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ムンクの最後の叫び [海外メディア記事]

  絵画の本質からすればどうでもいいことだが、オークション史上最高の落札額を更新するかどうかが注目されているムンクの『叫び』を話題にした記事を、ドイツの『シュピーゲル』誌から。

 落札者の候補に日本人が挙がっているのが少し意外に感じられる(まあ、どうでもいいことだが)。

 

Munchs letzter Schrei

Von Marc Pitzke, New York

http://www.spiegel.de/kultur/gesellschaft/0,1518,830850,00.html



 ニューヨークで行われる注目のオークション


ムンクの最後の叫び

 エドヴァルド・ムンクの『叫び』は、絵画泥棒やホラー映画の監督や古物商たちの心を誘惑してきた作品だ。今、サザビーズが4つのバージョンの内の一つを競売にかけ、オークション史上最高額の落札を望んでいるが、2億ドルまでは可能だろうと見られている。購入を考えている大富豪ならば、試しに自分の居間に絵を飾っておきたいと思うにちがいない。



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 エドヴァルド・ムンクは幸福な人間ではなかった。病弱で抑うつ気味、アルコール依存で相次ぐ不幸に見舞われたこのノルウェーの画家は、自分の芸術の中に身を閉ざしてしまった。しかし、自分の内面の苦しみからは、逃れることができなかったのだ。


 1892年頃、オスロ市街を散歩していた時のこと。「突然、空が血のように赤くなり、少し重苦しい気分になった」とムンクは日記に書いている。「まるで、いつまでも終わることのない鋭い叫びがあらゆるものを貫いていくかのように聞こえ、不安のために震えながら私は一人で立っていた」。


 彼はすぐに、その瞬間を画に描いた。『叫び』はムンクの最も有名な作品になっただけではない。レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』と並んで、世界で最も有名な絵画になったのだ。ムンクは何年もかけてほぼ同一のバージョンを4点描いたが、その内の2点は油絵で、もう2点はパステル画だった。その中の3点はノルウェーの博物館で展示されている。1点だけが個人の所有だった。



 こうした状況が水曜日に変わるかもしれない。1895年のパステル画がニューヨークのサザビーズで競売にかけられるからだ。伝説を作るのが好きなこの競売会社はこの絵の値段を少なくとも8000万ドルはあると見込んでいるが、1億5000万ドルから2億ドルは行くだろうと見るブックメーカーもいる。もしその値段で落札されれば、『叫び』は、2年前に(やはりサザビーズで)1億650万ドルで落札されたパブロ・ピカソの『ヌード、観葉植物と胸像』が今保持している史上最高額の絵画としてのオークション世界記録を破ることになるだろう。



 ザ・シンプソンズと『叫び』



 『叫び』がオークションにかけられることが象徴的に示しているように、美術市場は不況から回復しつつある。ニューヨークのすべての競売会社――サザビーズ、クリスティーズ、フィリップス――は、ここ数週間のうちに歴史的なオークション――ピカソ、アンディー・ウォーホール、ポール・セザンヌ、サルバドール・ダリ、ロイ・リキテンスタインなどの作品――を予定している。それらを合計して、数億ドルと引き換えに、芸術作品がその所有者を換えることになるのである。


 『叫び』は確かに独特のカテゴリ―の作品だ。『フィナンシャル・タイムズ』紙によって「全宇宙に広がる悲観論」のシンボルと呼ばれる一方で、ポスターとしてであれ、Tシャツとしてであれ、マグカップや漫画や本の表紙や宣伝のロゴとしてであれ、この絵ほど商業的に利用されたものはない。ウォーホールは自分の作品にとりこんだし、ホラー監督のウェス・クレイヴンは 『スクリーム』のために利用したし、テレビアニメの「ザ・シンプソンズ」はそのそっくりさんを登場させた。ムンク自身が複製を作ったことから商業化は始まっていたのだが、それが今サザビーズでとりあえずピークを迎えるわけである。


 この暗い絵は犯罪者たちをも絶えず魅了し続けてきた。1994年、リレハンメル冬季オリンピックの開会式の日に、4人組の男たちがオスロの国立美術館から1893年のバージョンを盗んだ。彼らは、いい加減な警備に感謝する旨のメモを残して行ったが、3ヶ月後に逮捕された――『叫び』とともに。10年後、1910年のバージョンがオスロのムンク美術館から消え去った。それは長い間行方不明だったが、2006年に発見されはしたものの、湿気のおかげで部分的に損傷していた。



 
 ソファに似合うか?



