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日本の失敗という神話(1) [海外メディア記事]

 久しぶりに日本経済のネタを。『ニューヨーク・タイムズ』で面白そうな記事(というか、オピニオン欄に載った寄稿文)があったので紹介しよう。

 内容は単純明快で、バブル以降の日本の「失われた数十年」は、愚かしい例として繰り返し取り上げられ物笑いの種にされてきたが、それは根拠のない神話にすぎない、ということを示すことが眼目である。

 たしかに、あの大震災と原発の災害が過度に誇張して報道されたことから推測できることだが、日本の経済についても幾重もの誇張や歪曲があったことは想像に難くない。そうした外部の誇張された評価を真に受けて、ますます日本人のセルフ・イメージが収縮してしまった、ということもあっただろう。外部の目に過度に敏感ですからね、日本人は。そんな相乗効果もあって、日本の内外で「失われた数十年」というイメージがすっかり定着してしまった感がある。しかし、特に最近のヨーロッパの経済状況やアメリカの貧富のとてつもない格差などと対比してみても、日本はまだそれほど酷いわけではないのでは? などと最近思うことが度々あったので、この記事の着眼点は私なりに理解できるものがある。

 ちなみに、「失われた数十年」と訳した原語は“the lost decades”。もちろん、そう訳すしかない。バブル破裂後の十年のみならず、欧米では、それに続く十年、さらにその後の十年と、「失われた十年」を日本が引きずり続けてきたという評価が一般的なわけで、“the lost decades”という複数形にはそういう含意がある。これについては、かつて 『ウォールストリート・ジャーナル』の記事を紹介したことがある。

 「㈱無為無策 三度目の失われた十年を迎えるかもしれない日本」・・・・http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-01-04


 いつまでも改革を断行できずに、過去のしがらみをだらしなく引きずっているだけの日本というイメージが一般的であったのだが、日本経済を肯定的に扱う記事がないでもなかった。イギリス『ガーディアン』紙の次の記事などはその数少ない例。

 「「ゾンビ」日本の経済的誤り」・・・・ http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26


  今回の記事は、こうした例外的な見解が今後さらに増えて行くだろうことを予想させるものかもしれない。原記事は3ページにわたっているので、3回に分けて紹介する。



The Myth of Japan’s Failure
By EAMONN FINGLETON
Published: January 6, 2012

http://www.nytimes.com/2012/01/08/opinion/sunday/the-true-story-of-japans-economic-success.html




日本の失敗という神話(1)


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ファッショナブルな渋谷の街並み


 アメリカ経済について楽観的になれるわずかな兆しはいくつかあるにはあるが、失業率は依然として高いし、国内は停滞気味だ。

 アメリカ人は、もし正しい道を歩まなければ(その正しい道がどういうものであるかについて激しい論争があったが)国がどうなるかの警告例として日本を見てみろと何度も言われてきた。例えば、CNNのアナリストであるデビッド・ガーゲン(David Gergen)はそんな風に日本を描いてきた。「日本は今やとても意気消沈した国になってしまい、本当に後退してしまった」。

 しかし、日本をそのように描き出すのは神話というものだ。多くの施策によって、日本経済は、いわゆる失われた数十年(それは、1990年1月の株式市場の暴落で始まった)の間でも上々の成績を上げてきた。最重要の施策の中には、アメリカよりはるかに上首尾の成績を残したものもあった。

 日本は、その金融システムが破たんしたにもかかわらず、国民にますます豊かなライフスタイルを提供することに成功した。いずれ時が経てば、この時代が傑出したサクセス・ストーリーとして見なされるようになることも考えられるのである。

 現実とイメージがこれほど大きく異なることがどうしてありうるのだろう? そしてアメリカは日本の経験から何かを学ぶことができるのだろうか?

 たしかに、日本の住宅価格は、バブル期の猛烈な最終段階の短期間につけた馬鹿馬鹿しい高値に戻ったことはなかった。東証の株価も同様である。

 しかし、日本経済と日本国民の力強さは多くの点で明らかだ。新聞の経済欄で物笑いの種になる日本というイメージとは必ずしも相容れない事実や数字は多数あるのだ。


 ・日本人の平均寿命は、1989年から2009年にかけて4.2歳も――78.8歳から83歳にまで――伸びた。これは、現在標準の日本人はアメリカ人より4.8歳も長生きであることを意味する。この平均寿命の伸びは、食事の違いがあるからというよりも、摂取する食事に大差がないにもかかわらず、達成されたのである。日本人はかつてないほど洋食を食べているからだ。平均寿命の伸びを説明するキーとなる要因は、より良い医療なのである。

 ・日本は、インターネットのインフラ構築で著しい進歩を遂げた。1990年代の中ごろまでは遅いいと嘲られていたが、今では状況は一変した。アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)の最近の調査では、最速のインターネット・サービスが享受できる世界の50都市中、日本の都市は38もあったのに対して、アメリカの都市はたった3つだけだった。

 ・1989年末を基準にすると、円は米ドルに対して87%、英ポンドに対して94%も上昇した。貨幣の尺度として伝統的に引き合いに出されるスイス・フランに対しても円は上昇した。

 ・失業率は4.2%で、アメリカの約半分である。

 ・世界中の巨大ビルを追跡調査しているウェブ・サイトであるスカイスクレイパー・ページ・ドットコム(skyscraperpage.com)によれば、500フィート以上の高層ビルは、「失われた数十年」開始以降、81棟が東京で建設された。それに対して、ニューヨークでは64棟、シカゴでは48棟、ロサンゼルスでは7棟である。


 ・日本の現在の経常収支の黒字額――もっとも広い意味での貿易額だが――は、2010年で合計1960億ドルで、これは1989年の3倍以上の数字である。それと対照的に、その期間のアメリカの経常赤字は、990億ドルから4710億ドルに膨れ上がった。1990年代、中国の台頭の結果、日本は敗者になりアメリカは勝者になるということが一般的な通念となったが、そうはならなかったことが判明したのだ。日本は1989年以降、中国への輸出額を14倍以上に増やしたし、日本と中国の二国間貿易は広範囲にわたって均衡を保っているのである。

 長年日本ウオッチを続けてきたアイヴァン・P.ホール(Ivan P. Hall)やクライド・V.プレストウィッツJr.(Clyde V. Prestowitz Jr.)が指摘しているように、「失われた数十年」というお話が誤っていることは、アメリカ人が日本に足を踏み入れる瞬間に明らかになる。日本に旅行する人は、通常、ケネディ空港やダレス空港などのアメリカのインフラの老朽化を見事に示すシンボルのような空港で旅行を開始し、近年大規模に拡張されモダンな装いに変貌した日本の空港に到着するからだ。


 1980年代初頭から日本ウォッチを続けてきた著名なウィリアム・J.ホルスタインは、最近何年かぶりに日本を訪れた。「アメリカで記事で読むことと、実際に日本で目にすることとの間には劇的なギャップがありますね」と彼は述べた。「日本人はアメリカ人よりも良い服を着ています。ポルシェ、アウディ、メルセデス・ベンツやその他の最高級のモデルを含む最新の車を日本人はもっているし、これほど多くのペットが甘やかされているのを私は見たことがありません。この国の物理的なインフラは改善と進化を続けていますしね」。

」(つづく)








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