So-net無料ブログ作成
ブログパーツ
 

原子炉で戦う真のヒーローたち [海外メディア記事]




 福島第一原発内部で白い防護服に身を包んで、消火活動に当たっている50名たらずの人々―――それに焦点をあてた『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事を紹介する。
 9.11のときの真のヒーローがあの貿易センタービルに駆け上っていった消防士たちだったように、今回の大震災の真のヒーローはあの原子炉で作業している人々ではないか(彼らは、欧米のメディアで“Fukushima50”(フクシマ・フィフティー)と呼ばれているようだ)。
 いや、たぶん、沢山の人々がいたる所でヒーローのような働きをしているのだろうが、福島第一原発で作業しているあの人々も「真のヒーロー」にあげることが出来るに違いないのである。
 彼らの名前や顔などは公表されていない。そんなことは問題ではないという人もいるかもしれないが、実は、彼らの安全性についてはほとんど何も配慮されていないようなのである。彼らは、文字通り命を懸けて作業をしている。一国の命運がかかっているのだから、そんなこと当然だろうという空気の中で、彼ら作業員の安全に対する配慮があまりにも欠けているのが大いに気になる。
 ひょっとしたら東京電力の幹部や政府首脳によって良いように使われた挙句に見殺しの憂き目にあうだけではないのか、そんな嫌な空気が漂っているようなのだが、そんな空気を以下の記事は良く伝えているような気がする。

 原文は2部に分かれているが、それらをまとめた形で紹介する。




Last Defense at Troubled Reactors: 50 Japanese Workers
By KEITH BRADSHER and HIROKO TABUCHI
Published: March 15, 2011

http://www.nytimes.com/2011/03/16/world/asia/16workers.html?hp


故障した原子炉での最後の砦:50人の日本人作業員たち

 火曜日に福島第一原子力発電所に残っていたのは――そして、より広範囲に及ぶ原発の惨事を防ぐ日本の最後の可能性となったのは――放射線や火災に立ち向かう、技術者たちのわずかなクルーだった。


 彼らは、故障した原子炉から漏れ出る水素ガスが空気と触れ合って発火する度に発生する周期的な爆発に聞き耳を立てながら、真っ暗闇の中を懐中電灯だけを頼りに迷路のような装置の間を這って進むのである。




9384374-large.jpg

 彼らは、息がしづらいマスクを介して呼吸したり背中に重い酸素タンクを背負っている。彼らは、目に見えない放射線が体内に侵入するのをかろうじて防いでくれる、ぴったりしたフードつきの白いフルボディのジャンプスーツを着用している。

 彼らは、後に残った顔を見せることもない50人の、氏名が公表されることもないオペレーターたちだ。彼らは、すでに部分的に溶融し放射性物質を放出していると考えられる、危険なまでに露出した燃料棒に海水をかけ、完全なメルトダウン(そうなったら、何千トンという放射性粉じんを大気中にまき散らし何百万もの日本人を危険にさらすだろう)を防ぐために志願したり、任命された人々だ。


 彼らは、火曜日と水曜日、故障した三基の1号機、2号機、3号機の原子炉に、即席の消火ポンプを通して、毎分数百ガロンの海水を必死に送り続けたのだ。政府高官が水曜日に認めた多くの問題の中には、プラント内にまだ別の火災が起きているらしいことや、原子炉を取り囲む格納容器が破裂したかもしれないことを示す様々な証拠があった。その原子炉は3号機だが、放射性物質を含む蒸気を放出しているように見えた。

 作業員たちは、次第に深刻になっていく――おそらく生命にかかわるような――犠牲的な任務をするように求められているのだが、そのことはこれまで暗黙のうちに認められているだけだ:日本の厚労省は、火曜日、作業員の被曝量の法的制限を、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトへと引き上げる予定であることを明らかにしたが、この数値は、アメリカの原子力発電所の労働者にとって許容される最大被曝量の5倍にあたるのである。

 この変更が意味するのは、作業員が今やもっと長時間原発の現場にいることができるということである、と同省は語った。「作業員の健康を考慮するならば、それ以上引き上げるのは考えられないでしょう」と厚生労働副大臣の小宮山洋子は記者会見で述べた。原子力発電所を救うためにもっと多くの作業員が投入されるかもしれないということも示唆された。

 このプラントの運営会社である東京電力は、作業員がどれくらい長く被曝に耐えることになっているかという点も含めて、作業員についてはほとんど何も言及してこなかった。

 東京電力が公表したいくつかの詳細は悲惨なイメージを浮かび上がらせる。地震以来、死亡した作業員5名、様々な理由で負傷した作業員22名、行方不明者2名である。ある作業員は、突然、胸をつかんで立っていられなくなった後で入院し、別の作業員は、破損した原子炉付近で放射線の爆風を受けた後で、治療を施された。3号機の原子炉で起きた水素爆発では11名の作業員が負傷した。

 原子炉の作業員たちは、自分たちの職業が、消防士やエリート戦闘部隊に見られるのと同じ団結力を特徴としているのだと言う。 原子炉の食堂で交わされる会話はしばしば、重大な事故のときに作業員は何をするかという話題になるのだという。

 そこでのコンセンサスは、家族には逃げろと警告を発した後で、自分は最後まで持ち場を離れずにとどまる、ということに常になるのだという。合計して13年の間に3つのアメリカの発電所で幹部作業員を務めたことのあるマイケル・フリードランダーはそう語った。

 「確かに家族の健康と安全は気になるけど、その施設にとどまるのは義務だからね」と彼は言った。「何年もの間、他の連中と訓練を受けたり、交代で勤務したからには、ある種の忠誠心や仲間意識が生まれるものさ」。

