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現在のドイツの電力事情(1) [海外メディア記事]

 「感情的な」決定によって、原発の廃止を突然決定したドイツ。そのドイツの電力の現状をアメリカ人がわりと突き放した第三者的な目で見た『ニューヨーク・タイムズ』の記事を紹介する。

 原文は2部に分かれているので、2回に分けて紹介する。前半は、数字上は電力に余裕があるではないかというドイツ政府の楽観的な見通しを軸に話が進んでいく。

 
 
Germany Dims Nuclear Plants, but Hopes to Keep Lights On

By ELISABETH ROSENTHAL
Published: August 29, 2011

http://www.nytimes.com/2011/08/30/science/earth/30germany.html?partner=rssnyt&emc=rss





  原子力発電所を停止したが、しかし電気はつけておきたいと願うドイツ



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 原発の冷却塔を背に、市役所の屋上の太陽電池パネルを見てまわるフィリップスブルク市長のシュテファン・マルトゥス。


エリザベス・ローゼンタール
公開:2011年8月29日



ドイツ ビブリス―――第二次世界大戦後の厳しい時代からドイツには大きな停電はなかったが、ほとんど一夜にして国内の原子炉の半分を停止してからというもの、ドイツは大停電の可能性に身構えている。


 
 原発は、長い間、ドイツの電力のほぼ4分の1を生み出してきた。しかし、地球の半分くらい離れた福島で放射能漏れをもたらした津波と地震が起きてから数日のうちに、ドイツ政府はドイツに17基ある原子炉のうちもっとも古い8基―――そこにはこのくすんだ工業都市ビブリスにある2基も含まれる―――の原子炉の稼働を停止した。3ヶ月後、原子力エネルギーなしで国中に電力を供給する新たな計画をたずさえ、再生可能エネルギーに対する期待感を高めながら、ドイツ議会は、投票の結果、原発を永遠に停止することにした。残った9基の原子炉も2022年までに廃炉にする計画がある。

 
 その結果、電力各社は十分な供給量を確保しようと必死になっている。顧客や企業は、照明や組み立てラインがこの冬大丈夫かどうか気をもんでいる。物価がどれほど上昇するかについて経済学者や政治家が言い争っている。

 「「再生可能エネルギーに転換しよう」と言うのは簡単ですよ、それに私もいつかは原子力なしでやって行けるだろうと確信していますが、これはあまりに唐突すぎますよ」。ドイツの有名なカールスルーエ工科大学の主任研究員のヨアヒム・クネーベルはそう言った。彼は政府の原発廃止の決定を「感情的」と特徴づけ、ドイツがこの実験を切り抜けるとしても、それは、電力の多くを原発でまかなっているお隣のフランスやチェコ共和国から電力を輸入することによってです、と指摘した。


 かりにドイツがこの実験を切り抜けたとしても、この計画が地球温暖化を抑制しようとする努力を無にしてしまう恐れがある。原子力エネルギーの欠点がどのようなものであれ、それは温室効果ガスの排出量が低い。世界第4位の経済大国であるドイツが、環境をよごす石炭発電所や供給量があやふやなロシアの天然ガスに頼ることになれば、それは、原発災害を避けるという潜在的なリスクを逃れるために、温暖化を促進するという本当のリスクを冒すことになるのではないだろうか?

 ニューヨークからローマにいたるまでの政治家たちが原子炉を廃炉にしたり中止にする計画を提案しているなか、世界中がドイツの極端なエネルギー政策の転換を見つめているのだ。

 
 国際エネルギー機関(IEA)は、ドイツの環境問題の取り組みに熱心だったエネルギー政策に対しては概して好意的だったのだが、ドイツの政策転換には批判的だった。IEAの天然ガス・石炭・電力市場部門の部門長であるラズロ・ヴァッロは、ドイツ政府の計画を「ドイツは金持ちで高度な技術をもっているので不可能ではないにしても、とても、とても無謀」だと評した。

 たとえドイツが必要な電力の生産に成功しても、「原発の一時停止という政策は、温暖化政策という観点から見るととても悪い知らせです」とヴァッロ氏は言った。「私たちは、温暖化との戦いにほどなく負けるかもしれないのですよ、原子力発電を失うことはその戦いを不必要なまでに困難にするのです」。

 ドイツ政府は、家庭や工場のエネルギー効率の改善や、新しいクリーンな電力源や送電線に巨額の投資を行う用意があると応酬している。これまでのところ、停電は一度もおこっていない。


 しかし、フランクフルトの南約40マイルにある、ここビブリスに停止している原子炉を2基所有している、ドイツの電力会社大手のRWEのCEOであるユルゲン・グロースマンは、懐疑的な見方を示した。「ドイツは、とても性急な決定で、私たち自身を実験台にしようと決めたのです」と彼は言った。「技術的な議論をしないように政治が口封じをしているんですよ」。



 原発をめぐる計算



 原発廃止の計画を作ったドイツ人は、ドイツが再生可能エネルギーの分野で著しい進歩を遂げるだろうということを主たる理由にして、原子力エネルギーなしでやって行けるだろうと思ったのだった。再生可能エネルギーは、現在、ドイツの発電量の17%を占めるのだが、この数字は10年間で2倍になるだろうとドイツ政府は見積っている。ヨーロッパのエネルギー事情をモニタリングしている団体によれば、海上の風力タービンが全速力で回る日に、ドイツは消費している以上の電力を再生可能エネルギー源から産み出しているのだという。

 ドイツは「再生可能電力に関するみんなの期待の上を行ってますよ」とヴァッロ氏は述べ、再生可能電力が費用効果的でかつ信頼性のあるものになりうることを示してくれた。

 ドイツは、原子炉を閉鎖するまで、ヨーロッパ有数のエネルギー輸出国だった。

 今年が始まる時点で、既存の発電所から合計で133ギガワットの発電量が見込めたので、「原子力発電所を停止してもよいだけの膨大な電力の余裕が実際あったのです」と、ドイツ連邦環境庁の長官で、エネルギーと環境に関してはトップともいえる政策立案者の一人であるハリー・レーマンは、彼が立案にたずさわったロード・マップについてそう述べた。ドイツは、約80ギガワットの平均的な国内需要を満たすために、約90.5ギガワットの発電量を必要としている。だから、原子力の寄与分である25ギガワットがなくても痛くはないのだ―――少なくとも国内だけを考えるならば、そうである。


 用心のために、ドイツ政府の計画は、2020年までに天然ガスと石炭火力発電によって23ギガワットを新たに作り出すことを求めている。それはなぜか? それは、大気が穏やかであったり曇っている場合、再生可能エネルギーによる発電が最大電力を供給できないからだし、電力を蓄積したり輸送する能力には、現在の技術では限界があるからだ、とエネルギーの専門家は言う。

 新しい石炭や天然ガスによる発電所は、現在のところもっともクリーンな技術を使用しているから、気候変動を悪化させることはないはずだ、と政府高官は言う。なぜなら、ドイツの発電所はヨーロッパの炭素取引システムに組み込まれることになるだろうし、そのシステムでは、許容される排出量の上限を超える発電所は、環境にやさしい活動をしている企業からカーボン・クレジットを買い取らなければならず、それによって環境のバランスは保たれるからなのである。


」(つづく)






 
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