So-net無料ブログ作成
検索選択
ブログパーツ

体内細菌を育成する(2) [海外メディア記事]

 「体内細菌を育成する」の二回目。

 最後まで読むと、なぜこんなに難解な記事が人気トップにランクされていたのかが判る。

 腸内細菌→細菌は身体にシグナルを送る働きをしているようだ→糞便移植による細菌の移植→やせた人の糞便は(ひょっとしたら)肥満を解消する働きがある(かもしれない)→ダイエット・美容・健康・・・

 というわけで、生態系としての身体という考え方自体は、ほとんどの人にとってはどうでも良いことだが、これがダイエットの切り札になるかもしれないという可能性を秘めているとなると、話は変わってくるわけである。




Tending the Body’s Microbial Garden
By CARL ZIMMER
Published: June 18, 2012


http://www.nytimes.com/2012/06/19/science/studies-of-human-microbiome-yield-new-insights.html?pagewanted=2






     体内細菌の庭を育成する(2)




19JPMICROBIOME1-articleInline.jpg
表皮ブドウ球菌[Staphylococcus epidermidis]

 

 人間の 「ウイルスメタゲノム(virome)」には、われわれの体内に住みつく細菌に感染することを専門とする種が多くいる。しかし、「ヒューマン・ミクロビオーム・プロジェクト(Human Microbiome Project)」のデータベースに収められたDNAのサンプルの中に、人間の細胞を標的とするウイルスが数多くあることをワシントン大学のクリスティン・ワイリー(Kristine Wylie)とその共同研究者たちは発見した。多種多様なウィルスが宿主である人間にせっせと感染するのは、人間にとって正常であるように見える。「こうした健康な人においても、実はウィルスメタゲノムがいることはかなり驚くべきことです」とワイリー博士は言った。



 ミクロビオームには菌類(fungi)も含まれている。専門誌『サイエンス』の6月8日号で、ロサンゼルスのシダーズ・サイナイ病院の研究者デビッド・アンダーヒル(David Underhill)とその共同研究者たちは、人間や他の哺乳動物の腸の中に多様な菌類がいることを報告した。たとえばマウスでは、既に知られている100種の菌類と、科学的に全く知られていなかった100種の菌類の一覧を作成した。この多様性は、それが細菌を撃退するために進化してきた免疫システムによって容認されていることを考えるならば、それだけいっそう注目すべきことである。免疫システムがどの細菌を殺し、どの細菌を容認するかをどのようにして決定しているかについて、科学者はまだほんのわずかしか理解していないのである。


 たとえば、免疫細胞は、菌類にのみ関わるデクチン-1と呼ばれるタンパク質によって、菌類の感染と戦う。しかし、アンダーヒル博士と共同研究者たちは、デクチン-1が無害な菌類を容認することにも不可欠であることを発見した。彼らはデクチン-1を作れないマウスを遺伝子技術によって生み出したが、そのマウスは無害な菌類に反応し、自分自身の組織が損傷を受けるほどの炎症を起こしたのであった。



 ミクロビオームはわれわれに有益となることをたくさんしてくれているので、免疫システムが自分自身を抑制できるのは良いことだ。腸内で、細菌はビタミンを合成したり硬い繊維質を消化可能なものに分解してくれているのである。


 皮膚細菌も大事な働きをしている、とセグリ博士は言った。「皮膚の最も重要な機きの一つは、バリアの役目です」と彼女は言った。「細菌は皮膚細胞の蝋状の分泌物を餌にし、保湿効果のある皮膜を生みだします。それが私たちの肌をしなやかに保ちひび割れを防止します――そうして、侵入してくる病原菌を入り込ませないようにしているのです」。




 システムに復原命令を出す




 抗生物質は有害な細菌を死滅させるが、広域スペクトル抗生物質は多くの望ましい種も死滅させることがある。フィッシュバック博士は抗生物質を庭に散布する除草剤になぞらえる。除草剤は望ましくない植物を殺すだけでなく、トマトやバラも殺してしまう。庭師はトマトやバラが自力でまた成長してくると思い込んでいるのだ。


 実は、細菌の生態系が自動的に元に戻るという保証はないのだ。「それは、私たちが今日抱いている前提の一つですが、後から振り返ってみると愚かに見えることになるかもしれませんね」とフィッシュバック博士は述べる。実際、破壊された生態系に侵入してそこに定着する細菌もいる。クロストリジウム・ディフィシレと呼ばれる種は、1クールの抗生物質の治療期間後に人間の腸内に侵入することが時々ある。2000年から2009年に米国の病院に入院した人でクロストリジウム・ディフィシレの保菌者であると判明した患者数は、13万9000人から33万6600人へと、倍以上になった。一度居座ると、抗生物質耐性性のクロストリジウム・ディフィシレは根絶するのが難しい場合もある。


