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外国人に門戸を閉ざそうとするイギリス [海外メディア記事]

  日本ではほとんど報道されませんが、イギリスではストライキが続発しているようです。もっともストの続発はイギリスだけではなく、ヨーロッパ全体に広がっていて、前回紹介したような一触即発に近い雰囲気を醸し出しているわけですが、今日はイギリスの状況を、ドイツの『シュピーゲル』誌の記事から紹介します。
http://www.spiegel.de/wirtschaft/0,1518,605618,00.html

 ドイツとイギリスの対立も描かれていて、同じヨーロッパでもなかなか複雑だなあということは判りますが、なんと言っても排他的な気分が蔓延することが怖いです。この記事で述べられているように、保護主義や外国人排斥の動きが国民の声となり、政治家がその動きに安易に同調すれば、至る所に排外的な緊張や対立を生みだします。イギリスは、そんな曲がり角に立っているかのようです。ついこの間まで経済のグローバル化を謳歌していたはずなのに、いまや手のひらを返したように閉鎖的ローカル化にどの国も突き進んでいこうとしている。こうした唖然とするような状況の急転直下と振幅の激しさに一体どの国が耐えられるでしょうか?
  


「 ブラウン首相、愛国者ゲームに打って出る

  英国はこれまでヨーロッパのもっとも開かれた国の一つであったし、ロンドンは移民にとっての天国であった。しかしこの不況下でブラウン政権は、従来よりも厳しい移民規制を考えている。外国人労働者に対する激しいストライキがこうした再考を促しているのである。
 ロンドン - ヨーロッパ中に流れた映像を見ていた人は、ハッとさせる様なスローガンに注意を向けただろう。「イギリスでの仕事はイギリス人労働者のために」というスローガンがそれであるのだが、この一週間、再三製油所前での脱法ストに参加し、国内の政治的な論争の主役であったイングランドおよびスコットランドの産業労働者のプラカードには、そう書かれていた。この手の自発的なストでは欠くことのできない国旗と組み合わせると、ハッキリとした一つの像が浮かび上がる。つまり、不況が始まるやいなや、イギリスの労働者たちは外国人に対する敵対的な反応をしだした、という像である。
 
 うねりのように広がったストライキの発端は、石油精製コンツェルンのトータル社が下した決定だった。トータル社は、北イングランドのリンゼイにある石油精製所での仕事をあるイタリアの会社に発注したのだが、そのイタリアの会社はイタリアやポルトガルから自前の労働者を派遣した。イギリス人の従業員は労賃の引き下げを恐れて抗戦を始めた、というわけである。先週、抗議集会には500人の労働者がリンゼイに集結し、今週はもう1000人になろうとしている。
 週のなかば、彼らは部分的な勝利を祝った。トータル社が、問題となっている198箇所の職場の半分を英国国民のために割り当てることを約束したからである。従業員はそれを受けて、木曜日、行動の終結を発表した。
 しかしそれで論争も終わりというわけには行かなかった。「イギリスでの仕事はイギリス人労働者のために」。このスローガンが、はるかに広く行きわたっている感情を表現していることは明らかだ。結局、イギリス全土で労働者たちがこの抗議に加わったのである。 

 
 ブラウン首相、「イギリスでの仕事はイギリス人労働者のために」を擁護する


 「外国人排斥政策」には、ただちにピーター・マンデルソン経済相が警告を発した。以前、EUの委員を勤めたマンデルソンの体には自由な市場というお題目が染みついており、彼は、保護主義のどんな兆候にも、それがまるでアレルギーであるかのように反応する。
 ただし問題は次の点にある。ストを行っている労働者は、ゴードン・ブラウン首相自身の言葉を引き合いに出すことができた、ということである。ブラウン首相は、2007年の労働党の全国集会の場で「イギリスでの仕事はイギリス人労働者に」という標語を世界に向けて発信していたからである。確かに文脈は違ったのだが、政治的な効果は計算されていたに違いない。
 
 ブラウン首相はストライキに対し当初はマンデルソンと似た判断をしていたのだが、その後、首相は別の戦略を考えたようだ。いずれにせよ、自分が発したスローガンを擁護しようと決めたのである。「英国の労働者が自国の職にありつけることを自分は望まない、などとわが国の誰が言えますか?」と、ブラウン首相は水曜日に議会でずる賢い問いを発した。