 現在、サザビーズに出張している『叫び』にはそれほど刺激的な物語りはない。ムンクは、縦79センチ横59センチのこの大きなパステル画を、おそらくブラウンシュバイクのコーヒー商アーサー・フォン・フランケットの依頼で描いたのだろう。それは後に、エドヴァルド・ムンクの同時代人であり、隣人であり、友人にしてパトロンでもあったノルウェーの船主トーマス・オルセンの所有物となった。


 オルセンは第二次世界大戦中その絵を納屋にしまってナチスから隠していたが、戦後は居間に飾っていた。彼の息子のペーター・オルセンが激しい財産争いの末にそれを手に入れたが、彼は今回のオークションの収益によって、ムンクの故郷であるヘードマルク県に美術館を建設する予定だという。

 価格を押し上げるために、サザビーズは『叫び』を事前に世界各地で展示させた。これだけでもセンセーショナルな出来事だった。90年代の始めにワシントンで短期間展示されたことを除けば、今回オークションにかけられる画はアメリカでもイギリスでも展示されたことはなかったからである。

 
 『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の情報によれば、アジアやヨーロッパやアメリカのトップクラスの顧客たちは、かなり手ごわいモチーフをもつこの画が他の収集品と調和するかどうかを確かめるために、『叫び』を自室でじっくり眺めてみたいと思っているはずだという。サザビーズはたった48時間の展示のためにこの画を空路香港まで運んだのであった。




イブニング・オークションの大トリ

 
 
 サザビーズはロンドンで『叫び』を4月に一般公開した。7500人以上の愛好家がやって来た。応募者が殺到したために、ニューヨークでのプレビューは安全上の理由からキャンセルされてしまった。代わりにサザビーズは、常連客をアッパー・イースト・サイドの本社ビル10階のうす暗いホールに招待したのだった。


 何年にもわたってサザビーズは、ムンクをオークションに出品することに対する関心を用意周到に煽ってきた。最もコピーされてきた画の一つであるムンクの『吸血鬼』は、2008年に、70年ぶりに陽の目を浴び、ムンクの作品としてはそれまでで最高額の3800万ドルで落札された。


 このオークションに参加する者と見なされているのは、ヨーロッパやアジア(特に日本)の大富豪、中東の王族、ロシアの新興財閥などである。真の芸術愛好家にとっては高すぎるものなどないのだ。大富豪の未亡人であるリリー・サフラ(Lily Safra)は、2年前、アルベルト・ジャコメッティの細長い銅像『歩く男Ⅰ』に1億43万ドルの値段を提示した。


 サザビーズは、ピカソ、ダリ、ポール・ゴーギャン、ホアン・ミロ、アンリ・マティス、ルネ・マグリット、クロード・モネ、オーギュスト・ロダンなどの巨匠を対象にしたイブニング・オークションの大トリに『叫び』をもってくる演出をするようだ。ピカソの「肘かけ椅子に座る女性」1点だけで少なくとも3000万ドルで落札されるだろうという。


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(ピカソの「肘かけ椅子に座る女性」)



 前座だけでも



 来週、サザビーズやクリスティーズやフィリップスには、現代芸術の作品がオークションにかけられることになっている。リキテンスタイン、ウォーホール、ロバート・ラウシェンバーグ、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、ヴィレム・デ・クーニング、フランシス・ベーコン、ゲルハルト・リヒター、シンディ・シャーマンなどである。やはり、(期待される)収益は、すでに数千万ドルにのぼるだろうと見込まれている。


 しかし、なぜこれほど突然に多くの作品がオークションに集中するのであろうか? 作品の多くは、最近亡くなったコレクターの遺産に由来する。あるいは、売りたくなったか現金化しなければならなくなった匿名の売り手が売却した作品もある。さらには金融危機で売れ残って、再度売れる機会をうかがう作品もある。芸術市場はさらに弾みがつくことを望んでいるのだ。2011年は良い年だった。サザビーズとクリスティーズは、大きなオークションを開催して、芸術作品を1年間で17億ドルで売却した――が、これは2010年に比べて5億ドル以上も大きい額である。


 火曜日にクリスティーズ主催の今年初の春の大オークションが前座の興行を行った。最高値をつけたのは、ムンクの気分が重くなる画よりも軽い題材の2つの作品だった。つまり、セザンヌの長い間行方不明だった水彩画の習作『トランプをする人々』とマチスの油絵『シャクヤク』がそれぞれ1910万ドルで落札されたのだ。オークションの総売り上げは1億7100万ドルにものぼったのだ。ムンクの『叫び』は、この世の不幸を凝縮したような作品であるにもかかわらず、今やそれ以上の喜びを提供することになるかもしれないのである。


 」(おわり)



 




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