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生殖医療という名の産業 [海外メディア記事]

 8つ子誕生のニュースは日本でも報道されましたが、『ニューヨーク・タイムズ』が詳しく伝えているので、訳を載せておきます。さすがに興味本位の内容にはなってませんね(当たり前か)。
 http://www.nytimes.com/2009/02/12/health/12ivf.html?ref=health

 8つ子を産んだ女性には何かと批判が多く、風当たりが強いようですが、その背景には競争に勝ち抜こうとして手段を選ばない医師の存在があり、優性学的技術に規制がかけられず放任されているアメリカの風土があります(保守主義者は、中絶にはあれほど敏感に反応するくせに、なぜ優性的な生殖技術は騒がないんでしょうか? ともに「神の摂理」に反することじゃないですか?)。医師たちも、そうした風土と激しい競争と子供を持ちたいというあくなき欲望の犠牲者なのでは? と疑問に思います。
 
 日本でも、不妊治療は、静かに浸透しているようです。街中で2人用、3人用のベビーカーを目にするたびに、そのことを実感します。アメリカで起こることは、遠からず、日本でも起こるにちがいありません。
 
 


「 8つ子の誕生で不妊治療のクリニックに注目が集まる


カリフォルニア州モンテベロ ティエン・C・シュー医師のオフィスには、彼の治療の記念碑とも言うべき、子供の写真が飾られている。

 「笑っているこの3人の兄弟は、研究所で最初に誕生した、親は日本人とアメリカ人の3つ子で、頑丈そうに見えるこの4つ子は、精子を注射針で母親の卵子にし注入した後うまれたんです」とシュー医師は言う。

 家族を得ようとシュー医師を頼りにやってくるカップルにとって、赤ん坊は特別の贈り物である。しかし政府と不妊治療の産業にとって、そうした多胎出産はシステムの崩壊のように思われ始めたのである。カリフォルニア州の女性、ナディア・スールマンはすでに体外受精の方法で6人の子供を妊娠したことがあったのだが、先月当地で8つ子を産んでからというもの、この多胎出産という問題がふたたび脚光を浴びるようになった。
 
 体外受精のほとんど3分の1は双子か3つ子以上である。政府は、専門機関とともに、不妊治療の医師に、多胎出産にともなう健康への悪影響の例―幼児の高い死亡率、低体重児、長期にわたる障害や何千ドルにおよぶ医療ケア-を引き合いに出して、多胎出産の数を減らすよう働きかけてきた。
 
 不妊治療を行う医師の団体であるアメリカ再生医療協会は、35歳以下の女性には子宮に戻す受精卵は1つに限る、そして特別な場合を除けば2つ以上の受精卵を戻すことはしないように定めたガイドラインを採択した。ガイドラインは、35歳以上の女性には2つ以上、最大5つまで受精卵を戻していいことを認めている。

 しかし、合衆国はこうしたガイドラインを守らせる法律をもっていない。疾病管理・予防センターには、不妊治療を行っているクリニックについてのデータを収集する監視システムがあるが、データの報告は自発的なものであって、報告しないクリニックに対して政府が処罰を下すということはない。

 専門家によれば、その結果、多くの医師が、妊娠の可能性を高めるために多すぎる受精卵を子宮に戻している。疾病管理・予防センターの2006年のデータによれば、合衆国でなされた体外受精で、1つの受精卵しか用いなかったケースはわずか11パーセントしかなかった。
 多くの場合、たった1つの受精卵を子宮に戻すほうが、たとえそのプロセスが繰り返されなければならないとしても、多胎出産のリスクを考えるならば健全である、と2008年のガイドラインは述べている。スールマンさんの場合、カリフォルニアの医師会は、通常受け入れられている診療基準が破られたかどうかを見定めるため、スールマンさんの不妊治療にあたったマイケル・M・カムラーヴァ医師を調査中である、と述べた。NBCニュースとのインタビューで、スールマンさん(33歳)は、カムラーヴァ医師が6つの受精卵を子宮に戻し、そのうちの2つが分割して双子になったため、8つ子という結果になったと語った。
 
 「彼女はたくさん子供がほしかったのでしょうね」とシュー医師は述べ、かつて自分はスールマンさんの治療にあたったことがあると付け加えたが、詳細を話してはくれなかった。

 多胎出産の率を減らす努力は、また、この産業における葛藤の源でもあった。
 
 対外受精は1サイクル1万2千ドルかかる。初めての試みでうまくいかなかった女性は、しばしば何度も試みるものだが、そのために、子供を1人得るコストが10万ドル以上に達することもある。この技術は保険によってカヴァーされていないことがあるので、医師たちは、受精卵をもっと増やしてと、患者から絶えず迫られるのだという。

 体外受精の試みをする余裕が1回しかなかった看護婦は、シュー博士に8つの受精卵を子宮に戻してほしいと言い張った。シュー医師の記憶によれば「条件が一つあります、と私は言いました。場合によっては、選択的減数手術を受けるという同意書にサインさせたのです」。いくつかの受精卵がもし生きていたら、それを除去するという同意書は、実施することは難しかっただろう。しかし結局、同意書は効を奏した。生き残った受精卵は1つだけで、その女性は元気な男の子を産みましたよ、と彼は言った。

 シュー医師によれば、8つもの受精卵を戻すような状況は稀なケースだそうで、「多胎妊娠を作り出そうとする医師がいるとは思いません」と付言した。
 
 スールマンさんには、いま、体外受精で生まれた子供が14人いる。NBCのインタビューで、自分が治療を受けたクリニックは、カリフォルニア州、ビヴァリー・ヒルズにある西海岸IVFクリニックであると明かしたが、それはカムラーヴァ医師が経営するクリニックである。カムラーヴァ医師は、コメントを求める電話に応えていない。

