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銃乱射事件と統合失調症 [海外メディア記事]

 先日おきた銃乱射事件と統合失調症の関連性を述べる記事を『ニューヨーク・タイムズ』紙より。

 筆者によれば、こうした銃乱射事件を起こすのは、(通院歴があろうとなかろうと)統合失調症をもつ人間である可能性が高い。しかし、この疾患の扱いについては、アメリカでは十分注目されてこなかった。そのために、有効な手立てがなされることがないまま、こうした事件が続発するのだという。

 一見すると危うい主張に感じられるかもしれないが、読み進めていくと非常にまっとうな見解のように思えてくる。もっとも、それでも、統合失調症に苦しんでいる人が身近にいる人にとって、こうした主張はあまり快く思われないだろう。これが、こうした障害や病気に対する取り組みを難しくしてきたのであろう。


 筆者のポール・スタインバーグは精神科の開業医である。


Our Failed Approach to Schizophrenia

By PAUL STEINBERG
Published: December 25, 2012


http://www.nytimes.com/2012/12/26/opinion/our-failed-approach-to-schizophrenia.html?src=me&ref=general





 わが国の失敗した統合失調症に対するアプローチ



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  アメリカではあまりに多くの振り子が間違った方向に振れてしまった。銃規制をめぐるあの奇妙で妥協の余地のないレトリックのことだけを言いたいのではない、過去50年間のメンタル・ヘルスの医療における振り子の動きもそうだったと私は言いたのだ。統合失調症を発症したばかりの10代の若者や成人(とくに、概して暴力に走りがちな男性)に対する入院治療はあまりにも少なかった。精神疾患が治療されないまま放置されることが公衆衛生に及ぼす影響についてもあまりに教育がなされなかった。重度の精神障害に見識があり治療できる精神科医があまりに少なすぎた――過去15〜20年間で利用できる薬が非常に効果的になったにもかかわらず。


 その代わりに、私たちは患者のプライバシーやレッテル貼りやステレオタイプ化を心配しすぎた、つまり恐ろしく歪んだ思考をもっている人々の市民としての自由については心配しすぎるほど心配してきた。精神疾患をもつ人々の権利を心配するあまり、正常な人間が銃で撃たれはしまいか――自宅や学校で、映画館や礼拝所やショッピングモールで―――という恐怖から自由でいられる権利を無視するまでに至ったのである。



 「精神病(psychose)」――現実との接触の喪失――とは大雑把な言葉で、「風邪」と似てなくもない。風邪と同様に、精神病にも多くの原因がある。薬物やアルコールから頭部外傷や痴呆に至るまでの多くの原因が。成人において最もよく見られる精神病の源泉は統合失調症(schizophrenia)だ。これはまずい名称で、元来のギリシャ語では「分裂した心」を意味する。統合失調症は、実は、多重人格とは何の関係もないのだ。多重人格は、普通は、子供の頃にトラウマが繰り返されたことでおこる疾患である。統合失調症は、前頭前皮質(言語や抽象的思考や適切な社会的行動にとって不可欠である脳の領野)の変化によって引き起こされる生理学的な障害である。この高度に進化した脳の領域はストレスによって弱体化するのだが、それが思春期にしばしば起こるのである。



 精神科医や神経生物学者は、統合失調症患者の脳の神経的な接続の中に生化学的変化や変質がおこるのを観察してきた。例えば、前頭前野と側頭葉皮質における言語領域の間に交流の不調が起きると、無秩序な思考のみならず幻聴をもたらすことになるかもしれない。聞こえてくる声が命令するとなると、一大事だ。その命令は、たとえ死にたいという意思をもっていない人にも窓から飛び降りろと言い張ったり、復讐したいと感じていない人に、銃をつかんで人を殺せと言い張ることになるかもしれない。そこに付け加わる他の症状としては歪んだ思考、たとえば、何か――宇宙船や漫画本のキャラクタ――が自分の思考や行動をコントロールしているといった思い込みがある。



 統合失調症は、15歳から24歳の間に発症する(女性は概して少し遅い)。初期の兆候には、風変わりな様子で一人きりでいることが挙げられる――しばしばアスペルガー症候群と取り違えられる――が、急性の兆候や症状は、思春期や青年期になるまで現われることはない。


 統合失調症の人々は、自分の思考がどれほど奇妙かを自覚していないし治療を求めることもしない。チョ・スンヒが2007年に銃乱射で32人を殺したバージニア工科大学では、教授たちはどこかひどくおかしいことを知っていたが、彼​は十分な長期入院の治療を受けることはなかった。2011年に6人を殺害し13人(議員一人を含む)を負傷させたジャレッド・リー・ラフナーの親やコミュニティ・カレッジの同級生たちは、誰に相談すればいいかが判らなかった。12月14日コネチカット州ニュータウンの小学校で26人を虐殺したアダム・ランザがどんな悪魔に苦しめられていたか、我々は確信をもって知ることは決してないだろうが、彼の行為は、彼が診断を受けていなかったにせよ統合失調症だったことを強く示唆している。


 私は、いわゆるゴールドウォーター・ルール(Goldwater Rule)があることを知りながら、これを書いている。ゴールドウォーター・ルールとはアメリカ精神医学会が1970年代に採択した倫理基準で、診察もしていないし議論する許可も得ていない患者の精神状態について精神科医がコメントしないように定めたものだ。それはゾッとするような効果を及ぼしてきた。大量殺傷事件が起こった後、マスメディアはビデオゲームやわれわれの快楽主義的な文化や宗教的信仰心の喪失についての根拠のない憶測であふれかえるが、精神科医は、重度の精神疾患についてもっともよく知っているにもかかわらず、ほとんど無視されてしまうからである。


 
 ランザ氏のような重症の人が見逃されるのは、スクールカウンセラーが精神病よりも、不安や抑うつのほうに精通しているからでもある。統合失調症の急性発症者に対する入院治療の期間は、馬鹿馬鹿しいまでに短くなってしまった。保険会社や家族は、法外に高い入院費のために、できるだけ早く患者を退院させようとするからだ。




 回顧録『定まらない中心:狂気をめぐる旅』の著者で法学部教授でもあったエリン・R.サックスが述べているように、投薬と治療でうまくいくのだ。治療を受けていようと受けていまいと、統合失調症をもつ人の大多数は暴力的ではない(暴力的な犯罪を犯す確率は他の人々よりも高いけれども)。殺傷事件を起こした後で投薬治療をうけたとき、統合失調症の兆候を示した多くの加害者――その中には、ジョン・レノンの殺人犯やロナルド・レーガン大統領の暗殺未遂犯も含まれる――は、自分の行為の凶悪さを認め、深い後悔の念を言い表したのだ。



 銃による殺傷事件を食い止めるには国民全員の協力が必要だ。セミオートマティック式の銃にはそれ相当の規制が必要だ。精神病の兆候が明らかな人々に武器を売る人々に対しては刑事罰が課される必要がある。統合失調症の患者に対してもっと長期にわたる治療を公立・私立の病院ができるように保険や設備を拡充する必要がある。統合失調症とどう向き合うかについて公教育が熱心になる必要がある。自分自身や他人に脅威となりうる人々の措置入院をもっと進めることも必要だ。精神科医(および他の精神衛生の専門家)が、危険性の低い病気よりも、重い疾患のほうを進んで治療するようにインセンティブを高くする必要もある。



 急性統合失調症を患っていながら治療を受けたこともない人があまりに多い。あまりに多くのグロック社製の銃がつくられたし、あまりにも多くの子供や大人が若くして銃弾に倒れた。もうこんな事件はたくさんだ。









」(おわり)



















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