So-net無料ブログ作成
検索選択
ブログパーツ

エンケうつ病に勝てず [海外メディア記事]

  サッカードイツ代表ゴールキーパーロベルト・エンケが電車に飛び込んで自殺したというニュースは、またたく間にドイツ中を駈け巡り、ベルリンの壁崩壊から20周年なんて話題はどっかに消えてしまったかのようです。
 
  もっとも、私はサッカーに詳しいわけではなく、エンケの名前も知らなかったのですが、この有名人の自殺が『シュピーゲル』誌の科学欄で扱われたことに興味を持ったので紹介するしだいです。

  写真を三枚紹介します。順に、哀悼するファン、遺影、会見でのエンケ夫人。とくに、エンケ夫人は記者会見で的確な受け答えをして、その実直な態度は多くの人に感銘を与えたとか。写真にうつるその表情はとても深いものを感じさせます。


1.jpg


Wenn die Seele gefangen ist
Von Jens Lubbadeh
http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/0,1518,660747,00.html


 
「 心が不自由になるとき 
 
 ロベルト・エンケはうつ病を患っていた――タブー視される病気である。約5人に1人のドイツ人がうつ病にかかっている。成功をおさめ幸福と思われている人間でも人生を投げ捨てることはある。特に、自分自身への要求が高い人ほど危険なのである。





 ロベルト・エンケが自殺した。彼には娘が一人いて、結婚し成功したスポーツ選手だった。来年彼は、南アフリカで開催されるワールドカップのドイツチームのゴールを守るはずだった。

 すべてを手に入れた人が、32歳で人生を終わらせるのは何故か? 「エンケは(自殺の)要注意人物の典型というわけではありませんね」。そう言うのはチュービンゲン大学の心理学者アンゲリカ・シュラープ。男性の場合、55歳以上、独身、うつ病の通院歴ありが、自殺の要注意人物の典型なのだという。 うつ病にかからない人はいない、すべてを手に入れたように見える人であってもそうである。「誰の身に降りかかってもおかしくはありません」とシュラープは言う。ドイツうつ病救援財団(Stiftung Deutsche Depressionshilfe)の調べでは、ドイツ全体で、約400万人が治療を要するうつ病にかかっている。5人に1人は、一生に一度はうつ病にかかるのである。シュラープによると、自分自身に対する要求が高く批判的な姿勢を貫く人がうつになりやすいのだという。死、離別、失職のようなつらい経験をすると、頑強に見える人でも人生のコースが狂ってしまうことがある。



 「それは全人生を賭けたようなものだった」


 ロベルト・エンケの人生にもつらい経験はあった。3年前、心臓病だった娘のララがわずか二歳で亡くなった。エンケと彼の妻は後にとある少女を養女にむかえた。かかりつけの医師は、エンケがうつ病で苦しんでいたと証言した。2003年、彼は、何をやってもうまくいかないと言って、治療のために医師のもとを初めて訪れたという。

 トップのスポーツ選手は成績にとても敏感である――ミスをする度ごとに、ありとあらゆるところから批判が雹(ひょう)のように降ってくる。「サッカーは彼のすべてでした」とエンケ夫人は水曜日の記者会見で述べた。プロとして下り坂にあることも乗り切らなければならなかった。「私が歩いてきた谷はとても険しかった。5回や6回つかみ損なったらゴールキーパーならだれでも危機感を持つだろうが、そんな危機ではなかった。全人生を賭けるようなものだった」と、エンケは2008年にサッカー専門誌“11 Freunde”に語っていた。



2.JPG


 うつ病を抱える優れたトップ・プレイヤーはエンケだけではなかった。セバスチャン・ダイスラーもそうだった。FCバイエルンのかつての顔だったダイスラーは何年もの間重度のうつ病だった。2003年、彼はそのことを公表した。「もうそれ以外に手立てはなかった」。ダイスラーは最近『ツァイト』紙とのインタビューでそう語った。「クリニックでは誰とも会いたくなかった。自分の親ともね。病気だったんだから」。


 大きなプレッシャー、常につきまとう世間の目、キャリアの喪失に対する不安などのために、トッププレイヤーはうつ病と正しく付き合うことが困難である。キャリアのためなら、彼らは喜んで大きな犠牲を払うでしょうね、とシュラープは言う。それで多くの障害が生じるので考え方自体が歪んでしまうこともしばしばある。「彼らは、こうした苦しい状態が普通なのだ、そうでなければならないのだと考えてしまうのです」とシュラープは言う。


