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失われた家系(いえけい)を求めて、in vain――横横家の巻  [雑感]

 時々たまらなく家系(いえけい)のラーメンが食べたくなる。あの濃厚で、豚骨のエッセンスを凝縮したようなトロ~リとしたスープは何ものにも代えがたい。それは、ラーメン好きの私にとっても新たな「刷り込み(imprinting) 」の経験に等しいものであった。

 もう15年くらい前の話。本牧埠頭の近くにあった信じがたいほど汚い店にたまたま車で立ち寄ったことがあった。移転前の「本牧家」だった。信じがたいほど不潔な店内で、信じがたいほど粗雑なラーメンだったが、一度食べて忘れられない味として長く記憶に残った。その後、知り合いに六角家に連れていってもらったことがあり、その時「家系」というジャンルがあることを知ったのだった。家系が横浜の隠れた文化の一つになっていることも。そして家系の総本山が吉村家であることも。

 さっそく、当時はまだ杉田にあった吉村家にも行ったのだが、当時の吉村家は、もうすでに、土日の昼ともなると数百人の行列は当たり前というほど人気化していた。で、味の方は、とっくに十分すぎるほど劣化していた。もう、家系のラーメン屋としては死んでいた。私は、何度となく行ったが、吉村家で美味いラーメンに出会ったことは一度もなかった。そりゃ、あの行列を相手にしなけりゃならないのだから、どこかで誤魔化すしかないだろう。家系特有の濃厚でトロ~ンとした豚骨スープは、そう簡単に大量に作り出すことは出来ないのだ。だから、濃厚さを犠牲にして、どこかで誤魔化すしかない。横浜駅近辺に移転する前の吉村家はまだ誤魔化す方法をあみだしてはいなかったと思う。移転した後の吉村家の関心は、薄いスープをいかに誤魔化すかという一点に集中していたのだろう。やがて、解法が導き出された。それは、醤油の比率を高めてスープの薄さを誤魔化そうという方法だった。その誤魔化しの戦略が何故か上手くいって、偽物の家系の味が、いつしか、スタンダードになってしまった。六角家系やその他の系列は劣化した味を出し続けて停滞していった。六角家などは見かけ上は系列店を増やし人気化しているような体裁をとっていたが、それは表面だけのことだった。どうも、他の系統のラーメンより、家系は、コンスタントな味を維持するのが難しいようだし、とくに「量をこなす」という要請とは、徹底してそりが合わないらしい。評判の良い店でも、劣化は避けられないように思われる。というか、劣化は評判の良さと正比例しているようなのだ。杉田家の劣化については、すでにこのブログで記事で述べている(http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-01-23 )。最近では、青物横丁の「まこと家」の劣化ぶりが某所で大いに話題になった。たぶん、移転前の吉村家が劣化した時点で、「美味い家系」というものは消滅していたのだ。少なくとも「家系」の良心的な味を伝える店は、とっくの昔に絶滅してしまった。

 というわけで、冒頭に述べた「時々たまらなく家系(いえけい)のラーメンが食べたくなる」という思いは、実現不可能なノスタルジーのようなものだ、ということは判っているのである。判っているのだが、これは「刷り込」まれた子供が、なおも、存在しえない母親を求めるのと同じように、時として探してしまうものなのである。



 ・・・というわけで、長すぎるイントロダクションはこれくらいにして、昨日、最近評判の良さそうな「横横家」にわざわざ行ってきた。小泉元首相の息子(名前忘れた。というか、そもそも覚えていない)が通っていた、そしてラグビーで有名だった関東学院大学の近くである。もっとも、今は春休みの期間だから、学生は見当たらなかったが、大学が始まると、関東学院の学生御用達の店になるのだろうな。





 夕方の5時ごろ入る。半分くらいの入り。店内は、威勢の良すぎる声が飛び交う。こういうのは騒々しいだけで苦手。中盛りを「普通」で頼んだ。





 口コミのサイトの評判をいくつか読んだが、それによると、この店は「吉村家直系」で、スープが濃厚なのが特徴、なのだそうだ。だが、吉村家直系ということは、私には、ああ、あの誤魔化しの系列に連なる店か、という以上のことは意味しない。やはり、予想通り、醤油の味が勝っていた。勝ちすぎていた。それに加えて、この店は、おそらく意図的に、鶏油を少し多めに使っている。鶏ガラを自分で処理してスープを自作すると判ることだが、鶏を多めに使うとスープはドロドロになる。チェーン展開している「天下一品」がそれを売りにしているが、横横家のラーメンは、まるで吉村家の醤油過多の戦略に天下一の戦略を足して二で割ったようなもので、一言で言えば、ドロドロでなおかつ塩分過多のラーメンだった。ここのスープが「濃厚」だと言う人は、スープの濃厚さが何かということがまるで判っていない。ここのスープで濃厚なのは塩分濃度だけだ。

 これが美味いかどうかは、家系を求めて行った私にとっては二の次の問題だった。私が断言できるのは、悲しいかな、ここのラーメンは本来の家系の味とは何の関係もない、ということだけであった。

 





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コメント(1) 

コメント 1

MikS

 いわゆるラオタの低脳なコメントに辟易することが続いたので、そしてそれをわざわざ削除するのも面倒なので、コメントを受けつけるのは停止させていただきます。
by MikS (2012-04-09 01:37) 

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