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蕎亭・大黒屋 [雑感]

 久しぶりに大黒屋に行く。左側のイス席に座る。先客1名、後客2名。いずれも女性であった。軽井沢から上野の美術館に来た帰りだという先客の女性は、ごく親密な間柄にある人なのだろう。ついこの前までオランダ・ベルギーの美術館巡りをして帰ってきたばかりだそうな。その御婦人がゴッホ美術館のことを話題にすると、驚いたことに、主人があわてて奥から出て来て入り口付近に置かれていた書物棚から、ゴッホの画集(? よく見えなかったが、由緒ある本らしい)を取り出して、多分御覧なさいという意味なのだろう、その御婦人に手渡したことである。何故、驚いたかというと、私はこの店に何度も来ているが主人の姿をはじめて見たのだが、想像とだいぶ違っていたからである。

 それはともかく、蕎麦を食いにきてこんな浮世離れしたやり取りを聞けるとは想像もしなかったが、しかし趣味蕎麦の筆頭格のこの店にふさわしい光景であったのかもしれない。この趣味性の一端は、品書きの扇子に窺えるだろう。黒いつやのあるテーブルにこの品書きが置かれると、一瞬、品書きという機能性が意識から吹き飛んで、絵を鑑賞しているような錯覚を覚える。左側のテーブルのちょっとした空間には、やはり趣味のよい小さい額絵が二篇掛けられており、私はこの空間が好きである。しかしこの趣きを、女将さんの少しうるさい下駄の音が壊してしまうのが最初は少しアンバランスに思われたが、通い出すうちに、蕎麦屋らしい愛嬌のように感じられるようになった。しかし、今日は、あまり下駄の音がしなかったな。何か変化があったのか?

 この店に来たら、時間のことは気にしてはいけない。きょうも、入店からお茶が出されるまで20分かかったが、そんなことは些事にすぎない。ゴッホやフェルメールのことで話に花が咲いていたからだし、その話も興味深いものだったし(つい聞きほれて、しばらくの間、持参の文庫本を取り出すのを忘れていたくらいだった)。注文した「せいろ天もり」も、文庫本に没頭しかかった頃には、やって来た。ここのてんぷらは品があってとても好きだ。日ごろ口にすることはないアスパラはほくほくして旨いし、八丈島の思い出の詰まったアシタバも旨い。蕎麦は言うまでもないが、「種は信州のものだが、葛飾区で自家栽培している」という薬味の辛味大根の味が鮮烈であった。脇役のどれをとっても手抜かりはなく目配りが利いている。

 思い返すと、蕎麦を食べに行ったという感じは残っていない。穀物と野菜のエッセンスを食べに行ったのだという思い出だけが残った昼のひとときであった。


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