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白人の下層階級 [海外メディア記事]

 リベラル派のコラムニストのニコラス・クリストフが『ニューヨーク・タイムズ』に寄せたコラムを紹介する。

 内容は、今日アメリカの白人の下流部分がいかに苦境に追い込まれているかを訴えるもの。アップルのことを取り上げた記事もそんな内容だったが、個人的に貧困や労働の問題にある程度の興味があるので、ついついこういう記事を見かけると気持ちが動いてしまうのである。


 
 ちなみに、ニコラス・クリストフ氏のコラムは、以前に一度取り上げたことがある。震災直後の日本にエールを送る気持ちの良い文章だった。

「日本人が教えてくれるいくつかのこと」・・・http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2011-03-20



The White Underclass
By NICHOLAS D. KRISTOF
Published: February 8, 2012

http://www.nytimes.com/2012/02/09/opinion/kristof-the-decline-of-white-workers.html?src=rechp






白人の下層階級


 いつまでも続く貧困は、アメリカが抱える道徳的な大問題だが、しかしそれよりずっと重大なことなのだ。


ニコラス・D.クリストフ

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 実際問題として、私たちは、国民の多くが下層階級に留まっていてくれなければ、教育問題にしろ医療費にしろ政府支出や経済的競争力といった問題を解決することはできないのだ。歴史的に見ると、「下層階級(underclass)」といぅ表現はしばしば「民族」を婉曲的に表現する語であると考えられてきたのだが、それが最近はますます白人の労働者階級の要素を含むようになってきた。

 この点は、チャールズ・マレー(Charles Murray)の最新の著書 “Coming Apart”(『崩壊する白人アメリカ人』――訳者註)をめぐる論争の背景にもなっている。マレーは、白人の労働者階級で家庭の崩壊が進み、伝統的にあった(と彼は見ている)勤勉という価値観が衰退しているという事態を批判的に考察している。

 リベラル派の人々のほとんどはこの本を批判したし、私もこの本の重要な部分については意見を異にしている。しかし彼が、スキルの低い白人労働者の間に広がる危機が社会的にどれほどの広がりをもっているかを強調したのは正しかったのだ。

 私が基準として考えているのは、わが愛する故郷の町、巡りあわせが良い日だと人口約925人にもなるオレゴン州ヤンヒル(Yamhill)だ。私たちアメリカ人は、アメリカの保守的な農村部ときけば美しい牧歌的な背景を思い出すが、最近では、ヤンヒルのような場所でわずかな収入を頼りにしている白人の家庭の中には、過去数十年間多くのアフリカ系アメリカ人の家庭を崩壊させてきた病理的現象を再現しているかのように見える所もあるのだ。


 災いの一つは薬物の乱用だ。アメリカの農村部では、ヘロインではなくメタンフェタミンが好まれる。それはヤンヒルでの生活をめちゃくちゃにし、多くの者に前科という置き土産を残し、そのため彼らは良い仕事を見つける事が一層困難になる。親が刑務所にいるので、子供の養育はいい加減になってしまう。


 それから、伝統的な家族のパターンが崩壊しつつある。マレーによると、高校の教育しか受けていない白人のアメリカ人女性において、出産の44%が婚外出産であるが、1970年の6%に比べると非常に高くなっている。


 リベラル派には、伝統的な結婚を良しとするのは偏狭な態度だと感じる人がいる。私は、貧困の取材を重ねるにつれて、それとは反対の意見をもつようになった。きちんとした結婚は、貧しい人々の暮らしに有利となる多大なインパクトを及ぼすものなのだ(そのインパクトは中流階級の暮らしよりも大きいのだ。中流階級は、事態が悪化したとき、自分たちを支えるクッションとなるものをもっと持っているからだ)。


 ボストンの低所得者層の非行に走る若者を対象にした研究の一つによると、犯罪から少年を遠ざけるうえで最もインパクトのあった要因の一つは、その少年が気にかける女性と結婚することだった。この点はスティーブン・ピンカー(Steven Pinker)が最近の本( “The Better Angels of Our Nature”(『人間の本性にひそむ良い方の天使』――訳者註))の中で述べていることでもある。「若い男性が女性や結婚によって礼儀ある人間になるという考えは、8月のカンザス州のトウモロコシのようにつまらなく思われるかもしれないが、それは現代の犯罪学の常識になっているのだ」。

 
 職も貧困から脱出する突破口として重要だし、労働者階級の男性のますます多くが労働力市場からこぼれ落ちて行っているのは困ったことだとマレーが指摘しているのは正しいことだ。働き盛りの高卒男性で「労働力市場から落ちこぼれている」と言っている者の割合は1968年から4倍にもはね上がり、12%にもなってるのだ。

 
 1965年、ダニエル・パトリック・モイニハン(Daniel Patrick Moynihan)は有名なリポートを発表してアフリカ系アメリカ人の家族構成が危機を迎えていると警告したが、当時のリベラル派の多くは、このリポートが人種差別に近いものであると非難した。振り返ってみると、モイニハンが警告を発したのは正しかったのだ。

 今日、大量の労働者階級のアメリカ人が、薬物、絶望、家庭崩壊、高い刑務所入所率、仕事と教育の役割が低下して社会的上昇が望めなくなったことなどの際立った特徴を見せながら、下層階級に陥って抜け出られなくなっているという危機に私たちが直面しているのではないかと私は恐れる。貧困がもたらすこうした問題の広がりについて国民的なレベルで話し合うことが必要であり、たぶんマレーの本がきっかけになってその口火が切られることになるかもしれない。リベラル派があまりにも性急になって不平等を基本的に税の問題として考えてしまわないかと私は恐れる。確かに、わが国の税のシステムは恥ずべきものだが、貧困問題はそれよりはるかに深く複雑なのである。…


 私の高校の同学年の80%は高校を辞めたり大学に進学しなかったが、それは、製鉄所や手袋工場や製材所に勤めてきちんと生計を立てることができたからだ。そうした仕事は親がしていた仕事だった。しかし手袋工場は閉鎖され、労働者階級の職も消え去り、スキルのない労働者たちは移民との競争に巻き込まれてしまった。

 理想的な解決策はないが、いくつかの証拠が示唆するところでは、われわれは(もっと少ない、ではなく)もっと多くの社会政策を必要としているのである。早期の幼児教育は、苦労しているシングルの親に育てられている子供たちのサポートになるだろう。麻薬患者を治療することは、彼らを刑務所に入れるよりもはるかに安くつくのだ。

 新たな研究が発見したことだが、出所したばかりの受刑者に職業訓練を行ったところ、再犯率が22パーセントも下がったらしい。就業機会センター(the Center for Employment Oppotunities)によるこうした取り組みは採算が取れる以上の結果をあげた。1ドルの支出に対して3.85ドルの見返りがあったのだ。

 だから現実を良く見よう。白人の労働者階級に危機が広がっているが、これは、アメリカで増大している所得格差の副産物なのだ。病理的な現象は痛みを覚えるほど現実に広がっている。しかし、解決策は、教え諭そうと人さし指を振ることでも目を逸らすことでもなく――機会を与えることなのである。



」(おわり)










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