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レイプ、殺人、浮気を進化論的に考える(1) [海外メディア記事]

  「なぜわれわれはレイプ、殺人、浮気をするのか? 」という刺激的なタイトルで発表された『ニューズウィーク』誌の長大な論文を紹介します。社会生物学からもちこされた論点が、少し視点を変えながら今日までも論争の的になり続けている様子が、興味深く描かれています(もっとも、このトピックスに馴染みがない人には難しく見えるかもしれませんが、判らないところは適当に飛ばしながら読んでも、論点は伝わると思います)。3~4回に分けてお伝えします。

 ちなみに、この記事を書いているSharon Begleyという人、科学ジャーナリストかと思いきや(専門的な本が翻訳されています)、単なる(?)編集記者のようです。科学の領域がバックボーンにあるみたいですが、『ウォールストリート・ジャーナル』に籍を置いていたこともあるという。向こうのジャーナリズムは、やはり、懐が深い。(Begleyの人となりについては、http://www.newsweek.com/id/32249)。


By Sharon Begley | NEWSWEEK Published Jun 20, 2009
http://www.newsweek.com/id/202789


「 この春ニュー・メキシコ大学に集まった科学者の間ではレイプの話題でもちきりだった。出席していた教授の一人、生物学者のランディ・ソーンヒルが、共同著者の一人として、『レイプの博物学:性の強制の生物学的基盤』を出版したばかりであったからであり、その本はレイプが(進化生物学の言葉で言えば)一つの適応であって、その形質が遺伝子によってコード化され、その遺伝子を所有するものにはアドバンテージが与えられる、と主張しているからであった。10万年前の更新世末期にさかのぼってみると、レイプ遺伝子をもっている男性は、レイプ遺伝子をもっていない男性に対して、繁殖の点でも進化の点でも優位性をもっていたというのである。それらの男性は、望む相手と子供を作っただけでなく、望まない相手とも子供を作ることによって、より多くの子孫(それらもレイプ遺伝子をもっている)をもつようになり、それらの子孫も、同様に、レイプ遺伝子をもたないヒトよりも生き延び子孫を多く残す確率が高かっただろうし、そしてこのプロセスがn世代くり返されて、今のわれわれがあるというわけである。だからわれわれは今日レイプ遺伝子をもっている。レイプ遺伝子を欠いた先史時代の男性の系図はジリ貧の道をたどりやがて消滅してしまった、というわけである。


 この議論は、進化心理学の枠内にもうまく収まるものである。社会生物学の廃墟の跡に1980年代の終わりに創始されたこの学問分野は、現在のヒトが進化の途上にあった時代に適応上のアドバンテージを与えた行動は、脳の中であらかじめプログラム化された遺伝的に基礎づけられた何百という認知的な「モジュール」の結果であると主張する。こうしたモジュールとそれがコード化する行動は、遺伝的なものであるから、相続されうる――未来の世代に継承されうる――し、マンハッタンのナイトクラブからアーミッシュの農場にいたるまで、ニューギニアの原住民の掘っ立て小屋からカラチのイスラム神学校にいたるまでの人々の考え方、感じ方、行動の仕方を規定する普遍的な人間本性を構成している、というのである。進化心理学者は、当然ながら、タイムマシーンを持っているわけではない。だから、どんな形質が石器時代の間に適応上のアドバンテージになり、ゆえに疑わしい家法のようにわれわれに伝えられたのかを理解するために、彼らは論理的な推論をする。当時、見境なく性交をした男性の方が進化論的適応度は上だっただろう、なぜなら種を広く蒔いた男性の方がより多くの子孫を残しただろうから、と研究者は推論した。同様の論理で、進化心理学者によれば、一夫一婦的な女性の方がより適応度は上だった。相手に関して選り好みをして、好ましい遺伝子をもつ相手だけを選ぶことで、女性はより健康的な子供をもつことができた。若く、体が魅力的な女性に惹かれる男性の方がより適応度は上だった。そうした女性はもっとも多産であるからだった。みすぼらしい、不妊の女性の相手をすることは、大きな家系図を生み出す良い方法ではない。身分が高い、裕福な男性に惹かれる女性の方が適応度は上だった。そうした男性は子供たちに最善の備えを提供してくれ、子供たちは、飢えを免れ、成長してたくさんの子供を生んでくれるからである。義理の子供を無視したり殺したりする(不実な妻を殺す)男性は、親族でもないものに自らの資源を浪費することがないので、より大きな適応度をもっていた。こうして話を広げていけば、レイプの適応度を高める価値に行きつわけである。21世紀のわれわれは、石器時代の心をもって活動しているのだ、と進化心理学者は主張する。


 何年もの間、こうした論証は、進化心理学は根拠薄弱で、そこから発せられるメッセージ(ノーザン・イリノイ大学の哲学者デイヴィッド・バトラーが、凶悪な行動に対する「刑務所釈放カード」と呼ぶもの)は有害であると考える多くの批評家の関心を引き寄せてきた。しかし今回のレイプ本に対する反応はまったく次元の違ったものだった。スタンフォード大学の生物学者ジョアン・ラフガーデンは、その本を「進化心理学者が犯罪行動に対して行った最新の「進化のせいで俺はそれをやったんだ」的な弁明」と呼んだ。フェミニスト、性犯罪の訴追者や社会科学者たちは、集会やテレビや新聞でこの本を弾劾したのである。


