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意識という謎 [海外メディア記事]

 少し前の『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事ですが(2月5日)、私の好きなBENEDICT CAREY氏が書いたものなので、紹介しておきたいと思います。

 「植物人間」と診断された人の脳をスキャンしてみると、明らかに意識活動の兆候を示す画像が現われたということは、日本の新聞でも取り上げられていました。この発見は、たとえば安楽死の議論に影を落とすことは必至ではないかと思われますが、それと同時に、意識というものの奥深さを改めて私たちに認識させてくれたのではないかとも思われるのです。
 

The Riddle of Consciousness
By BENEDICT CAREY
Published: February 5, 2010
http://www.nytimes.com/2010/02/07/weekinreview/07carey.html

 「 意識という謎


 1.jpg

 
 意識の本質を探求しようとローソクに火を灯した神秘家、哲学者、神学家、そして最近では神経科学者たちは、皆そろいもそろって、単純な前提から出発していた。つまり、意識は、無意識が終わるところで始まるはずだという前提である。

 
 神学者は目覚める前のこの状態を、睡眠、闇、生命の地下室に例えてきた。現代の科学者は睡眠そのものの神経プロセスや覚醒への移行を研究している。また彼らは、視野にあるのに見えていないものを突然意識するときに脳の中で何が起こっているのかを研究してきた。

 これまで、意識を司る脳神経の部位――意識化の「スイッチを入れる」のに不可欠な脳の神経回路――は捕捉されずにきた。


 その理由のひとつは、意識そのものが多様な形をとるからである。目覚まし時計が鳴ってから起き上がるまでの半透明の寝ぼけた状態も意識状態だろうし、会社を出て自宅に続く私道に入ったときにそれまでの30分間の道のりの記憶が何もなかった運転手のように、覚醒していても何も覚えていないような状態も意識状態だからである。


 研究者が深く掘り下げれば掘り下げるほど、秘密の小部屋がますます見つかるようなものである。先週の水曜日、イギリスとベルギーの科学者は、重大な脳の損傷があり、「植物状態」で手の施しようがないと見なされていた5人の人に脳のスキャニングをしたところ、意識があることを強く示唆する活動が見られたことを報告した。そのうちの一人で、5年間にわたって「植物状態」だと考えられていた29歳の男性は、イエスとノーで答える質問に対して、テニスのことを考えるときと家の中を歩き回るときとでは違った脳の活動を示すことによって(それぞれ、脳の運動領域と空間領域が明るくなったのである)、答えたのであった。
    
 意識に通ずる閉ざされたドアの一つが大きく開かれたわけである、それは結構なことだ。だが、その向こう側にはまだ暗い廊下があるのだ。自分の頭蓋骨の中に5年間も生き埋めになった後で、一体どんな意識がその患者に残されていたのか? そのうつろな目の背後で生きているのは誰なのか? 脳をスキャニングする機械にかすかに点滅するピクセルを除いては、まったく活動を停止しているかに見えるこの意識状態に、私たちはどんな名前をつけたらいいのだろうか?

 この研究では、脳に重大な損傷を受けたけれども最低限の意識活動はあると分類された患者――つまり、命令に時折は反応をすることのできる患者――の多くは、質問されてもスキャナー上に意味ある活動を示すことはまったくなかった。こうした患者よりも、スキャナー上に盛んな活動の証拠を示した患者のほうが意識的なのだろうか?

 ニューヨーク-プレスバイテリアン/ウェイル・コーネル病院の医療倫理局の局長ジョセフ・フィンズ博士は次のように語った。「このスキャン技術のおかげで、私たちは診断をこれからも洗練化させることができるでしょうが、それはまた、患者が臨床的に示していることとスキャン画面上に明示していることとが矛盾するようなかつては考えられないようなことも生み出したのです」。

 彼はこう付け加えた。「その人がそこにいるということは判るのですが、どれくらいそこにいるのかが判らないのです」。

 あるいは、そこにあるものが、われわれが覚醒時の意識と呼ぶものとどれくらい関係しているかが、判らないのかもしれない。現代の神経科学の発見が示唆するところによると、脳は高度に社会的な器官である。脳は他者とともにいることを十二分に享受するものなので、脳が発達して、気分を調節したり、問題を解いたり、脅迫に反応したりするためには他者との関わりが必要なのである。人が孤立しているとき、その人の脳波は減速する。囚人は、トラウマを抱えて引きこもることもしばしばある。あの、「植物人間」と誤って診断された人々は、戦争捕虜には判らないような孤独な監禁の苦しみを味わっているのだ。その人々の意識状態も――特に、脳の中の損傷を受けた細胞から考えてみると――一日を通してかなり波があるだろうし、患者ごとに違っているのかもしれない。

 医師たちは、脳のスイッチが入って明るくなるのはいかにしてかを知る前に、スイッチが切れて暗くなるとき何が起こっているのかについて多くを学ばなければならないのかもしれない」。



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