 野党はブラウン首相の保護主義を非難する


 この問いは、野党保守党の党首デイヴィッド・キャメロンに対する修辞的な疑問だったが、それに先立って、首相はキャメロンに対して、その「大きな過ち」を認め、自らの発言に対して遺憾の意を表わすべきだと迫った。ブラウン首相はサミットの場では保護主義に対して警告を発しているが、自国では「保護主義的感情をあおった責任がある」と、保守党の党首は言ったのである。首相は「判断能力の欠如」を示している、国民の不安をもてあそんでいる、と言うのである。
 
 この批判は保守党員から発せられただけではない。左右両陣営のコメンテーターからも首相を非難する声が上がっているし、多くの労働党の議員も、外国人排斥的なメッセージには頭を抱えている。しかしブラウン首相は、このテーマでは強気に行こうと決心したのだ。負けることはほとんどあるまい。労働党の党首にとって、イギリスの労働者の利益を擁護する者として登場することは、それほど悪いことではない、という判断なのである。

 議会でブラウン首相は、ほとんど勝ち誇ったような様子で答弁を始めた。キャメロンはポンドを過小評価している、彼は大ブリテンを過小評価している、少しは恥じるべきだ。労働党の党首は良き愛国者、保守党員は祖国の裏切り者― 労働党の席にいた議員たちは大声で唱和した。



  労働組合は再考を望む

 
 この論争で問題なのは、リンゼイのイタリア人労働者だけではない。問題なのはEUの労働者派遣大綱であり、EUにおける自由市場の哲学である。イギリスの労働組合は、これが、不十分な点があると認められた派遣大綱をさらに強化する機会になりはしないかと、怪しんでいる。だから、自前の労働力を派遣する他のEU諸国の企業は、ヨーロッパ裁判所が最近判決で示したように最低賃金だけではなく、協約賃金も支払わなければならない、というのである。
 ブラウン首相は、組合の意向には喜んで沿うつもりでいるらしい。確かに彼は、保護主義が経済にとって最大の危機であることを強調しはする。しかし、かつてネオリベラルだった首相がこっそり左寄りになるのはこれが初めてではない。すでに銀行セクターの救済のときに、彼は機敏にも時代の流れに自分を適応させていたのである。労働市場でも似たような流れになるかもしれない。EUの命をうけて派遣大綱を見直している専門家委員会の勧告に注目しましょう、と首相は議会で労働党の議員に確約した。12月に彼は、ドイツが要求していた調査を無用と退けていたのに、である。
 ストライキが再考を促したのかもしれない。何人かの労働党の議員がブラウン首相につめよって、この抗議運動を真摯に受けとめなさい、それをマンデルソンのように外国人排斥感情の沸騰として退けてはいけません、と言ったらしい。リンゼイのスト参加者の一人はテレビカメラに向かってこう述べた。「こうなることは何年も前から判っていたことだ」。


 移民をめぐる議論

 
 識者の見解では、続発するストライキは、東ヨーロッパからの大量の移民に対する遅まきながらの反応として解釈される。イギリス政府は、2004年、東ヨーロッパ諸国がEUに加盟したとき、ポーランドの板金工とチェコの医師に対して労働市場を最初に開いた国の一つだった。最盛期の2006年には、23万人以上が移住した。これは、大きな抗議行動も起こらずに行われた。

 ドイツ政府は、当時すでに国民の怒りに対する不安から、「ドイツでの仕事はドイツ人労働者のために」という見解を表明していた。ドイツ政府の労働相は、その名前がフランツ・ミュンテフェーリンクであれオラフ・ショルツであれ、まるでブレーキのようだとヨーロッパ中でたたかれた。

 イギリスの政府も労働市場の門戸開放政策を考え直しているだろう、少なくともいくつかの部分では。来週には、移住のための関連法案の審議が終わる予定である。『インデペンデント』誌によれば、政府は、とりわけ、EU域外の国からの大卒者の移住規則をより厳格化することを思案しているという。今年は、40万ものイギリス人大卒者が労働市場に殺到するが、まさに新卒者の仕事が希少なのである。同様に、雇用者も、外国で人を求める前に、最初にその土地の職業センターに求職の情報を提供する義務を負うことになるかもしれない。

 議会では、ブラウン首相のスローガンは、いつの間にか、創造的な遊びを生み出した。自由民主党の党首ニック・グレックは皮肉をこめて、蔓延する脱税のことを考えて、私ならば「イギリス国民の税金はイギリスの企業のために」と提案するね、と言った。サウスポート出身のある議員は地元の旅行産業のことを念頭においてこう言った。「イギリスでの休暇はイギリス国民のために」」。









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