 スールマンさんは、インタビューで、多胎出産のリスクは知っていたけれど、利用できる受精卵はみんな使いたかったと述べた。
 
 不妊治療には、女性の卵巣から卵子を取り除き、研究室でそれを精子と結合させ、それによって生ずる受精卵を女性の子宮に移植するという手続きが含まれる(卵子がドナーに由来する場合もある)。移植される受精卵の数は、しばしば医師個人の判断にまかされのだが、それによって妊娠の結果ががらりと変わることもある。

 「受精卵の移植について私たちが下すどんな決断だってつらい決断なんです」と述べるのは、南カリフォルニアに本拠をおく不妊治療クリニックの団体である、ファーティリティー・インスティチュートを運営するジェフリー・M・スタインバーク医師である。

 不妊治療産業は、疾病管理・予防センターが1996年にデータを収集し始めてからの10年間で、規模は2倍にふくれあがった。1996年には、330のクリニックで、64,681件の治療が行われた。最新年では、不妊治療の件数は134,260件に達し、全米のクリニックは483以上に及ぶ。合衆国では、年間5万人以上の子供が体外受精の結果として生まれている。全国規模でいうと、10億ドルを越す産業となっているのである。

 3つ子やそれ以上の出産のパーセンテージは、1996年の7パーセントから、2006年には2パーセントにまで下落した。アメリカ再生医療協会は、その下落を協会が勝ち取った成功の一つとして指摘する。やはり南カリフォルニアにあるハンチントン再生医療センターの医療所長のダニエル・A・ポッター医師は、患者の希望がどうであれ、責任は医師にあると述べた。

 「もし誰かがやってきて、いま話題になっているような状況で、6つの受精卵を移植してほしいと言ったなら、私たちには、患者を保護し、分別のないことを患者がしないようにさせる義務があります」とポッター医師は言った。

 ビヴァリー・ヒルズの体外受精クリニック、ART再生医療センターの研究所所長の胎生学者、デヴィッド・ヒル博士は、体外受精の治療に関して合衆国は、他の国がしているようにそれを規制するのではなくて、自由放任の政策を堅持してきたと述べた。

 しかし、合衆国と、例えばヨーロッパの国々を比較するのは不公平かもしれない。というのも、不妊治療のコストの上限を定めたり、健康維持プログラムによる埋め合わせを求めたりして、最初の試みで何としでも妊娠にこぎつけようとする経済的な誘因を取り除こうとしている国がヨーロッパにはあるからである。

 「要するに、合衆国のクリニックは最初の試みで成功させようとするプレッシャーが大きいので、どうしてもより多くの受精卵を移植してしまい、その後で、一つの受精卵だけが着床してくれと願う羽目になるのです」とヒル博士は言う。

 最近になって、受精卵を生み出し選別する方法が改良されたので、多くの受精卵を移植しようとする誘因はいくらか緩和されるようになった。2つあるいはそれ以上の受精卵を移植するほうが成功の比率は高いが、最近の統計によれば、子供をもてる見込みは、3つの受精卵よりも2つの受精卵の場合のほうが高いそうである。
 仮にそうであっても、患者があれやこれやの対立意見を耳にするときは、多くの受精卵を移植してほしいとせがむことが往々にしてある、とヒル博士は言う。「どれ位いるかはともかく、双子のリスクを説明しても、「どうか、やってください」と言うんですよ。ファミリーをもちたくてたまらないわけですからね」。

 医師が患者の意向に従ってしまう理由の一つとして、不妊治療産業の激しい競争を挙げることができるだろう。カリフォルニア州には、他のどの州にもまして、不妊治療をする医師が多く、そしてその多くがロサンジェルス地区に集中している。

 競争とは、売り込みの口上が尋常ではないことを意味する。つまり、

 ハンチントン再生医療センターは、女性に返金をする場合もあります。妊娠されていない、ですって? 治療費の90パーセントはお返ししますよ。

 赤ちゃんの性別をあらかじめ知りたい、ですって? ファーティリティー・インスティチュートでは、99,9パーセント確実に知ることができますよ

 という具合である。
 
 スールマンさんの先生のカムラーヴァ医師は、SEEDという名の治療法を提唱して、業界の顰蹙を買ったという経験の持ち主である。SEEDとは、子宮内膜下受精卵移植法のことであるが、プラスティックのチューブを使って、受精卵を子宮に挿入するのではなく、いったん子宮の内膜下に挿入してそこで受精卵が成熟するのを待つことで、妊娠の確率を引き上げることができると主張したのである。ポッター医師によれば、この治療法の価値は科学的に実証されたものではないそうである。

 疾病管理・予防センターのデータによれば、南カリフォルニアの医師の中には、国の基準よりもはるかに多くの受精卵を移植したことが判る。たとえば、2006年のカムラーヴァ医師の統計の数字を見ると、怒り出す人さえ出てくるかもしれない。

 そのデータによると、カムラーヴァ医師は、若い女性に対しては受精卵の移植率が国内でも最高の一人であることが判る。つまり国内平均の2.3の移植率に対して、3.5もの受精卵を移植していたのである。これほどの高い移植率が示しているのは、この医師が、妊娠成功例の数値を上げることに過度に貪欲だったということである。カムラーヴァ医師の場合、妊娠成功例の数は、国内最低の部類だった。2006年、彼のクリニックでなされた56の治療例のうちで、女性が出産にまで至ったのはわずか2例だけで、1人は子供1人を、もう1人は双子を出産した。

 その双子は、その年、スールマンさんのもとに生まれた子供だったのかもしれない」。





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