 『シュテルン』誌でダイスラーはこの現象を次のように記している。「自分にはあらゆることに対する責任があるように感じられたので、心身が発するシグナルに耳を傾けられなかった」。大きな成果をあげよという要求と自分自身に対するとても批判的な態度と――ダイスラーは自分の期待と世間の期待との間にはさまれて文字通り粉々になった状況を述べている。「悪循環に陥っていた。一方では、自分の才能があって、世間の希望や期待を満たしたい、満たさなければという要求や願望があり、他方で本当は何もできないという事実があった。私は病的なまでの野心を築き上げていた。他方で、それを支えることができるような土台が私には欠けていた」。ついに27歳で、彼はサッカー選手としてのキャリアを終えた。


  うつはまだ依然としてタブーの話題


 エンケはダイスラーと違ってうつ病のことを公表しなかった。その理由のひとつは、養女にした娘の養育権を喪失するのではという懸念だった、と妻は語った。遺書の中で、エンケは親類や医師に対して、自分の本当の状態について思い違いをさせたことを弁解していた。


3.jpg


 自分がうつ病であると語るのを難しいと思うのは有名人だけではない。この病気は、高い発病者数にもかかわらず、やはりまだタブーの話題なのである。うつ病者の周囲にいる人々は、しばしば、無理解な反応をしたり、ある程度時間がすぎると神経を逆なでしたり攻撃的な反応をしたりすることすらある。「うつ病の人は、「とにかく、しっかりしなさい」という小言をよく言われますね」とシュラープは言う。「でも、うつ病がタブーなのは社会においてというよりも、職業人としての生活においてです」。その理由は、うつ病の人は耐性が低く、ストレスに対する抵抗力も弱く、したがって作業能力も低いと見なされるからだという。だから、その点には誰も触れない。自分の職場がなくなるかもしれないという不安で多くの人々が浮き足立っているこの危機の時代では、なおさら話題にならない。うつ病は、ドイツの失業の最大の原因の一つに数えられているのである。
 
 自力でうつを克服することは、当事者にとってとても難しい。ダイスラーは『シュテルン』誌に次のように記している。「かなり良くなった日があったかと思うと、翌日には何もかも悪化していた。この病気が夜の闇の中で力を盛り返したように私には思えた。調子の良い日でもうつの名残が戻ってきはしないかと不安でならなかった」。うつのおかげで生きる喜びはすべてなくなってしまった、とダイスラーは言う。「うつのおかげで、私は内面が空虚で打ちひしがれたような感情に捉われていた」。

 ダイスラーは良い時期に助けを求め、彼は救われた。自殺をする多くの人も、誰かがタイミングよく手助けしてくれたなら、助かっていたかもしれない。ドイツの1万人の自殺者や15万人の自殺未遂者の大部分は、おそらく治療されなかった(あるいは最善の治療をされなかった)うつ病にその原因を求めることができる、とドイツうつ病救援財団は書いている。しかし、エンケの医師は彼を自殺の危険なしと判定していた。エンケは自殺をなるべく考えないようにしていたのである。


 自殺するのは女性より男性のほうが多い


 実際、自殺を予見するのは心理学者でもしばしば非常に難しい。ドイツ自殺予防協会によると、原則的に言って、うつ病を抱えているすべての人にとって自殺の危険性は高く、とくに治癒の見込みがなく重度である場合には、とくに危険性は高いという。しかし、ある人が特に自殺の危険があるということを、心理学者は何によって判るのだろうか? よく読まれている心理学の専門書では、エルヴィン・リンゲル(1921~1994:オーストリアの精神科・神経科の専門医で自殺というテーマの標準的な著作の著者)の説が記されている。


 リンゲルは「自殺前の徴候」という概念を編み出したのだが、その徴候にはそれならではの特徴がいくつかあるという。たとえば、当事者には選択の可能性というものがもはや目に入らなくなることや、外に表われる感情がどうしようもない無意味なものに見えることなどである。他方で、現実にはかなわないという感情が強くなる。当事者は、死に対する思いがますます重要になるニセの世界を構築する。自殺を考えることは警告のシグナルです、とシュラープは言う。「行動が具体的になっているなら、特にそうです」。


 とはいっても、リンゲルのそれのような診断の道具を適用したからといって、当事者を自殺から思いとどまらせることができる保証にはならない。とくに男性はそうだという。ドイツ連邦統計局によると、自殺者は男性が女性の3倍も多いという。おまけに、男性は専門家の助けを女性ほど利用しない、とシュラープは言う。しかも男性はしばしば劇的な自殺を選んでしまう。ロベルト・エンケの例はそのことを裏書きしたのである」。









nice!(2)  コメント(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 2

コメント 1

mikomai

こんばんは♪
このニュースは知らなかったので、驚きました。
うつ病も、まさに死に至る病のひとつですね。
by mikomai (2009-11-13 23:12) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました