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つけ麺って粋な食べ物じゃないね [雑感]

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  ・・・・その日食したつけ麺は、たぶん普通のつけ麺だったと思う。その店は川崎近辺でとても人気化している店から暖簾分けした店で、出されたつけ麺も今流行りのタイプのつけ麺だった。麺は太麺で、つけ汁は豚骨・鶏・魚介を駆使したドロッとしたタイプ。どんなスープでも、あれこれ手を加えると、ドロッとして重くなるものだが、つけ麺の場合だとそれが「粘度」が高く「濃厚」だと尊ばれる傾向があるようだ。作り手も、やたら色々な要素を加えた方が良心的だと思っている節がある。

 「何をいまさら」と言われそうな感想になってしまうが、味はともかく、昨今のつけ麺はとても食べづらい。作り手は、汁の濃厚さは考えても、食べる側の事情は考えていないかのようだ。

 第一、粘着性の高いドロドロのつけ汁に太い麺を投入して絡めるのが、視覚的にあまり(または、ぜんぜん)快いものではない。絡めること数回にして、すでに汁はなくなりかけて冷めてしまう。冷たい麺に冷めたゲル状の汁が絡まったものは、どちらかと言えば気色悪いものになりかけている。たまに、誰かが地面に吐いたゲロに麺がそのままの形で残っているのを目撃してしまうことがあるが、ああいう不快な光景がフラッシュバックしかねないんだよな、つけ麺を食べていると。
 
 つけ麺って、本当に粋じゃない。こんな不粋な食べ物がなぜ人気化するのか実に不思議だ。

 食べながら『吾輩は猫である』の一節を思い出した。美学者の迷亭が苦沙弥先生の奥方に向かって蕎麦の食い方について講釈をするところである。


 「噛んじゃいけない。噛んじゃ蕎麦の味がなくなる。つるつると蕎麦を滑り込むところがねうちだよ」。


 迷亭はその通り実践する。しかし目分量でつまんだ蕎麦の分量が多すぎてむせてしまって面目をつぶすのだが、その点は今は脇に置こう。私の手元にある、ある蕎麦の本で、とある落語家が「蕎麦ってのはなぁ、食うもんじゃないんだ、手繰(たぐ)るんだ」と先輩から説教された経験を有難そうに語っているが、そうした作法はもう明治期には確立していたのだろう。蕎麦はツユにどっぷりつけるべからず、ざる蕎麦は3,4口で食べ切るべし等の流儀もそうだ。

 もっとも、漱石はそんな作法を冷笑的に見ている。そんな「江戸っ子」の作法は明治期になって、江戸時代を美化したがる落語家が仕立てたフィクションだという説がある。たぶん、そうなのだろうと私も思う。やたら江戸っ子の粋というものを持ち出して、こうじゃなきゃならねぇなどと御高説を聞かされるだけでも片腹痛くなる。漱石は落語好きだったが、通ぶる人間に辟易していたことは、上の迷亭のくだりで明らかだ。「蕎麦ってのはなぁ、手繰るもんなんだ」などと落語家に得意げに言われたら、さぞ興醒めしただろう。

 しかし、そういう諸々のことを踏まえた上であえて言わせていたただければ、やはり迷亭の言っていることは間違っていないと思う。やはり、麺というものは噛むものではない、咽喉に流し込むものだ、咽喉ごしが大切なんだという感覚は、大方の麺好きが同意するだろうと私は思う。麺好きは、そういう流動感というかスピード感が好きだからこそ、麺が好きなのだ。

 いや、うどん好きや二郎以降すっかり太麺が主流になったラーメンの愛好者はおくとしても、最近のつけ麺の愛好者は、絶対その点に同意しないだろう。あのドロッとした汁に太麺を二~三本入れて、そのドロドロした代物をノロノロと口に運んで、ワシワシと噛みしめながら食べる。それがつけ麺のだいご味だと言うのだろう。それはあごの良い運動にはなるだろうが、従来からの麺好きから見ると、そのすべてが堪(たま)らないまでにドンくさく不粋なものに感じられてしまうのである。迷亭が見たら、きっと「あんなの馬子(まご)の食いものだよ」と言いそうだ。うどん好きの関西人やカッペの食いものだとね・・・・      
                                                                 )。




 ・・・・さて、以上は、川崎駅からほど近い所にある『赤備』でつけ麺を食した時にふと脳裏に浮かんだことであるが、この店の評価とは直接は関係ない、たんなる前振りである。

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  ここは、『つけ麺 玉』の同じ系列店の『三三七』に比べると、立地が良くとても好感を持てる清潔感あふれる店内の雰囲気ではあったが、つけ麺は、味的には、『三三七』よりかなり劣るありふれたものだった。とりわけ、つけ汁がすぐなくなったのが悲しい。この悲しみが、上の文章全体の基調となっている。今度来るときがあるとしても、間違いなくつけ麺はたのまないと思う。




(後になって、『食べログ』の投稿を一部手直しした)




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