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カフカのアフォリズム(1) [探求]

 カフカのアフォリズムを、手近なところに見通しやすい形で置いておきたいと思った。カフカ晩年の成熟した洞察を表わす言葉の数々である。これらの言葉は、いつも身近にあってほしいと願う言葉ではないし、むしろこちらからの働きかけを拒むような言葉ばかりなのだが、それでも折に触れて立ち戻ったり、自分の考えをそこに加えたりしていければと思っている。だから、これはずっと続いていくプロセスである。少しずつ書き足していって、いずれまとまった形に手直ししたいと思っている。



1
 「真の道は、空中の高いところではなく、地面すれすれのところに張り巡らされているロープの上を通っている。それはきっと、歩いて渡るためのものというより、つまづかせるためのものであるようだ」。

 Der wahre Weg geht über ein Seil, das nicht in der Höhe gespannt ist, sondern knapp über dem Boden. Es scheint mehr bestimmt stolpern zu machen, als begangen zu werden.


2
 「人間の誤りはすべて性急さである。方法的な事柄を早めに打ち切ったり、見かけ上のものを見かけだけ囲ったりすることなどである」。

 Alle menschlichen Fehler sind Ungeduld, ein vorzeitiges Abbrechen des Methodischen, ein scheinbares Einpfahlen der scheinbaren Sache.

 **カフカの文章で「方法」という言葉に出くわすのは少し意外な感じ。残念ながら、Einpfahlenという語がどういう状況を念頭に置かれて選ばれたのかは不明。

3

「人間の大罪には二つあって、他の大罪はそこから導き出される。つまり性急さと投げやりという大罪である。性急さのために、人間は楽園から追放された、投げやりのために彼らは戻らない。おそらく一つの大罪があるだけなのだろう。性急さという大罪だけがあるだけなのだろう。性急さのために追放され、性急さのために戻らないのである」。

Es gibt zwei menschliche Hauptsünden, aus welchen sich alle andern ableiten: Ungeduld und Lässigkeit. Wegen der Ungeduld sind sie aus dem Paradiese vertrieben worden, wegen der Lässigkeit kehren sie nicht zurück. Vielleicht aber gibt es nur eine Hauptsünde: die Ungeduld. Wegen der Ungeduld sind sie vertrieben worden, wegen der Ungeduld kehren sie nicht zurück.*

  *原文における*の印は、その断章が鉛筆で抹消されたことを示す。以下同様。
 
  **モ-リス・ブランショの記念すべき『カフカ論』でキー概念として利用された箇所である。だが実はここは、カフカ自身は鉛筆で消した箇所である。ということは、何か意に染まぬものがあったのは確か。それは何か?


4

「死んだ者たちの多くの影は、死の河の滔々と流れる水をなめることだけにしか関心をもたない。なぜなら、その河はわれわれ生者のところより発し、われわれ生者の海の塩辛さをまだもっているからだ。すると不快になった河は逆らい、逆流し死者たちを生へと押し戻す。死者たちは喜び、感謝の唄を歌い、逆流した河を撫でてやる」。

Viele Schatten der Abgeschiedenen beschaftigen sich nur damit die Fluten des Totenflüsses zu belecken, weil er von uns herkommt und noch den salzigen Geschmack unserer Meere hat. Vor Ekel straubt sich dann der Flus, nimmt eine rückläufige Strömung und schwemmt die Toten ins Leben zurück. Sie aber sind glücklich, singen Danklieder und streicheln den Emporten.


5

「ある一点をこえるともう戻る道はない。そのような点に到達すべきなのだ」。

Von einem gewissen Punkt an gibt es keine Rückkehr mehr. Dieser Punkt ist zu erreichen.

6

 「人間の発展にとっての決定的瞬間はたえず存在する。それゆえ、それまでのすべてを無に等しいとする精神の革命的運動は正しい、なぜなら、まだ何も起こってはいないからである」。

 Der entscheidende Augenblick der menschlichen Entwicklung ist immerwährend. Darum sind die
revolutionären geistigen Bewegungen, welche alles frühere für nichtig erklären, im Recht, denn es ist noch nichts geschehn.


7
 「悪のもっとも有効な誘惑の手段の一つは闘いに呼び出すことである。その闘いは、ベッドで終わる女性との戦いのようだ」。

 Eines der wirksamsten Verführungsmittel des Bösen ist die Aufforderung zum Kämpf. Er ist wie der Kämpf mit Frauen, der im Bett endet.*




8/9
 「悪臭のするメス犬、子供を何匹も産んだメス犬、もうところどころが腐っているのだが、子供の頃の私にはかけがえのないものだったし、今でも忠実な気持ちからたえず私の後をついてきて、私は我慢できずについ殴ってしまうこともあるのだが、しかし私はその息づかいにびくついて、一歩一歩後ずさりし、私が手をこまねいていると、犬は私をもう見えている隅の壁のところまで追いやろうとするだろう。そこで、私の上で、私と一緒にすっかり腐敗してしまい、遂には―これこそ私の栄光というものではないだろうか?―膿や蛆だらけの舌を私の手に載せるために」。

 Eine stinkende Hundin, reichliche Kindergebarerin, stellenweise schon faulend, die aber in meiner Kindheit mir alles war, die in Treue unaufhörlich mir folgt, die ich zu schlagen mich nicht überwinden kann, vor der ich aber, selbst ihren Atem scheuend, schrittweise nach rückwarts weiche und die mich doch, wenn ich mich nicht anders entscheide, in den schon sichtbaren Mauerwinkel drängen wird, um dort auf mir und mit mir ganzlich zu verwesen, bis zum Ende - ehrt es mich? - das Eiter- und Wurm-Fleisch ihrer Zunge an meiner Hand.

**最期の箇所は文法的に不完全で、時制も入り乱れている。文字通り読めば、すっかり腐敗した後に舌を手に載せるという順番になってしまって、理屈に合わないわけだが・・・


10
 「A.はとてもうぬぼれており、善においてはるかに進んでしまったと信じているが、それというのも、彼は、ますます誘惑的になっていく対象として、これまでの彼にはまったく知られていなかった方面からのますます多くの誘惑にさらされていると感じるからである。しかし、大いなる悪魔が彼の内に住みついてしまい、もっと弱小の悪魔が、大いなる悪魔に仕えるために、無数にやって来たというのが正しい説明である」。
 A. ist sehr aufgeblasen, er glaubt im Guten weit vorgeschritten zu sein, da er, offenbar als ein immer verlockenderer Gegenstand immer mehr Versuchungen aus ihm bisher ganz unbekannten Richtungen sich ausgesetzt fühlt. Die richtige Erklärung ist aber die, das ein groser Teufel in ihm Platz genommen hat und die Unzahl der Kleineren herbeikommt, um dem Grosen zu dienen.

** A.は従来「アブラハム」と読まれてきた。まあ、多分そうなのだろう。しかし、アブラハムと悪魔という取り合わせは、正直に言って、とても難しい。








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