 こうした自然に生まれる絆に加えて、日本での職業はアイデンティティーを与え、恩義を植え付け、特に熱心な献身の念を抱かせるのだ。経済的な苦境が続いたせいで、多くの日本人にとって終身雇用を神聖視する考え方は崩れてしまったが、それでも職場は共同体意識を感じさせる強力な源泉であり続けている。フリードランダー氏は、アメリカで同じような事故が起きたら、非常に危険な環境から他のみんなが逃げ去った後でも、間違いなく50人くらいは志願してその場に残るだろうと述べた。しかし、日本人は、個人は集団のために犠牲になるべしと信じるように育てられているのだ。 (前半おわり) 


 原子炉の作業員たちは尋常ではないリスクに直面している。東京電力は、放射線レベルが上昇した火曜日、わずか50名ばかりを現場に残して、故障したプラントから750名の緊急スタッフを避難させた。比較してみると、3基ある現役のGE社製の原子炉に通常かかわる人員は、監督を含み一基当たり10名から12名だという―――このことは、後に残された少人数のクルーたちは、静かで何もない一日に当番になる人数と大差ないことを示しているのだ。
 
 福島第一原発は、汚染の深刻さという点では、チェルノブイリに匹敵するわけではない。ウクライナの原子炉は、1986年に爆発して10日間もの間、大量の放射線をまき散らした。しかし、その原発の作業員たちは一致団結して事に当たった。

 チェ​​ルノブイリに駆けつけた原発従業員や消防士の中には、炎上する原子炉を制御し葬り去ろうと志願した者が沢山いたが、彼らすべてにリスクについての真実が言われたかどうかははっきりしていない。3か月以内に、28名が放射線被曝により死亡した。そのうち19名は、皮膚の大部分が被曝によって焼けただれたことに由来する感染症によって亡くなったと、国連のある科学委員会の最近の報告書が明らかにした。そして106名が、感染症にかかりやすくさせる吐き気や下痢や血球低下などを伴う放射能疾患を発病した。

 その報告書によると、放射能疾患を発病した人々は、後に、他の問題も抱えるようになった。白内障、放射線からのやけどによるはなはだしい傷、白血病や別の血液の癌によって多くのものが死亡した。
 
 チェルノブイリ原発の作業員の中には、福島第一原発で現在測定される値をはるかに上回る高レベルの放射能に曝された者もいた――特に、放射線を含んだ煙の中を、原子炉めがけて消火剤を投下したヘリコプターのパイロットなどがそうだった。

 原子炉付近の放射能は、火曜日に2号機で爆発が起こり4号機で火災が発生した後では、400ミリシーベルトに達したと報じられたが、それ以降は原発の正門では0.6ミリシーベルトもの低い値に低下してしまった。 東京電力も日本の関係省庁も、エンジニアたちが必死になって、金曜日の地震と津波によって破壊された電気系統やポンプや他の機器を修理しようとしている原子炉の建屋内部の放射線レベルについての統計データを何も公表していない。

 しかし、原発の専門家は、原発内部の放射線レベルは正門で計測された数値よりももっと高いだろう、なぜなら原子炉格納容器が放射線が外部に出るのを防いでいるからだ、と述べている。

 専門家によると、原発一帯は今では放射線に汚染されているので、従業員が長時間、原子炉の近くで作業するのは困難になってしまった。 原発の緊急事態の際の手順について専門家が説明してくれたところによると、作業員は、原発の最も損傷を受けた箇所に交代で出たり入ったりを繰り返すことになるようだ。

 原発の高レベルの放射線を示す箇所での作業に関わるとき、作業員たちは一列に並んで、数分間作業に当たり、次の作業員にバトンタッチをするケースもあると、神戸大学都市安全研究センターでかつて教授を務めたこともあるイシバシ・カツヒコは語った。

 東京電力は、原発内に残った50名の作業員の名前やその他の情報を公表することを拒んでいるし、彼らが疲れたり気分が悪くなるときどのようにして気分を和らげてもらっているかについて総務部の幹部が発言したこともないのだ。

 福島第一原発の原子炉で火事と戦い海水を放出している人の中には、日本の自衛隊員や、警察官や消防署員がいる。

 防衛大臣の北沢俊美は、自衛隊の隊員が、4号機の過熱した燃料貯蔵プールに放水するために、東京電力が使えるヘリコプターを飛ばすように招集をかけてもいいと述べた。ところが、同じ日に、原発から約3マイル離れたところに常駐していた原発監視グループのメンバーたちは、18マイル離れた場所に移動してしまった。(当局は後になってヘリコプターを使って原子炉4号機に放水するのは実行できないかもしれないと述べた)。原発の運営者が、福島第一原発の作業員の被曝量を制限しようとしているならば――そして現場で働く50名を補うために数百人のボランティアを招集しようとするつもりならば――、チェルノブイリが何らかの慰めとなる先例を提供してくれるかもしれない。

 事故後のチェルノブイリの現場をクリーンにするために、ソヴィエト連邦は、連邦を構成する共和国の規模におうじた数の作業員を徴集し、被曝を制限するシステムを作り出した。

 「原発周辺の放射能を含んだ廃棄物を一掃し石棺を作り上げるために60万もの人々が送り込まれました」。そう語るのは、先に挙げた研究書の著者で、ヴァンダービルト医学部教授にしてメリーランド州ロックヴィルにある国際疫学研究所の科学部長のジョン・ボイス博士。作業員たちが汚染された区域に送り込まれたのは、ごく限られた期間だけだったのである。

」(おわり)





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。