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情報を隠蔽し住民被曝(その2) [海外メディア記事]

 Speediのデータを官僚や原子力の専門家たちは充分知っていた。しかし責任のあまりの重大さに恐れをなして、厄介払いにしようとした。文科省と二つある原子力の監視機関の間で、Speediのデータに関する責任の所在が、組織間でたらい回しにされる経緯が、以下の記事で判りやすく描かれていると思う。

 まあ、役人とはそういう小心さと狡猾さが同居する保身と無責任の存在なのだということは昔から知られていたことであり、だからこそ、そうした存在を一段上からコントロールする役目を政治家が負わなければならない、というのが民主党の主張だったはずだが、しかし、肝心の政治家も、このあまりに重すぎる責任からは後ずさりするしかなかったようだ・・・・

 しかし、最後の郡山市長の言葉にも出てくるように、まだ希望をもてるものがあるとすれば、それは、国民の知的レベルの高さだけなのかもしれない。そこに希望を繋ぎとめておこう。


 地震直後から仙台福島に張りついていたMartin Fackler記者の入魂の記事であると思う。


Japan Held Nuclear Data, Leaving Evacuees in Peril

By NORIMITSU ONISHI and MARTIN FACKLER
Published: August 8, 2011


http://www.nytimes.com/2011/08/09/world/asia/09japan.html?pagewanted=3&_r=1&partner=rssnyt&emc=rss

 


 「 原発のデータの公表を抑え避難民を危険な状態に放置した日本政府(その2)


 2.jpg
(郡山の学校の汚染された土)


 1.jpg
 (日本政府は当初、原発周辺に円を描き、その円内にいるすべての住民を避難させていたが、被害の規模が明らかになるにつれて、避難区域の半径は当初の3キロから10キロへ、そして次には20キロへと大きくなっていった)



 しかし小佐古氏によれば、不完全なデータしかなくても、放射線の放出レベルに関しては科学的な推測をし、それによって避難計画の道筋を示す有用なマップを作ることができるのだから、Speediを使うべきですと彼は政府に働きかけた。実は、文科省は、放出された放射線量のシミュレーションをSpeediのコンピュータ上で行うことで、まさにその作業をしていたのだ。そのマップのいくつかには、放射性物質による汚染のプルーム(雲)が、当初避難指定された区域を越えて、原発の北西方向に伸びている様子がはっきりと示されていた。

 しかし、首相官邸は、Speediの存在に気づいた後でも、その予測結果を公表することを拒んだのだが、小佐古氏によると、それは、政府高官たちが、自分たちの判断が後で疑問視された場合、費用のかかる避難に対する責任を取りたくなかったからなのだという。

 避難区域を広げることは、数十万人もの人々を故郷から引き離し、その人々のための住み家をすでに人口過密な国土に探し求めることを意味する。とくに地震発生直後の日々は、道路が寸断され電車も走っていなかった。これらのことを考慮した結果、政府は、避難民をすでに原発周辺地域から離れていた8万人を越えないように制限し、さらに増える避難民に対する補償金の支払いを必死になって避けようとした、とインタビューを受けた新旧の高官たちは語った。

 小佐古氏によれば、Speediのマップを公表してほしいという彼の必死の願いを首相側近たちは何度も黙殺し、そのため彼は、子供たちが危険なレベルの放射線に曝されているという懸念を抱きながら、4月に辞任した。

 首相のアドバイザーの中には、Speediのシステムが放射線プルームの方向を予測する上でそれほど有用ではなかったと主張する人もいる。内閣府の諮問機関の一つである原子力委員会の委員長である近藤駿介は、最初の数日間のSpeediのマップは首尾一貫しておらず、風向き次第で一日に何度も変わった、と述べた。

 「有用でないとすれば、それを公表する必要なんてないでしょう」と、東京大学で原子力工学の元教授だった近藤氏はそう述べた。「福島の地にいて、風がどちらに吹いているのかを見ていた人ならば、Speediと同じくらいのことは知っていましたよ」。

 しかし、小佐古氏や他の研究者は、Speediのマップは、そのシステムの大量のデータをソートする方法を知っている人の手にかかれば、きわめて有益だっただろうと言う。小佐古氏によれば、Speediのデータの読み取りはとても複雑で、しかも放射線の広がりの予測はとても緊急性を要していたので、三つの別々の政府機関――文科省と、原子力安全保安院と原子力安全委員会の二つの原発監視機関――は、Speediのデータを熱いポテトのように厄介払いし押しつけ合うばかりで、いずれもSpeediの予測結果に対する責任を引き受けようとはしなかったのだ。


