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意味のある人生とは? (1) [海外メディア記事]

 ニューヨーク・タイムズには職業的な哲学者がエッセイを寄稿するコーナーがあって、私は普段から特に気に留めているわけではないが、今回紹介するエッセイの“The Meaningfulness of Lives(人生の有意味性)”という題名には、やはり、惹かれるものがあった。

 意味のある人生とは?  こういう問いは、重い問いにも見えるし、答えがありそうにもないという意味で、あまり意味のない問いにも見える。初心(うぶ)で素朴な中学生・高校生あたりが発する問いにも見える。そういう問いを、職業的な哲学者が取りあげるとどうなるか?  そこが面白い所と言えるかもしれない。

 オリジナルはかなり長いので、二回に分けて紹介する。


September 11, 2011, 5:45 PM
The Meaningfulness of Lives
By TODD MAY

http://opinionator.blogs.nytimes.com/2011/09/11/the-meaningfulness-of-lives/



  人生の有意味性 (1)


 

  意味ある人生とは幸福な人生とか道徳的に良い人生とは異なる


  私たちの中で、自分の人生が意味あるものかどうかと尋ねたことのない人がいるだろうか?  眠れない夜に、退屈だったり骨の折れる仕事を長時間している最中に、あるいは、問題を抱えた子供が耐えられないほどの負担に思われるようになるときに、 結局すべてが無駄なんじゃないかと思案にくれなかった人がいるだろうか?  人間として痛手を負った苦しい思い出を多くの人が抱え込んでいる今日にあっても、{人生に意味があるかどうかという問いに対する}答えについて思案してみることは自然の成り行きというものである。


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 哲学者のジャン-ポール・サルトルは、神がいなければ、私たちの人生には意味がなくなってしまう、と考えた。「もし神が存在しないならば、私たちは、私たちの行動を正当化してくれるような頼るべき価値や律法を見出だせなくなる。だから、明るいはずの価値の領域において、私たちは、自分の言い訳をしてくれるものを背後にもっているわけではないし、自分を正当化してくれるものを目の前にもっているわけでもない」とサルトルは「実存主義」というエッセイの中で語っている。この見解に立てば、私たちの人生に価値(意味はそれに立脚する)を与えてくれるのは神なのだ。そしてもし、サルトルが主張するように、神が存在しないならば、私たちの人生は、私達がそれに与える意味しかもつことができなくなるのである。


 これは二つの点で間違っているように思われる。第一に、神が存在しているとしても、なぜそのことが私たちの人生のそれぞれが有意味であることを保証してくれることになるのだろうか? 重労働や報われない努力がいつまでも続く人生であっても、もしそれがもっと大きな神の計画に収まるのであれば――もっとも、そんな計画に私たちは近寄れないのだが――、本当に救われたことになるのだろうか?  もしそうなれば、ゴミのようにしか感じられない人生にとってのささやかな代償にはなるだろう―――これは、宗教を「民衆の阿片」と呼んだカール・マルクスのような思想家においても見失われなかった論点である。さらに言えば、神は、私たちが頼りにする価値を根拠づけるものなのだろうか? プラトンが2500年前に認識したように、私たちがそうした価値を良いものと考えるのは、それらを神に帰するからなのだろうか?



 第二に、そしてもっと遠慮なく言えば、私たちの人生の有意味性は神の存在に依存しなくてはならないのだろうか? 意味は信仰箇条に基づいていなければならないのだろうか? 人生の有意味性を神の存在に基づけるならば、すべての無神論者の出番がなくってしまうばかりでない。違った神を信じる者たちも、互いの世界の中で出番がなくなってしまうのだ。必要なことは、意味について考える上で、私たちを一緒にすることができるようなアプローチなのであり、様々な宗教的な見解と共存できる、あるいはそれにとって代わって存在できるアプローチなのである。

  

