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良い学習習慣についての常識は忘れろ(1)   [海外メディア記事]

 このブログで何回も取り上げたBenedict Carey氏の『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事を紹介します。(ここで紹介したCarey氏の記事の一覧は下の方に掲げておきます)。

 どうしたら効率的に覚えられるかというテーマをめぐって、これまでの常識は全く間違っていたという最近の心理学の研究結果を伝える記事です。こういうテーマは、多くの人の関心を引くのでしょうね。オンライン上の紙面の右側にある記事の人気を示すベスト10を見ると、このCarey氏の記事がトップにランクされているじゃありませんか。少しびっくりしました。何といっても、ちょっと難しい内容ですからね。

 それはともかく、何かをきちんと覚えようとするためには、狭い勉強部屋で苦悶するより、ドトールやスタバでもはしごして勉強したほうが良い。この記事を単純に考えると、そんな結論を出してかまわないことになりますが、はたしてどうか。少し長いので、2回に分けて紹介します。
 
http://www.nytimes.com/2010/09/07/health/views/07mind.html?src=me&ref=homepage


   い学習習慣について知っていることは忘れろ(1)

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 (新年度が始まる)毎年9月になると、何百万人という親たちが心理学的な魔術とでもいうべきものを試みようとする。つまり、キャンプに行って夏ボケした子供を新学期の学生に変身させる魔術、ゲームの虫と化した子供を本の虫に変身させる魔術を試みるのだ。そんな親たちへのアドバイスは安易でお馴染みのものだ。静かな勉強部屋になるように片づけなさい。学習のスケジュールを守りなさい。目標を設定しなさい。けじめをつけなさい。お金で解決しようとするのはやめなさい(ただし、やむを得ない時は別)。

 それに、新学期の教室をよく観察しなさい。自分のお子さんの学習スタイルは新しい先生のアプローチと合っていますか? 学校の方針に合っていますか? ひょっとして、お子さんは学校に「合っていない」のじゃありませんか?

 こうした提言が幅を利かせるようになったのは、明確な指針を提供してくれるわけでもない大雑把な教育研究のおかげであるのかもしれない。生徒の特徴と教育のスタイルは相互に作用し合うものに違いない。人格と自宅のルールも同様である。ただ困ったことに、それらがどのように相互に作用し合うものであるかは、誰もあらかじめ言うことはできないのである。

 しかし、学習に対する効果的なアプローチ、少なくともやる気のある生徒にとっての効果的なアプローチは存在するのだ。近年、認知科学者たちは、簡単なテクニックで、肝心な点、つまり、勉強からどれほど多くのことを学べるかという点を著しく改善してくれるものが存在することを示したのだ。

 これらの発見は、何ケタもの割り算をしている4年生から新しい外国語を習得しようとしている退職者にいたるまでの誰に対しても有効となりうるものだ。しかし、こうした発見は良い学習習慣に関する常識の多くに真っ向から反するものなので、流行するに至ってないないのである。

 たとえば、1つの勉強場所に固執しないで、単に勉強する部屋を換えてみるだけで記憶量はアップする。また、たった一つのことに集中するよりも、一回の勉強時間の中で、異なっているが関連しているスキルや概念を学ぶほうが記憶量はアップするのである。

 「こうした原則はちょっと前から知られていたのですが、学校がこうした原則を採用していなかったり、試行錯誤しながらその正しさを学ぶ人がいないのは興味深いことです」。そう語るのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で心理学を教えているロバート・A・ビヨルク(Robert A. Bjork)。「何が上手くいくかについては間違った信念だらけですよ」。

 たとえば、子どもにはその子特有の学習スタイルがある、ある子は「視覚型の学習」をし、別の子は聴覚型の学習をする。またある子は「左脳型」の生徒で、別の子は「右脳型」だという考え方を取り上げてみよう。専門誌『公益心理学(Psychological Science in the Public Interest)』に発表された、当該研究に関するレビューで、心理学者たちのあるチームは、このような考え方を支持する証拠はほとんどゼロであることを発見した。「教育界では学習スタイルを重視するアプローチは絶大な人気を博しているが、そのアプローチが有益であることを示す信頼できる証拠は存在しない。このコントラストは、我々の意見では、一目瞭然であり不安を与えるものでもある」。そう研究者たちは結論づけた。