 インタビューで、文科省や監視機関の関係者たちは、Speediの責任をもつのは別の所だと言いながら、責任のなすり合いをするばかりだった。原子力安全委員会の委員長はインタビューされるのを断った。

 
 浪江長の町長である馬場氏は、Speediのデータがもっと早く利用可能になっていたら、当然、町民はもっと安全な場所に逃げることを選択したでしょう、と語った。「しかし、われわれにはその情報がなかったのです」と彼は言った。「悔しいですね」。

 
 今、二本松市の仮設住宅にいる避難民は、津島では安全だと思っていたから、ほとんど用心することもなかったと言った。ヨウコ・ノザワ(70)は、トイレがなかったから、地面のくぼんだ場所で用を足したと述べたが、そこは放射線の線量がそれ以外の場所よりも高かったことはほぼ確実な場所であった。


 「私たちは最悪の場所にいたのに、それを知らなかったの」とノザワさんは言った。「子供たちは外で遊んでいたのよ」。

 隣に住んでいるヒロユキ・オト(31)は、地震発生時には東京電力の下請け会社の社員として原発内で作業をしていたが、今は、津島での滞在の後、妻と3人の子供たちと一緒に、仮設住宅にいると語った。「今から数年たって初めて影響が出てくるかもしれない」。被曝について彼はそう語った。「子供たちのことが心配です」。


(ページ3おわり)





 細野氏は、原発危機対応担当大臣なのだが、Speediのデータを含むある種の情報が「パニックを引き起こす」ことを心配して公表を控えられたと述べた。あるインタビューで、細野氏は――今では、東京電力の関係者や原子力規制当局とともに、ほぼ毎日会見を開いているが―― 政府は「考え方を改め」、できるだけ早く情報を公開しようと努力している、と述べた。


 評論家だけでなく、ますます懐疑的になりつつある国民は、納得している様子には見えない。この政府の対応を1950年代の水俣病のケースになぞらえる人もいる。水俣病とは、官僚と業界関係者が結託して、ある化学工場が水俣湾に水銀をたれ流しているという事実を隠すことによって、経済成長を守ろうとした国家的スキャンダルであった。水銀は、その地域に住む何千人もの人々に神経障害を引き起こし、被害者たちの胸をえぐるような写真に撮えられた。


 「国民を守ろうという気持ちをもっていたならば、すぐに情報を公表しなければなりませんでしたね」。そう語るのは、立教大学で社会学を教え、水俣病がいかに隠蔽されたかに詳しい関礼子。「水俣の経験があるにもかかわらず、政府はSpeediを公表しませんでした」。

 原発から約40マイル西にある郡山市の親たちからなるあるグループは、政府の大丈夫ですという発表を信じるのを止めたと言い、最近、保守的な農村地域では考えられない行動に出た。彼らは訴訟に打って出たのだ。彼らの訴訟は、郡山市に子供たちをもっと安全な地域に移すように求めるものだが、彼らの本当の狙いは、避難民や一般国民の健康被害に関する国の姿勢に異議を唱えることである。

 原発事故の後、政府は法定被曝限界を年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトにまで引き上げたが、これは子どもにも適用される数値だった――それは、以前の基準では立ち入り禁止になってしまうような地域で暮らし続けることを可能にするための引き上げだった。この上限は、後に、年間1ミリシーベルトに引き下げられたが、それは、学校の建物の中にいる間の子供にのみ適用されるものだった。

 原告の弁護士であるトシオ・ヤナギハラは、政府当局が情報を公開しないのは、原発事故の健康被害から注意をそらすためですよ、なぜならその被害はもう何年も経ってからようやく明らかになるものですからね、と語った。


 「影響はすぐに明らかにならないので、時間がたてば、タバコやコーヒーが癌を引き起こしたのだと主張することもできますからね」と彼は言った。

 
 
 日本政府は福島の住民の長期的な健康を監視し、将来的に適切な措置を講ずることを検討しています、と衆議院議員で内閣府大臣政務官の園田康博は述べた。郡山市長の原正夫は、政府の放射線基準が安全でないとは思わないと述べた。彼は、郡山市の3万3千人もいる小学生と中学生を避難させるのは「非現実的」だ、と述べた。

 
 しかし郡山市は、国の指令よりも先を行っていて、国から言われるより先に、市内の学校から表土を除去し、文科省の役人が定めたものよりも厳しい検査基準を定めたのだ。


 「結局、日本国民の知的レベルは高いのです」と市長は語った。「だからこそ、国民、特に福島の人々が判断できるように、情報は正確で迅速に開示されるべきだ、と私は思うのです」。

(4ページおわり)


」(おわり)














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