 もっと有望でもっと包括的なアプローチが、スーザン・ウルフ(Susan Wolf)が最近著した説得力がある著作『人生の意味、なぜそれが大事なのか(Meaning in Life and Why It Matters)』によって提供されている。彼女の主張によると、意味ある人生とは、幸福な人生とか道徳的に良い人生とは異なるものだという。彼女の見解によると、「意味が生ずるのは、主観的な魅力と客観的な美点が合致するときである」。そうであるならば、ある意味で、意味のある人生とは、価値があると感じられるものでなければならない。人生を生きる当人がその人生に惹きつけられるようなものでなければならない。一般的に価値があるとされる大義――貧しい人々に食事や衣服を提供したり病人の治療にあたるような活動――に献身的に関わっているが、その活動に参加する人の心を揺さぶることのない人生は、ウルフが言う意味での有意味性を欠いていることになる。しかし、人生は、有意味であるためには、価値あるものでなければならない。ティドリーウィンクス(Tiddlywinks:ドミノゲームの一種)のような人生に没頭することは、そのゲームにどれほど夢中になったとしても、意味ある人生という水準に達することはないのである。



 ある考え方の理由を示すことで、それを擁護するということがしばしばなされる。しかし、時としては、始めに理由を示すのではなく、ある考え方がどこに至るのかを見るためにそれをたどっていくことが最良の策になることもしばしばある。その考え方を用いて自分自身を理解できるならば、それは重要なものを捉えているのではないか?  私がここで試してみたいのはこの後者のやり方なのである。核となる考え方――意味のある人生とは高く評価されているものであり、また評価されうるものであるという考え方――を追及していくと、私たちは、自分自身や他人に対する私たちの態度に含まれるいくつかの重要な側面を理解することができるようになるのである。


 この追求において、私たちがウルフの主張を超えて進むために取るべき最初のステップは、人生が時間をかけて展開するものだということを認識することである。人生には軌跡というものがある、と言ってもいいだろう。それは、時間的な厚みの中で経験されるものだ。私の人生の軌跡がバラバラに見えたり連続性を欠いているように見えるとしても、その展開の中で不連続であるのはあくまで「私の」人生なのであって、複数の異なる人生の諸要素なのではない。



 もし人生に軌跡があるならば、その軌跡は「物語りとして(narratively)」考えることができる。人間の一生は、一つのストーリーとして、あるいは多少なりとも関連性のある一連のストーリーとして見ることができる。こう言ったからといって、その人生を歩んでいる当人が自分の人生を物語りとして認識しなくてはならないとか、自分の人生を物語りとして生きなければならないという訳ではない。私は「これが私が構築したいと思っている物語りだ」とか「これまでの物語は次の通りだ」と自分自身に言い聞かせる必要はない。むしろそれが意味するのは、もし人が自分の人生について省みるとき、人はそれをさまざまなストーリーの筋道(story lines)――それらは平行線をなしていたり、交錯していたり、全くの別物であったりするかもしれないが――という点から見ることができる、ということである。この考え方は、アリストテレスの『倫理学』にまで遡ることができるが、自己とは何かについての最近のナラティヴ心理学的な捉え方とともに、復活してきたものである。


 ある軌跡を意味のある軌跡にするものは何だろうか? ウルフが正しければ、それは価値あるものとして感じられなければならないし、それ以上に、客観的に価値のあるプロジェクトに関係していなければならない。何が価値あるものとして感じられるのかを知ることには多くの困難はない。私たちのほとんどは、自分がいつ大事なことに関わっているか、いつ関わっていないかを、間違わずに感じることができるからだ。客観的な価値のほうが捉えどころがない。私たちは、意味のある人生が単に自分一人の道徳的な人生であるかのように、意味のある人生を道徳的に良い人生に還元したいとは思わない。意味のある人生とはそれほど限定されたものではないし、後で見るように、時にはもっと厄介なものであるからだ。だから私たちは、人生に客観的な価値を与えるものを、道徳的な領域の外側に求めなければならない。ここで、人生の物語的な性格が浮上してくるのである。


 」 (つづく)

 











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コメント 3

中村学

ウォールストリートのデモについて見ていて、このブログに出会いました。
ありがとうございます。これから読ませてもらいます。
by 中村学 (2011-10-11 18:22) 

MikS

拝読ありがとうございました。
by MikS (2011-10-12 00:41) 

阿部賢一

Japan held nuclear data, leaving evacuees in perilの翻訳以来時々アクセスしています。
私はCivil Engineerだったので、新聞記事の翻訳に大変参考になっています。
by 阿部賢一 (2011-10-16 17:21) 

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