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ストレスで脳の質量が減少するとき(後半) [海外メディア記事]

 

 ストレスに関する『シュピーゲル』誌の記事の後半部分。男性の精子数の減少にとって重要なのは母親の状態であるということを説いた記事をかつて紹介したことがあるが(http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27-1 )、今回の記事をその説に当てはめるならば、結局のところ母親が蒙っているストレスが子供に悪影響を及ぼし、それが男性の精子数の減少につながる、という因果関係がぼんやり見えてくるのではないかと思われるのである。

 それにしても、かつては聞いたこともなかったがここ十数年ぐらいで顕在化してきた「引きこもり」のような現象も、結局はストレスの増加のために対人関係に対する敏感さが生まれついた環境によって早くから植えつけられた結果である、というふうに説明できるのだろう。そういう意味では、文明病的な側面があるのだろうな、というのがこの記事を読んで私が真っ先に思いついた感想。

 それはともかく、「ストレス」にどう対処すればいいのか? という誰にも多少なりとも切実な問いに対して、この記事が与える答えは、最後の6行の中に与えられているのだろうか? まあ、簡単に言ってくれるなよ、というため息が聞こえてきそうな結論ではあるが。

http://www.spiegel.de/spiegelwissen/0,1518,747304-2,00.html

http://www.spiegel.de/spiegelwissen/0,1518,747304-3,00.html



「 ストレスで脳の質量が減少するとき(後半)

  

  第2部:闘うか逃げるか



 不意に生ずる危険においては、二つの根源的な反応が、時代を超えて有効であることが実証されてきたが、それは闘うか逃げるかという反応である。そして、人間の脳は今日に至るまでそのような反応をするようにプログラム化されている。脳は、神経伝達物質の放出とともに、身体に行動の態勢をとらせることが瞬時にして出来るのである。

 生物学的なストレス反応は、間脳の一領域である視床下部において、副腎皮質ホルモン(CRH)とバソプレシンの放出とともに始まる。警告を発するこれらの物質は、下垂体腺の内に、別の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の放出を促す。ACTHは、血液を通して副腎皮質へと至り、そこでコルチゾールというストレスホルモンの生産を刺激する。副腎髄質では、さらに、アドレナリンとノルアドレナリンという二つのストレスホルモンが形成される。



 全身がプレッシャーに合わせて瞬時に切り替わる

 

  これらのホルモンの共通した働きは、体全体がプレッシャーに合わせて瞬時に切り替わるようにすることである。鼓動が早まり、血圧が急上昇し、体により多くの酸素が行き渡るように、呼吸の速度も早くなる。 肝臓は、筋肉や脳がより多くのエネルギーを消費できるように、糖を供給する。骨格筋に流入する血液が増加する。体を過熱から守るために、汗腺が刺激される。

 戦闘行為において生存率を高めてくれるわけではないものはすべて、戦闘が行われている間は、抑止される。それは、性欲、疲労、飢餓感、消化や免疫システムなどである。膀胱と腸はすぐに空になれというシグナルを受けとる。戦闘や闘争に必要とされない生殖器などの体の部分では、血管は収縮しているのだ。

 ストレスのシステムは、同時に、何かがうまくいかない場合に備えてもいる。感覚を鋭くして痛みの感度を下げるようなホルモンが放出されるのだ。万一負傷した場合、失血死しないように血液が凝固しやすくなったりする。一定量を超えると、脳内のコルチゾールは、CRHとACTHのさらなる放出にブレーキをかける。そうしてストレス反応が低減していくのである。

 こうした生物学的メカニズムは、我々の祖先にとって、マンモスの狩猟やおそいかかるクマとの戦いのような場面で、生死にかかわるような重要性をもっていた――それに今日でも、例えば、とっさに車をよけたり、むかつく発言に対して気の利いた受け答えをするようなときに、そうしたメカニズムは大いに役に立っているのである。

 しかし、まずいことに、ストレスのシステムは、戦いや逃走が問題ではない場合であっても、容易に活性化してしまうものだ。締め切りが近づいているのに、パソコンの空白の画面を凝視しているときや、上司の機嫌が悪いときや、交通渋滞のときにも、ストレスのシステムは活性化する。だから、日常の疲労が続くと、いつかは体がつねに警戒態勢を撮ってしまうようになることもある。問題は、警戒のために供給されるエネルギーは――たとえばジョギングやダンスをすることで、発散でもしない限り――消費されない、ということである。スポーツがストレスに有効なのは、それが、生理的学に見れば、(戦闘と逃走という)あの二つの根源的な反応に等しいからなのである。

 社会の変化や、職場でのプレッシャーの増大や私生活での負担などはすべての人に影響を与えている。しかし、すべての人々がプレッシャーの下で同様の反応をしているわけではないし、すべての人が疲労性のウツ病にいつかはかかるというわけでもない。ストレスのシステムが長期にわたってバランスを崩してしまうのは何故なのだろうか?

