をつなぐ最初の化石だった始祖鳥の発見や、現代のヒトと祖先の類人猿の間にあるものとして発見された最初の「ミッシング・リンク」であるアウストラロピテクスに匹敵する発見だった」というのである。


 しかし、それはすべてこの本の核心部分にある真の論争点の前触れにすぎない。結局のところ、ウィルソンは人間の社会的行動を説明するためにアリを使うのだし、そうすることによって、現在の慣習と決別するからだ。キーとなる問題は、人間の特性のダーウィン的淘汰が行われるのはいかなるレベルなのかという点だ。個々人がお互いに生存の戦いに入るのか、それとも集団が競合する集団に対して戦うのか?


 新著を出す前までは、ウィルソンは血縁選択理論の有力な支持者だった。彼は今、以前の考えを捨ててしまったのだ。「美しい理論はあまり有効ではなかったし、もう崩壊してしまった」と彼は書いている。今日、彼は、人間の本性が理解されることがあるとすれば、それは「集団選択」の産物と認識された場合にかぎる」と主張するのだ―― ウィルソンの同僚の研究者たちはこの見解を冒涜に等しいと見なした。彼らは名を連ねて、共同書簡という形で科学的な反対意見を表明したのだ。


 最も声高な批判の中にはリチャード・ドーキンスのものもあった。彼の1976年のベストセラーである『利己的な遺伝子』こそ最初に血縁選択の理論を一般大衆に紹介した本だったからだ。イギリスの『プロスペクト』誌でウィルソンの本を辛辣に評した書評で、ドーキンスは、彼の「生涯にわたるヒーロー」だった人に対して「勝手な傲慢」と「倒錯的な誤解」という非難を浴びせた。「ドロシー・パーカー(Dorothy Parker)の言葉を借用すると、これは脇にそっと放っておく本ではない。力を込めて投げ捨てられるべき本だ」とドーキンスは書いている。


 『シュピーゲル』誌は最近社会生物学者ウィルソンに向き合い、彼の本とそれをめぐる論争について語り合った。




シュピーゲル: ウィルソン教授、1000万年前にエイリアンの宇宙船がこの惑星に着陸したと仮定しましょう。彼らはどの生物を特に興味深いと思うでしょうか? 

ウィルソン: 彼らの興味は、私たちの祖先には向かわなかったでしょうね。彼らの興味が向かったのは、まずは、アリ、ハナバチ、カリバチ、シロアリだったでしょう。彼らの発見は、エイリアンたちが本国に報告するほどのものだったでしょうね。


シュピーゲル: エイリアンにとっては、そうした昆虫のほうが、例えば、ゾウや鳥の群れや知性を備えた霊長類よりも興味深いとあなたは考えるのですね?

ウィルソン: そうです。というのも、その当時は、アリやシロアリが地上で最も数が多かったし、進化した分業体制とカーストを備えもっとも高度な社会を築いていた生き物でしたからね。私たちはアリやシロアリを「真社会性の(eusocial)」と呼んでいますが、この現象はきわめて稀であると思われるのです。


シュピーゲル: エイリアンがアリについて特に興味深いと思うことが他にありますか?

ウィルソン: アリは農業や畜産にも従事しますよ。例えば、菌類を栽培するアリがいます。アブラムシを追い立てて、自分の触覚でなでることでアブラムシから文字通り搾乳するアリもいますからね。エイリアンがきわめて興味深いと思うもうひとつのことは、アリが、フェロモンという化学物質によるコミュニケーションで、社会をどれほど組織化しているかという点です。アリやシロアリはこのコミュニケーションを極限まで推し進めたわけですから。


シュピーゲル: では、エイリアンたちは故郷の星にこう伝えるわけですか。「われわれはアリを発見した。彼らは、地球上の知的な存在へとこれから進化を遂げる最も有望な候補である」と?

ウィルソン: いいえ、そうは伝えなかったでしょう。彼らは、アリたちが外骨格に閉じ込められていて、とても小さいままでいなければならないことを理解するでしょうから。彼らは、個々のアリやシロアリが推論する力を発達させ、その結果として、文化を形成する能力を発達させる可能性がほとんどないと結論づけるでしょうね。少なくともこの地球上では、十分な大脳皮質をもつには大きくなければならないのです。それに、二足歩行をし柔らかな指のある手を発達させなければなりません。それで初めていろいろな物を創造し始めたり環境を意のままにする能力が得られるのです。



シュピーゲル: われわれの祖先がそこにいても、エイリアンからは注目されなかったのですね?

ウィルソン:  1000万年前ならば、われわれの祖先はやや大きくなった脳や器用な手を発達させていたでしょうね。でも、決定的な段階はまだ生じていないのです。


シュピーゲル: それは何でしょう?

ウィルソン: ちょっと社会性昆虫の話に戻りましょう。なぜ社会性昆虫はコロニーを形成し始めたのでしょう? 数億年にわたって、昆虫たちは孤独な生き物として増殖していました。中には、つかの間だけ子どもと一緒にいて、子どもたちを世話したり保護したりするものもいました。そうしたことは動物界に広くありますが普遍的というわけでは全然ありません。しかし、こうした種から、子どもを保護せず、巣を築いてそれを守り始める非常に少数の種が現れたのです・・・・・

シュピーゲル: ・・・ 鳥に似た種ですね。

ウィルソン: そうです。私の考えでは、鳥たちは真社会性行動のちょうど入口にいるのです。しかし、再びアリやシロアリの進化に目を移すと、もう一つ決定的なステップがあるのです。ずっと小さな集団では、子どもたちは巣の中で育つだけでなく、そこにとどまり次の世代の面倒を見るようになります。すると、ある集団が分業をしながら一緒にとどまることになります。これこそ、真社会的になるために通過しなければならない進化の狭い通路なのです。


シュピーゲル: そして、われわれの祖先も同じ道をたどったわけですか?

ウィルソン: そうです。私の主張では、最初のヒトであるホモ・ハビリス(homo habilis)もこうした段階を通ったのです。特に、ホモ・ハビリスはすでに肉食にシフトしていたという点でユニークでした。



シュピーゲル: 肉食になることでどんな違いが生ずるのですか?

ウィルソン: 動物が肉を食べ始めると、群れを形成し分業体制をとる傾向があるのです。ホモ・ハビリスの直近の子孫であるホモ・エレクトスはキャンプ地に集まり、火を使い始めたということをわれわれは知っています。これらのキャンプ地は巣に相当するわけです。そこで、彼らは緊密な集団として集まったのです。そして集まったあとで個々人は食物を探しに出かけたのです。


シュピーゲル: この集団の発達が進化をさらに推し進めたということですか?

ウィルソン: その通りです。そして、例えば、狩猟地の縄張り争いともなれば、集団対集団の争いになっていくのです。


シュピーゲル: それが戦争の起源であると言いたいのですね? 

ウィルソン: そうです。でも、それは必ずしも軍隊とか大部隊という形をとって野原で対峙して戦うということではなかったのです。たいていはいわゆる「かたき討ち」だったのです。ある集団が別の集団を襲撃すると、女性を生け捕りにしたり一人や二人の男性を殺すこともあったでしょう。すると襲撃された集団が襲撃のお返しをして、これが集団間で繰り返されるわけです。




」(つづく)

















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