 科学者は健康的な細菌のイメージが判りかけているので、彼らは破壊された細菌を元に戻せるかどうかについては楽観的である。「現時点では、もうじきそれができるようになるのかは判りません。しかし少なくともデータは、それが実現可能であることを示し始めていると思います」と、ミクロビオーム・プロジェクトの主任研究者であるJ・クレイグ・ヴェンター 研究所(J. Craig Venter Institute)のバーバラ・メテ(Barbara Methé)は述べた。



 ミクロビオームを元に戻す一つの方法は、有益な細菌を選択的に育成することかもしれない。たとえば、黄色ブドウ球菌のような危険な皮膚病原菌を寄せ付けないでおくには、セグリ博士は、無害な皮膚細菌の栄養分を注入したクリームを使うことを考えている。「そうすれば、ブドウ球菌を追い越すほどの健康な細菌の増殖が促進されるでしょう」と彼女は言った。




 細菌の移植



19JPMICROBIOME2-articleInline.jpg
腸球菌 [Enterococcus faecalis]



 細菌を直接加えることも役立つかもしれない。残念なことに、いわゆるプロバイオティクス(probiotics: 体に良い細菌)の科学は、売上の急増に比べてはるかに遅れをとっている。調査会社のユーロモニター・インターナショナルによると、2011年、プロバイオティクスの食品やサプリメントの売り上げは280億ドルだった。しかし、従来の薬と同程度の厳密さで検査されたものはほとんどなかったのだ。



 「科学がいい加減で浅薄だったのだと私は思います」とフィッシュバック博士は述べた(博士はシフ・ニュートリション・インターナショナル社の科学諮問委員会のメンバーだ)。


 それにもかかわらず、彼は有望なプロバイオティクスの治療がいくつかあると見ている。ますます多くの医師がクロストリジウム・ディフィシレに糞便移植(fecal transplants)で対処するようになってきた。健康なドナーの大便が、感染した患者に座薬のようにして移植されるのだ。大便の善玉細菌が腸内に定着して、クロストリジウム・ディフィシレと競い始めるわけだ。今年、アルバータ大学の研究者たちは、124件の糞便移植を調査し、83%の患者が即座の改善を経験しその体内の生態系が元に戻ったことで、この手法が安全で効果的であると結論づけた。


 ミネソタ大学のアレクサンダー・コーラッツ(Alexander Khoruts)博士とその共同研究者たちは、糞便移植を標準的な治療法にしたいと思っている。彼らは今、コーラッツ博士の言い方を借りると「「オエッ」とくる部分を取り除いて」、糞便から細菌を抽出することができるようになった。


 コーラッツ博士共同研究者は連邦政府の承認を得て、糞便移植の正式な臨床試験を始めた。博士は、最終的に、腸内の生態系を構築するのに必要なごく少数の種を含むプロバイオティク薬を開発したいと思っているのだ。



 「人々はこの構想を真剣に考え始めていますよ」とフィッシュバック博士は述べた。「これは多くの人々を助けることになる治療法です」。



 ミクロビオームを操作することによって治療できるかもしれない別の病気もある。科学者たちは、たとえば、肥満を腸内の生態系に対する変化と結びつけてきた。科学者が肥満のマウスの細菌をやせたマウスに移植すると、やせたマウスは太りだしたのだ。



 どうしてこういうことが起こるかはまだ不明だが、いくつかの研究が示唆するところによると、「肥満した」ミクロビオームが身体にシグナルを送り、細胞がエネルギーのために糖を利用する仕方を変えたり、身体に余分な脂肪を蓄積させるようにしているというのだ。


 アムステルダムのアカデミック・メディカル・センターの研究者は、糞便移植が肥満の治療に役立つかどうかを見る臨床試験を行っている最中だ。彼らは45人の肥満男性を集めた。自分自身の便を移植された者もいれば、やせたドナーの糞便を移植された者もいた。科学者たちが発見しつつあるのは、やせたドナーからの移植が、肥満した被験者の糖の代謝のあり方を変えつつあるということだ。

 
 こうした初期段階の結果は期待を抱かせるものだが、肥満した被験者の体重が減っていることを示す証拠はまだない。フィッシュバック博士は、人々を健康にするためにミクロビオームをどのように扱えばいいかを見つけ出すにはまだしばらく時間がかかるだろうと注意している。


 そして、医師を説得して生態学者のように考えるようにさせるには、もっと長い時間がかかるかもしれない。


 「私の知っている医師たちは、明快で判りやすいものが本当に好きでしてね」とフィッシュバック博士は述べる。「でも、どんな生態系もそうですが、ミクロビオームは、単純な答えを見つけられるような場所ではないのです」。




」(おわり)









コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。