 「最終的には、やはり遺伝的要因と環境との相互作用なのです」とエーリッヒ・ザイフリッツは言う。生まれてまだ数日しか経っていない赤ちゃんのストレスに対する反応はまちまちなのである。メリーランド大学の心理学者ネイサン・フォックス(Nathan Fox)の長期におよぶ研究が明らかにしたことだが、おしゃぶりを取り上げられたときに、泣き叫ぶ時間が最も長かった赤ちゃんは、その後の人生においても、ストレスに対する反応がより過敏になる傾向があるのだそうだ。



  第3部:誰も張りつめた脳の犠牲者になる必要はない





(抗うつ剤の処方件数は、年々増加する一方)



 しかし、遺伝的特質は変化することもある――子供がどんな状況で生まれ大きくなったか次第なのだ。環境の影響、ライフスタイル、栄養状態が個々の遺伝子を化学的な規則にしたがってどのように再プログラム化するかという問いに関わる生まれたての研究分野をエピジェネティクスという。メチル基の結合や除去といった、いわゆるメチル化を通して、細胞内で特定の遺伝子の活性が長期的に変化することがあるのである。



 トリアー大学の心理学の教授のヘルハマーは、人生の早い時期に環境によってもたらされた遺伝子の活性化や遮断を、人生の後になって生ずるストレス障害にとっての「断トツに最重要な危険因子」だと見なしている。ヘルハマーの説明によると、出生前および出征後の最初の数年の間に子供の中枢神経は発達するが、その時、子供は、母親のストレスや幼児期の負の環境に反応するのだという。「妊娠が望まれたものだったかどうか、パートナーがいるのかどうか、事故があったかどうか重い病気にかかったかどうか、そういうことも何らかの役割を果たしているように思われます。それに、経済的な苦境や社会的な支援のような不確かな要因も加わります」とヘルハマーは述べる。

 ホルモンの警報システムが、人生のあまりに早い段階から持続的ストレスに合わせて作動すると、それは大人になってからも苦境に対してとくに敏感に反応するのだという。「妊娠の初期・中期・後期の三つの期間すべてにわたって出生前にストレスをうけると、例えば、海馬のコルチゾール受容体の量に影響が出ますし、それによって後々ストレスに弱い体質ができるのです」とヘルハマーは説明した。



 脳の容量が減少する



 ストレスに苦しむ社会では、妊婦もまた大きなプレッシャーのもとにあるので、結果的に、生まれつきストレスに対して特に敏感に反応する子供がますます多く生まれるようになる。大きくなって心が疲れるようなことが多くになると、生まれつきストレスに敏感な子供は、心が耐えられる限界に他の子供よりも速く到達する。それは、時に不吉な結果をもつこともある。「正常でないストレスが長引けば長引くほど、それを元に戻すことは難しくなるのです」と、ベルリンのシャリテ大学病院でストレスを研究しているマズダ・アドリ(Mazda Adli)は警告している。ストレス・ホルモンが高いレベルで持続すると、身体に備わる報酬システムにおいて中心的な役割を果たす神経伝達物質であるドーパミン(「幸福ホルモン」と呼ばれることもある)の生産量が抑えられてしまう。抑うつ性の障害の危険が高まるのである。

 それによってノルアドレナリンの放出にもブレーキがかかってしまうのだが、このことは、注意力や集中する能力に対して負の影響を及ぼす。おまけに、持続的なストレスは、感情制御やうつ状態の成立に重要な役割を果たしているセロトニンという神経伝達物質の放出を低減するのである。

 ニューロンの活動パターンは時間とともに変化する。脳の不安中枢である扁桃状部に過度の刺激を与えてみる。すると、一年経つうちに脳の構造的な変化が生じることさえあるのだ。「海馬や眼窩前頭皮質の中央部のような脳の特定の領域は、感情の処理作業にかかわっているのだが、そうした領域が収縮してしまい、脳全体の容量が減ってしまうのです」とアドリは説明する。

 イスラエルの医師サミュエル・メラメード(Samuel Melamed)とテルアビブ大学の彼のチームは、慢性的なストレスが体にどのような影響を及ぼすかを調べている。被調査者のグループ――様々な分野の1万人を超える職業人だが――のほぼ20パーセントに、臨床的に明らかな疲労の症状があったことを彼らは証明した。

 「そういう人々の血中には炎症を示すバイオマーカーがより多く見つかりますし、脂質やコレステロールの値も高いのです」とメラメド氏は述べた。「これらは、心臓病、脳卒中、糖尿病の古典的な危険因子です」。疲労を抱える人々の悩みとしては、睡眠の問題や頻繁な感染症、胃腸の問題や筋肉、骨、関節の病気などがある。メラメードもまた、負担が長引くと男性の生殖能力が減少することを示すデータを発見したのである。

 とくにストレスの危険にさらされているのは若者たちだ、とイスラエルの研究者は述べた。「多くの若者が慢性的に睡眠不足に陥っているし、若者はストレスに対処するための十分な戦略をまだもつにいたってないことが多いですからね」。



 ストレスの有害な影響は可逆的である



 しかし、科学者たちは希望に満ちたメッセージももっている。それは、誰も張りつめた脳の犠牲者になる必要はない、ということである。ストレスの神経に対する有害な影響は、じゅうぶん可逆的であるらしいからだ。

 では、ストレスに対する十分な戦略とはどのようなものであるのだろうか? 「まず第一にあげられるのは、ありきたりなものですよ」とメラメードは言い、次のように列挙した。「運動、十分な睡眠、バランスの取れた食事、規則的な休息です。それから、特に重要なのは、休暇ですね」。ベルリンのシャリテ大学病院の院長でストレスを研究しているイザベラ・ホイザー(Isabella Heuser)は次のように補足した。「仕事があって、十分な給料をもらって、高い評価を得て安定した感情的ネットワークをもっていれば、誰だって忍耐の幅は広がるでしょう。これらはすべて人間を保護する要因なのです」。

 ホイザーによれば、危険な組み合わせは、高い要求を掲げながら他人にあれこれ決められることなのだという。「服従的な態度に自らを追いやろうとせず、意思表明をして何かを形にしようとすべきなのです」。

 決定的に重要なのは、私たちが自分の人生をどれほどコントロールできているか、という点にあるように思われる。そして、私たちが自分の人生に何らかの意味を与えることができているかどうか、なのである。チューリッヒの精神科医のザイフリッツによると、「否定的な出来事であっても、それを何らかの仕方で自分の人生に組み込むことができる人は、滅多にストレスの病気にかからない」のだそうである。
」(おわり)





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