 教える側のスタイルにも同じことが言える、と研究者は言う。優秀な教師の中には、黒板を前にして夏によく上演される『ファルスタッフ』のように跳んだり跳ねたりする人もいれば、しり込みしているように見えるほど遠慮深い人もいる。「建設的な学習の雰囲気を作り出している教師たちの間にどんな共通のつながりがあるのか、まだハッキリしたことは判っていません」。そう語るのは、バージニア大学の心理学者で、『どうして生徒は学校が好きになれないのか(Why Don't Students like School?)』の著者であるダニエル・T.ウィリンガム(Daniel T.Willingham)。

 しかし、個々の学習方法はまた別の問題であり、学習習慣について最も神聖視されているアドバイスの中にもまったく間違っているものがあることを心理学者は発見した。たとえば、学習スキルの講座の多くは、勉強するには特定の場所、勉強部屋や図書館の静かな一角を見つけなさいと学生に説いている。しかしまさに正反対のことが研究によって見い出されたのだ。古典的な1978年の実験では、2つの違う部屋で――1つは窓のない雑然とした部屋、もう1つはモダンで中庭が眺める部屋――40の単語のリストを見た大学生の方が、同じ部屋の中にこもってそれらの単語を2回にわたって見た大学生よりもずっと成績がよかったことを心理学者は発見した。その後の研究も、トッピクスを色々変えながら、この発見が正しいことを確証した。

 脳は、いま学習していることと、そのとき脳がもつ背景の感覚を微妙な形で結びつけるものだ、と上述の研究論文の著者たちは言う。その際、そうした知覚が意識的なものかどうかは関係ない。たとえば、脳は、ヴェルサイユ条約という語を、学生寮の勉強部屋の古びた蛍光灯の光と結びつける。あるいは、マーシャルプランの原理を裏庭のヤナギの木の深緑のカーテンのような色合いと結びつけたりするのだ。実際、同じ素材に対して多様なものを結びつけるように脳に強制すると、その同じ情報に対してより多くの神経的な足場を与えることになるらしいのだ。

 「ここで起こっていると我々が考えるのは、外的な脈絡が変化すると、情報が豊かになるということです。情報が豊かになると忘れる時間を遅らせるのです」。2つの部屋の実験の主任研究者のビョーク博士はそう述べた。

 一定の時間内に勉強の内容を変える方が――たとえば、新しい外国語の語彙を学んで、次に読み取り、その次に会話に移る方が――、一度に一つのスキルだけに集中するよりも、より深い印象を脳に残すようだ。ミュージシャンは昔からそのことを知っていて、彼らは練習ではよく、音階、曲目、リズムの作業を混合させる。運動選手の多くも、規則的に、力、スピード、技術的訓練を練習に混合させるのである。
 
 このアプローチが学習に対してもつ利点は、ある種の分野では、注目すべきものになりうる。専門誌『応用認知心理学(Applied Cognitive Psychology)』に最近オンラインで掲載された研究論文で、南フロリダ大学のダグ・ローラー(Doug Rohrer)とケリー・テイラー(Kelli Taylor)は、小学校4年生のグループに4つの等式(それぞれがプリズムの違う次元を計算するための等式)を教えた。半分の子供たちは、一つの等式の実例を繰り返し学習することで学んでいった。たとえば、底面が何辺であるときプリズムの面はいくつあるかを計算し、そして次のタイプの計算に移り、その実例を繰り返し学ぶということをした。もう半分の子供たちは、一定の混合した問題のセットを学んだのだが、そこには4つのタイプの計算が一つにまとめられたような実例が含まれていた。どちらのグループも、学ぶ途中で、サンプル問題を解いていった。

」(つづく)




補足:これまでこのブログで取り上げたCarey氏の記事:

「敵は友人になれるか」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「感情のない顔」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07
「意識という謎」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-02-20
「抗ウツ剤の効果を巡る論争に決着がつく」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2010-01-07
「フォートフッド事件の容疑者についての錯綜した手がかり」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2009-11-25
「脳とアイデンティティー」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2009-08-11
「無意味は知性を磨く」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2009-10-06
「脳の老化とブリッジ」:
http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2009-05-24-1








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