 この春にもちあがったレイプ論争に関わった人に人類学者のキム・ヒルがいる。彼は、当時はニュー・メキシコ大学でソーンヒルの同僚だったが現在はアリゾナ州立大学に所属している。ヒルは、何十年もの間、パラグアイの狩猟採取民であるアチェ族を研究してきた。「しょっちゅうソーンヒルとは会ってましたよ」。4月のアリゾナ州立大学での会議で、ヒルは私にそう語った。「レイプは特殊な認識上の適応行動だと自分は思うと彼はずっと言ってましたが、それを示す論証は、進化心理学者の手によるずさんな思考のように見えました」。しかし、レイプが人間の適応度を高めたという主張は、どうしたら検証できるのか?構想され始めたときから、進化心理学は、10万年前には進化論的に優位をもたらした行動(たとえば、甘党であること)は、今日ではサバイバルにとって悪しきことであるかもしれない(肥満を、したがって不妊を引き起こすかもしれない)と警告していた。だから、その形質が、今日、人々を進化論的により良く適応させてくれるものであるかどうかを考えてもまったく意味がない。かりに今日はそうでなくても、その形質はずっと前は適応度を高めるものだったかもしれないし、したがって今でも私たちの遺伝的な遺産の一つなのかもしれない、と進化心理学者たちは主張する。不幸な遺産であるだろうが、私たちが受け継いだ遺産であることに変わりがない。タイムマシーンがないかぎり、この仮説を反証することは不可能である。ゲーム・セット、進化心理学の勝ち。


 あるいは、そう思われたのだが、ヒルにはタイムマシーンとほぼ同様のものがあった。彼には、10万年前のヒトと同じような暮らし方をしているアチェ族がいた。ヒルと彼の二人の同僚は、レイプが25歳のアチェ族の人の進化の見通しにどれくらい影響を及ぼすかを計算した。(アチェ族にはレイプは見られなかったが、たとえば、ある特定の日に女性が身ごもることができる確率の測定に基づく場合分けの計算をしたのである)。科学者たちは、適応としてのレイプという主張に寛大で、現実には10歳にも満たない少女や60歳以上の女性もレイプの被害者になるものだが、レイプ実行者は子供が生める年齢の女性だけをターゲットにすると仮定した。そして彼らはレイプの適応度のコストと便益を計算した。もし被害者の夫や他の親戚がレイプ犯を殺すならば、レイプをすることで適応ポイントは失われる。また、もし母親がレイプによって生まれた子供の養育を拒んだり、レイプ犯として知られる(小さい狩猟採集の部族では、レイプやレイプ犯は皆が知っていることである)ために、レイプ犯が食料を見つけるのを他者が手助けしてくれる可能性は低くなるならば、レイプ犯は適応ポイントを失う。レイプの被害者は子供を生むことができるという確率(15%)、被害者が妊娠する確率(7%)、被害者が流産しない確率(90%)、そして被害者がレイプの子であっても赤ん坊を死なせない確率(90%)、これらの確率に基づくならば、レイプは男性の進化の適応度を高める、という結果になった。ヒルは、次に、レイプの生殖上のコストと便益にその数字を当てはめた。すると接戦にすらならなかった。コストが便益を10倍も上回ったのである。「これを見る限り、レイプが進化における適応の一例であるという見込みはきわめて低いものになりました」とヒルは言う。「更新世の男性であってもレイプを生殖の戦略として用いるのは意味をなさなかったでしょう。だからそれが私たちの遺伝子にプログラム化されて伝わっているという議論は成り立ちません」。


 最近は進化心理学者にとっては旗色が良くないようである。ここ何年もの間、最も声高に批判を繰り広げたのは、人間はレイプをしたり、不実な恋人を殺したり等々のことをするよう予めプログラム化されているのだという議論に憤慨した社会科学者、フェミニスト、リベラル派の人々であった。(これは、1970年代から80年代にかけてのあの激しかった社会生物学論争の蒸し返しだった。ハーバード大学の生物学者エドワード・O・ウィルソンが生物学的に基礎づけられた人間の本性が存在する、そしてその中には軍国主義や男の女性支配が含まれると提唱したとき、左翼の活動家――ウィルソンがいた学部のすぐれた生物学者も含む――は、「階級、人種、性別にしたがって、現状や、ある種の集団に対して現在与えられている特権の遺伝的正当化を提供する」試み、ナチスの優生学にも似た試みとして、ウィルソンの提案を攻撃したのである)。ソーンヒルが「トゥデイ・ショウ(Today Show)」に出演して自分のレイプ本について語ったとき、彼は性犯罪の訴追者とペアにされて登場したのだが、この演出は、正義感を振りかざす人ならば彼のテーゼが好きになれないだろうという印象を与えはしたが、そうした扱いがどれほど科学的に健全ではないかという点には暗示的にも触れずじまだったのである」(つづく)。
 











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コメント 1

Blue blossom

私も進化論の妥当性を信じる者です。
進化論での人間社会学的な発展性を考察してみました。
人間が進化の過程で、社会構造も適者生存的な選択を
歴史的に追及していると捉える事が出来ます。
それで社会構成の中で、殺人者や犯罪者も人口密度に合わせ、
最小の確率的分布で必要構成要因であることが認められます。
人類歴史がそれを証明しています。
進化の過程で殺人者や犯罪者の社会構造の必要構成員としての
意味合いは、人口の間引き作用として必要性を担っていると
考察できます。人口増加の抑制作用を担う社会的要請が犯罪者で
あり、殺人者です。
我々の倫理観の範疇の外で、遺伝的進化の淘汰性は全く別の手法で
社会構造を追求していると捉える事が出来ます。
進化論の正当性が増すごとに、犯罪者の存在の正当性も妥当なもの
になります。

by Blue blossom (2010-03-10 04:18) 

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